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ファミリーシステムのメモランダム  作者: (・∀・)
2欧州(宗教が家族システムを活性化させた地域
17/18

白人民主制・もっとも原初人類に近いアメリカ(1)

アメリカは歴史が短いこともあり、家族型の変遷をかなり詳細にかける。

移民が大量に押し寄せるようになって最初に見えるのは未分化核家族である。

また初期は移民元の家族システムがいくつも持ち込まれた。

だが結局、そのどれもが絶対核家族に落ち着いていく。


ただし完全に絶対核家族に落ち着くのは1900年代だという。

これはこの年代まで自営業タイプの人々が多かったためと言われる。

アメリカで産業社会が根付き月給取りの勤め人が増え、絶対核家族に落着した。

目立った例外は南北戦争前の南部でイトコ婚の率が上がったことだ。

おそらく大規模農園主たちの婚姻と思われるが、南北戦争がそれらを滅した。


アメリカ人はイギリス人と同様、平等性を重視しなかった。

アメリカには奴隷制もあるが年季奉公人として取り扱われる白人も多数いた。

人間が生まれながらに平等であるなどとはアメリカ人は思わなかった。


アメリカ人は平等を全く使用しなかったが、独立宣言書に完璧な平等の文言を入れた。

曰く、「自明の理として、すべての人間は平等に作られ」とある。


アメリカのスムースな民主主義的政体への移行は驚くべきものだ。


イギリスはアメリカに先駆けて清教徒革命・名誉革命という近代革命を成した。

だが内容には偏りがあり、議会はできたが選挙権は人口のわずか5%しか持たなかった。

イギリスには確かに近代革命の先駆けとしての勲はあるが、それは差別許容の絶対核家族らしく、階級社会による寡頭的な民主革命だった。


対するフランスは、完全なる平等を謳いフランス革命をした。

だがその道は辛く長いおめきがこだまし続ける惨劇の連続だった。

18世紀後半に始まったフランス革命が落着したのは19世紀後半となる。

1世紀に渡り動乱を繰り返し多数を殺傷して為されたのがフランス革命だった。


これは例外ではなく、通例の道である。


アラブの春以降、今なお多くの国々が民主革命の後始末に苦しんでいる。

アフガニスタンのように、それはまさしくフランスとおなじくだが、完全な逆戻りすらあり得る。


しかしアメリカは、ほとんど労せず平等的な民主主義政体へ脱皮をした。

その後も南北戦争以外の動乱をほとんどさせずに国家を運営してみせた。


この謎解きはかなり簡単で、同じ独立宣言書のなかに答えがある。

独立宣言書ではインディアンを、「情け容赦のない野蛮人」と定義している。

またアメリカ独立に関与した多くの人々が、奴隷制に肯定的だった。


つまりアメリカは、居住民を人間と人間以下の区分に分けたのだ。


同じことをしてはるか数千年前に完璧な民主制を運営した例を誰もが知る。

ギリシャ・ローマの民主的政体がそれだ。


ようはアラブの春で苦しむ現実にも関わらず民主制をスムースにやる方法はある。

それは居住民の平等を捨て、居住民を人間と人間以下に区分けすることだ。

これは江戸期の穢多非人の制度にも似て、統治を非常に楽にする。

もちろん人道面を気にしなければだが。


トッド先生はアメリカの初期民主主義を、端的に白人民主制と呼んだ。

イギリスのそれは寡頭制民主主義だろうか。

ともかく民主主義とは、実は差別的な面の多い制度である。


民主主義は近代革命の要のように言われ、事実要である。

要であるが、実はその起源は非常に古く、原初的なものである。


原初人類と現世人類の未分化種族を調べると、民主主義的政体をとる場合が多い。

ギリシャの例以前にも、シュメールでも 投票による政体が確認されるという。

また古代ゲルマンも民主的な投票による行動決定をしていたことが確認される。


ただし勿論、現代の選挙のように平等な投票権はなく、寡頭的であったが。

だがその様相は、大規模民主制を初めて実現したアメリカに奇妙に一致する。


ゲルマン人は自分達のリーダーを投票で選出する。

現在、古代のリーダーはおしなべてキングと呼ばれる。

だがもし、これを「終身大統領」と言い換えるとどうなるのだろうか。

トッド先生がこのような問題提起をするのには理由がある。


古代の選挙は現在と違い出馬に基準があって、血統、家系、財産が重視された。

この点をもって現代の民主主義と違う、とは言えないだろう。

日本でも、また欧米でもこれらが重視されるのだから。

親子二代が国家のトップに立つのは日本ではなくアメリカのブッシュ家の話だ。

