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ファミリーシステムのメモランダム  作者: (・∀・)
2欧州以外のユーラシア
13/18

二重破滅の共産主義・例外的な外婚制共同体家族・ロシア

欧州国家の家族形態は、ユーラシアに近い方向ほど新しい形態を取る。

近現代と未来に意味のある国家英仏独露にもこの規則性が現れる。

英仏は核家族、ドイツは直系家族、ロシアは共同体家族のとなる。

ユーラシアに近いほど新しい家族形態を取っている訳だ。

ただしおおよそであり、細かな部分を見ると例外もかなりあるが。


ロシアは二方向からの侵入に影響を受けた。

ドイツ方面からの直系家族と、ユーラシア方面からの遊牧民父系核家族の波である。

これらにもまれロシアでは共同体家族が成立した。

ただしその成立自体は遅く、17世紀に完成を見たようだ。

ロシアの共同体家族は外婚性共同体家族であるが、中国よりもその歴史が浅い。


またそれ以前にキリスト教のインストールがあった。

ロシアのキリスト教インストールは900年頃、キエフのオリガという女性に始まるという。

このインストールの時期は、1100年頃と言われるドイツ騎士団の侵入より早い。

また1200年頃となるモンゴルの侵入よりも早かった。

このためロシアは、同じ外婚制共同体家族をとる中国とは違う状況が生まれた。

ロシアでは女性の地位が比較的高く、相続も2割程度は女性が占めたのだ。


「女性が落下しない」のは近代化に非常に重要だった。

女性の地位が落下した中東中国は列強の草刈場になった。

女性の地位の落下が甚だしいと、男性の教育レベルすら下落する。

女性の地位が落下した地域では男性の教育すら気にされなくなる。

もっとも父系レベルの高い中東の進化が止まったのはそのためだった。

そして地域は停滞してしまう。


ロシアは確かに外婚制共同体家族に陥ったが、キリスト教の影響により女性の落下が防がれ教育レベルが低下しなかった。

信じ難いが、ロシアの成人女性の高等教育進学率は北欧を超えた60%となる。

これは日本もアメリカも北欧も超える数字である。


近代ロシアで特筆すべき点はやはり1918年、共産主義を選んだ点だろう。

それは上部の絶対的権威、下部の平等性という共同体家族を体現する。

なので共産主義は外婚制共同体家族が主流でなければ自主的には成立しない。

ゆえに直系家族の日本や核家族の西洋で自国共産党の危険性を主張するのは滑稽ごとなのだが。


ただ成立した共産主義政権は自己の権威しか認めず家庭の権威を認めない。

その意味において権威的な外婚性共同体家族も共産主義の敵だった。

政権取得後の共産主義は居住民と敵対し大内戦となる。

もっとも激烈な抵抗は父系核家族を取るウクライナにおいてであるが。


その後、共産主義はすべて蹂躙しソ連全土を平定する。

そして全土が一旦恭順された後、ロシアの外婚制共同体家族が速やかに崩壊した。

崩壊は都市に限ったものではなく、地方農村のものも粉砕された。


共産主義は非常に奇妙な二重破滅の思想と言える。


共産主義は外婚制共同体家族から生じる。

ところが共産主義政権が成立後、外婚制共同体家族を破壊してしまう。

共産主義は地域を破滅させるが、自身の根拠地も破滅させることになる。

代わりにできるのは、共産主義とは相性の悪い核家族である。


また初期の獰猛さが終わると、共産主義は地域をかなり洗練させる。

上部の絶対的権威が注目されがちだが、下部の平等制の追求も行われる。

共産主義政権では女性は法律上完全な同権となる。

また構成員への教育付与もほとんど狂ったように行われる。

あの寒く長大な大地の隅々にまで学校を建て教師を派遣するのは尋常ではない。

そして教育を与えられた居住民はといえば、共産主義をむしろ蔑視する。


政権奪取後の共産主義は行動するほどに自信の基盤を傷つけてしまう。

そして居住民への安寧が保てなくなった際、ソ連は自己破壊して終わった。

