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恋なんて知らなかった 【前編】  作者: 湯川 柴葉
第二章 予測と対策
14/50

第14話 二人だけの女子会

毎日2話投稿予定(午前3時と午後3時に1話ずつ)

 18時半過ぎに、結心(ゆい)さんから「これから行く」と電話があったので、晩御飯の用意を始めた。と言っても、既にほとんど並べるだけに近いから、10分も掛からない。


 メニューは、鶏胸肉の照焼きにブロッコリとレタスを添えて、胡瓜の酢の物。そして、玉ねぎと人参の微塵切りを入れたコンソメスープ。これは、具をたくさん入れないのが上品でスープの味を引き立たせる。ごはんは1合だけ炊いた。簡単だけど、スレンダーな私たちは、これで十分。だって、あとからお菓子を食べながらお話するからね。


 ピンポーンと鳴って、結心さんがやってきた。

「はい、これ、売れ残り!」

 パンとお菓子をいっぱい持ってきた。お菓子は売ってないでしょ?


 腹が減っては戦はできぬ、とばかりに、二人とも無言でもぐもぐ。久しぶりの女子会だから、何だかうきうきする。

 普通は食べてる間にお話しするのだけど、二人ともお酒を飲まないから、口の中がいつもいっぱいになって無言になる。

 食べ終わるころ、「食後はいつものコーヒーでいい?」と私。結心さんは、無言のまま、アイコンタクトで「それでいい」と言った。


 食後、コーヒーメーカーに豆と水をセットして、食事の後片付け。

 後片付けは、結心さんも手伝ってくれたから、あっという間に済んで、食器類も拭いて棚の中に整列した。

 

「さあ、あっちのソファのところに行って、ゆっくりお菓子を食べようね」と私。

「私たち、なぜか太らんよなぁ」と結心さんがお菓子を抱えて、ソファに陣取った。

「私は栄養のバランスを考えながら、食べてるから当然よ」と笑いながら結心さんの向かい側に座る。

「教えるだけじゃなくて、ちゃんと実践してるのね」と結心さんは感心してくれた。

「誰でも知ってるけど、お菓子は太るからねぇ」

「そう。分かってるけど止められないのよね」

「洋菓子は飽和脂肪酸が多いから、和菓子がお薦めなんだけど、洋菓子に慣れてるわよね」

「煎餅ばかり食べられないわ」

「羊羹がいいかもね」

「でも、私はケーキが好き」

「あ、食後でもケーキならもっと食べられるかも」

「お菓子の話は止めよう」

 ケーキは好きなのに、女子の敵なのだ。

 

「今日、学校にちょっと出てから、帰りに天野さんの会社に寄ったのよね」

「天野さんて、土曜日も会社におるん? 社員とかおらんの?」

「土日は休みだけど、貧乏だから天野さんだけ会社に出てくることが多いんだって」

「ふ~ん。それで会社に行ってきたわけじゃな」

「そうそう。前にも行ったことあるから」

 さあ、いよいよ本題だぞ! と、結心さんの目つきが真剣になってきた。

 いや、そんなに見つめないで!


「まず金曜日のチケットの話は、やっぱり私たちと同じ意見で、偶然チケットを入手したから、きっかけ作りに利用しただけだと」

「そうよね。誰でも思う行動パターンって、面白い」

「で、1週間動きがなかったのは、多分次の一手を考えられてないから、チケットに飛びついたのだろうと」

「うんうん」

「昨日の結心さんの『彼氏がいると言う』案、あれ、最も簡単でいい案だと言われた」

「そうじゃろ? そうじゃろ? 私は偉い! それを見抜いた天野さんも偉い!」

 結心さんは自分を褒める。ついでに天野さんも褒める。


「チケットの話のときに、『明日は彼氏との約束があるから行けない』と言えばよかったじゃんと言われた」

「あ! そうじゃが! 何で言わなんだん?」

 と結心さんまで私を責めてくる。

「私もそう思って残念そうに同じことを言ったら『そりゃ、あんた、彼氏がおらんからじゃが、わはは』と一蹴された」

「確かに! 普通は、彼氏がおったらそう言うわなぁ」

 と結心さんも残念そう。

 二人で顔を見合わせて、誰でも考え付くだろうに彼氏がいないために思い付かなかったということに、私たちは愕然とした。

 ――でも、そのために彼氏が欲しいわけじゃないわ。彼氏なんか要らんわ。

 

「それから、『このあとは近藤先生がどういう行動をするか予測してみよう』ということになって、可能性を色々と説明してくれた」


「天野さんて、何をしとる人なん?」

 と結心さんは天野さんに興味を持ったみたい。……結心さんのアイデア「彼氏がいると(ほの)めかす作戦」を認めてくれたものねぇ。

「コンピューターのソフトウエアを作ってる会社らしい」

「だから、分析したり、行動予測というん? そういうのが得意なんじゃろか?」


「そうかも。それで、考えられるパータンを9つほど列挙して、それから、可能性の低いものを削除して2つに絞った」

「科学的じゃなぁ! ……それで?」

「1つは、勉強会のような会う頻度を増やせる企画を考えること。もう1つは、手紙を書くこと」

「なるほどなぁ! 結論は普通のパターンじゃけど、なんか凄いなぁ! 結論に安心感があるわ」

 結心さんも、すごく納得してた。


「勉強会なんかは、どんなケースがあるのか天野さんは私の仕事の内容をよく知らないから、詳しくはわからないけど、『そういうものは基本的には断りにくい。だから、そのときは、流れに身を任せるしかない』って。ほかの人も巻き込むことになるかも知れないしね」

「そこは、私もよく分からない」

 と結心さんが言う。そりゃそうよねぇ、無理よ。


「で、結局、勉強会以外は手紙を受け取る確率が最も高いから、手紙を受け取ったときにどういう対応にするのかは、自分で考えるようにと宿題にされた」

「それで、私のところに来たわけね? ……私がここに来てるけどね、あはは」

 確かに。相談者(私)のところにきて貰ってるわ、二人とも。

「そうそう、よくできました。だから、教えて!」

 と細かいところは無視して、ストレートに結論を教えてくれと頼む私。


「あのなぁ、大学の先生が、パン屋の可愛い娘に相談する? 普通は逆じゃろ?」

「占い師も、自分のことはわからないと言うし、自分のことは分かりにくいものなのよ」

「占い師と関係ないでしょ。そういう理屈をすぐに考え付くところだけは、大学の先生だわね」

「あはは。どさくさに紛れて、自分のことを『可愛い娘』って言ってる人に言われたくないわ?」

「そこは、突っ込まなくてええが!」


「天野さんの予測では、交際したいとは言わないだろうと。……不倫になるって話自体が、ハードル上がるものね」

「そうよね」

「それと、名前を書かない手紙の可能性が高いから、思いの丈を伝えるラヴレターになるだろうと。だけど、交際してくれとは書かない」

「イメージ湧かないねぇ。なんか、愛の無いラヴレターみたいな感じがするわ」

「でも、それって、あくまで自己保身のラヴレターになるんかなぁ?」


 私としても、そんなラヴレター貰っても嬉しくもないと思う。尤も、そもそもラヴレターなんて欲しくない。本当に厄介な事件が起きたものだ。人間関係は些細なことで(つまづ)くことがあるから注意しなければいけない。


 結心さんも、だんだん訳が分からなくなってきた感じかな?



読んで頂きましてありがとうございます。


もし宜しければ、「いいね」「★マーク」をして頂けると、嬉しいです。

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