他にもクリントンの女房、ケネディ兄弟の家を重視しているのもアメリカなのだ。


このようにアメリカの民主主義は(そして世界の先進諸国の民主主義も)、実は最も古い原初人類の政体のリバイバルである。


もう一点、アメリカが他と違う点は、国家の希薄さだ。

アメリカの家族型は絶対核家族の傾向を示すが、イギリスと違う点がある。

イギリスが上部・階級社会を持つのに対しアメリカには階級がない。

つまり国家と個人を結びつける縦軸の繋がりが非常に弱い。


これは現在まで続く傾向で、アメリカ人は国家をあまり信用していない。

ためにアメリカでは、すべての先進国で済んでいる市民の武装解除が終わらない。

それでアメリカは、先進諸国の中でもっとも暴力的な状況にある。


これらの状況は、アメリカ人が世界でもっとも原初人類的な暮らしをしている事を示す。


アメリカを表現するのに使い古された言葉がある。

「彼らは我々よりはるかに先進的なのに、なぜあんなに洗練されていないのだろうか」

実はこの言葉自体に答えがある。

アメリカ人は洗練されていないからこそ、元初人類に近いからこそ先進的なのだ。


元初人類は旅をし、色々試し、色々経験し、色々暴力沙汰をしながら進化し、動物種として成功したのだ。

彼らは上部を持たない核家族種であり、直系家族や共同体家族ではない。

「完璧を目指すのは良くない、それよりも進化しよう」が、彼らの合言葉だった。


我々がアメリカに惹きつけられる理由もここにあるという。

まず1に、その先進性に惹きつけられる。

そして2に、我らの祖先・原初人類に似た暮らしが郷愁を感じさせるのだ。

アメリカは、家族型も社会も非常古い、原初人類タイプを保つ稀有な土地である。


======================


余談であるが英米仏の民主主義のを見て思うのは、直系家族との相性の悪さだ。

良い民主主義と言われる二大政党制は、実は過去の日本にも存在していた。

戦前の立憲政友会と憲政会がそれであり、英米に負けない二大政党制だった。

そしてこの二大政党制を大日本帝国臣民は嫌い、テロで倒されると助けなかった。


理由は政党政治があまりに腐敗していたためと言われる。

汚職や金で地位を買ったり、コネで役職を得たり猟官をしたりするのが嫌われたのだ。


だが事情は英米でも同じに見える。

ケネディの父親は禁酒時代に密輸でしこたま儲けた金を政界に注ぎ込んだ。

それでマフィアにコネがあり、息子の大統領選挙で不正をして勝たせたという。

どうみても日本以上の奔放ぶりだが、英米人はそれほど気にしないようだ。


また民主主義の本流フランスも、そのやり方にかなり鷹揚なところがある。

例えば街宣デモがヒートアップして車に火をつけても、それほど気にしないという。

これらのことを、日本人はまったく許容できない。


だがおそらく民主主義とは英米仏がやるようにアバウトに運用した方がうまくいく。

なにせこの章で見たように民主主義は、実は最も古い統治体制だからだ。


日本人は直系家族であり完璧を目指し、静謐を好む。

民主主義とは、合法的に大揉めする事で、和を持って尊しとなすとは相容れない。

おそらく日本人は、勢力が二分する状況そのものに嫌な感じがするのだろう。

だから自民党に過半を預けっぱなしにしている。

半分に分かれいがみあうよりも、その方が心地よいからだ。


日本は政治がダメだが官僚がしっかりしてるから国が持っている。

割とこのようにいう人が多くいた。

猟官制で、政党推薦の民間人が官僚の幹部職に就く事など、思うだけで悪夢なのだ。


おそらく英米仏、とくに絶対核家族の英米は、治に居て乱を好むのだ。

トランプが大統領になった時、アメリカ人は大変なことになったと言った。

ただおそらく語尾に、オラわくわくしてきたぞ、とついたのではないか。

これを破滅型と感じさせず、ハッピーゴーラッキー的に思わせるのがアメリカ人の愛すべき点なのだろうか。


核家族思考と民主主義は、古いやり方同士なので組み合わせるとうまくいく。


多少アバウトで暴力的で洗練されてないが、この組み合わせは進化を促進する。


なので人類の切込隊長的、先駆け部隊の運用方法としてはもってこいの二輪車だろう。


問題はそんなアメリカが、世界の統治者の位置にいる事なのかもしれない。

アメリカ人はパイオニアには向くのだろうが、秩序の番人には不向きではないか。

ゴルバチョフの残した遺産をわずか30年で食い潰して戦争をしてる理由は、この辺りにあるのかもしれない。

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