共産主義は本当に奇妙な思想で、共同体家族を壊すための槌なのかとも思う。


そしてロシアの歴史を見て思うのは、その条件の悪さと課された試練の多さだ。

共同体家族、帝政、共産主義、ナチズム、新自由主義、ロシア嫌い。

よくこれらに耐えて存在していられたと思う。


またロシアはこれまでみた中東、日本、中国、イタリアと違い、未来の可能性がある。

というのはロシアはこれらの地域と違い、出生率が回復しつつあった。


日独が筆頭だが、英仏を除く先進国は出生率の低減に苦しんでいる。

少子化を解決できないというのは、いかに先進国と見栄を張ってもタコが足を食っているだけだ。


ロシアはソ連崩壊後、経済失策で死にかけ、欧米は救いの手を差し伸べなかった。

ところがロシアは独力で、一時1.3まで落ちた出生率を1.7にまで回復させた。

これほど大きな国で、これほどの回復を実現した国は他に知らない。

というよりも一旦1.3に落ちたら、もう回復は不能だと思っていた。

それをロシアは持ち直した。


ロシアが今も生きているのは、問題の根本を把握する力があるからだ。

そしてその問題解決に全力で取り組んだからだ。

それを自力でやる国というのはかなり強い可能性がある。


もちろんそのやり方には非難されるべき所がある。

ウクライナの未成年をロシアへ強制移住させるのは、間違いなく人口問題のためだ。

だが人口問題は、国家にとって最大問題なのだ。

それをロシアは理解し、悪辣な方法であろうが解決に動いている。

それに引き換え英仏を除いて西側諸国は、人口問題を放置したきりだ。


現在西側と呼ばれる諸国はロシアとの戦闘にのめり込んでいる。

敵対の可否はおくとしても、敵を知り己を知れば百戦危うからずという。

西側はロシアを知っているのだろうか。

そして自己の状況も知っているのだろうか。


注意すべきは家族型が壊れたとしても、数百年数千年に渡る記憶は消えない事だ。

現在、ロシアでは不正な選挙が行われプーチンが大統領に選ばれたと言われる。

不正の度合いは不明だがあるだろう。


ただもし公正な選挙が行われてもプーチンが当選するものと考えられている。

理由は外婚制共同体家族の記憶で、権威的な上を求めるためだ。


トッド先生は、現在のウクライナ戦争の西側の動機はロシア嫌いだと指摘する。

そしてそれはこの家族システムの違いから来るのではないかと。


西側のほとんどの国が少子化により死滅予定だが例外がある。

それが西側自由民主主義の総本山・英米仏であり出生率は1.7を超える。

ロシアの出生率回復は一時的なものであるとの評もあり、この先はわからない。

だがもしロシアが持ち直し、流行りの持続可能な国家になると道が別れる。

西側至上主義者にとって、正解は自由と民主主義だけのはずだった。

だが丈夫に権威的なロシアが生き残り持続すれば正解がもう一つできる。

それは西側至上主義者には許されざる現実でありアイデンティティの崩壊になる。

ゆえに狂信的な西側至上主義者はウクライナ支援に血眼になる。


そうトッド先生は言われる。

現実はもう少しプラグマティックで下衆で短絡的なものかと思うが。


今後どうなるかは不明だが、ロシアなら別の道を見つけるかもしれない。

ロシアの歩んだ歴史を見るとそう感じる。

ソビエトが崩壊した際、出生率は低下を続けていたものの1.8だった。

それでもソ連は現状を危機とみて政権を自主廃業した。

かたや1.3という国家の継続性のない状況を、失われた30年ダラダラ続ける国もある。


問題解決能力は重要だろう。

ただ、何が本当に問題なのかを把握する能力が、その前に必要な気がする。


元日の岸田首相の発言は、賃上げと異次元の少子化対策だった。

1944年になりようやく艦隊決戦と海上護衛が二大任務と言い出した日本海軍の直系のように感じる。

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