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ファミリーシステムのメモランダム  作者: (・∀・)
2欧州以外のユーラシア
12/18

人権の始まり・畢竟のカルトの功績・家族システムの巻戻り・イタリア

欧州はイタリア・ローマに始まる。

成行きは省略するが、イタリア北部中部は欧州でほぼ唯一共同体家族をとった。

ローマは共同体家族の軍事力でもって地中海地方を統一した。

その後、ローマはブリテンの島まで伸びていく。


共同体家族が天下を取れば遅かれ早かれ地域の女性の地位の下落が始まる。

しかし奇妙な事にローマは、紀元年を前後して変容する。

というのがローマでは逆の事象、女性の地位の向上が生じた。

最終的に5世紀に法が定められ、娘は息子と同等の財産分与を確約された。


それまでのユーラシアでも農家が受け継ぐべき土地が不足する程度に人口増加した。

だがローマは、その進捗に異常さがあった。


ローマの誕生地、イタリア北部中部は農民・牧畜の共同体家族の根拠地である。

地中海世界への侵攻に際しては、この地の農民が歩兵となり主役となった。

ローマ軍は、征服した土地に地元ローマと同じ形式の農園を導入した。

これがのちに英仏で荘園と呼ばれる大規模共同農場となる。


しかし当のローマはそのうち農村を捨てたようだ。

捨てたというか豊富に取れる奴隷に任せてしまった模様。

もしくは農村人口のローマ人が無視されるほど、別の場所に人が集約された。

というのはローマでは、各所に建設された都市に市民が集住するようになる。


この際の都市は住環境的に、現代的と変わらず、つまりものすごく狭かった。

残された遺跡が示すのはマッチ箱アパートとなる。

これでは共同体家族が物理的に存続できない。

そのため彼らは、共同体家族から再度、核家族へ転換を始めた。

そしてこの核家族化を援護するイデオロギーが彼らを包んだ。

すなわち親核家族的宗教、キリスト教である。


キリスト教にはユダヤ教から受けついだ1つと独自の4つの特性がある。

子供の保護、貧弱への愛、生殖の忌避、フェミニズム、厳格な外婚制。


子供の保護はユダヤ教の教えで、それまでの人類が普通にしてた嬰児殺しを禁じた。

これはそれまでの人類が弱きものを歯牙にかけなかった点から大転換となる。


これを強化したのがキリスト独自の貧者への愛だが、これはそれまでの動物的人類にはなかった。

それまでの人類はギリシャに代表されるように強健さを重視した。

キリストがしたのはこれの真逆で、弱きものを尊び、憐れみ、手を差し伸べた。


他にも生殖を忌避し、生涯独身を通す牧師を人の上に持ち上げた。


またフェミニズム・女性の尊重もそれまでにないものだった。

女性の地位が比較的高い初期の未分化核家族でさえ、女性は男性の下位だった。

しかしキリストは女性の同権を力強く訴えた。


これらはそれまでの人間の常識的にはカルトそのもので、初期キリストは大迫害を受ける。

しかしこれは時々Twitterで流れてくるカルトの内部固めの要素となった。

迫害によりキリストは益々強固に内部を固めていく。


さらにそれまでの常識でみればカルト的なこれらの要素に、多くの人々が感銘を受けた。

生まれながらに生命は平等である、という平等性の理論は、まさに革新的だった。

そしてそれらは、核家族に戻りつつあるローマ市民の賛同を得た。


もっとも感銘を受けたのは女性たちと言われる。

フェミニズムを謳っただけではなく、弱者保護や生殖の忌避も影響した。


それまではどの家族形態であれ、親族バンドに依って人は暮らしていた。

これは無償の集団ではなく、義務を求める集団となるだろう。

すなわち親族バンドの根幹となる、生殖という義務を。


避妊が確立していない時代、多産となり女性にとって文字通り死線の連続となる。

出産で死ぬ女性は多数いたが、それは親族バンドに加盟する女性の義務とされただろう。

また不妊が、当時の離婚の最大原因であっただろうことも容易に察せられる。


生殖の忌避は親族バンドの義務とみなされた出産の重圧から女性を解放する。

また虚弱な子供でも深い穴に捨てず保護する事は、多くの母親の賛同を得るだろう。

女性の熱烈な支持で、夫がキリスト教に改宗する事がその後の歴史でも多発する。


キリスト者の行為が、心を打つものであるのを否定はできない。

遠い日本にキリストが伝来した時、牧師は当然のように貧者救済に乗り出した。

信長の発言録によれば、本邦の坊主は貧民の救済にあまり積極的でなかった。

それを外国人の宣教師がすることに、ある種の感銘を受けた事が記せられている。

弱者救済は戦国の日本人にも尊い行為とみなされている。


そして、条件をつけずあるだけで生命に価値を見出し尊重するという理論。


考えてみればローマ市民もその前身のギリシャも、価値なくして生きられなかった。

生まれた際の選別で、虚弱児が穴に捨てられる行為は、程度の差はあれあった。

子供を産めない女性が親族バンドからどのような目で見られたか。

また男であっても弱く、レギオンを組めず盾を持てない者が、どう見られたか。

「ただ」では生きられず、エヴァに乗れない人間は不要なのがローマだった。

そこに出現したキリスト教は、生命そのものに価値を見出し尊重するという。

ネタ動画でしか見たことがないが、それはまさしくエヴァの最終回「僕はここに(無条件で)いていいんだ」となる。


これらの平等性が核家族に戻ったローマ人の琴線を打ちキリスト教は国教となる。


そしてこれらの紛れてキリスト教が打ち出したのが厳格な外婚制だった。


ギリシャとエジプトを別として、それまでも世界は近親相姦を忌避した。

ただしあくまで忌避であり、どの地域にも10%以下の例外があった。


キリスト教は、この忌避を厳禁に変え、イトコ婚を兄弟婚並の扱いとした。

またさらに4親等以上の婚姻も、可能な限り避けるべきと打ち出した。

一時期にはナチスと同じく7親等の婚姻を罪としたほどだった。


これに大打撃を受けたのが、それまで全人類が培った親族網バンドだった。

それまでの婚姻もイトコ婚までは忌避をしていた。

だが4親等以上の親族網からのマッチングが結婚方法だったのだ。

それをキリストは良くないものと定め排撃を続けた。

結果的に親族の繋がり自体に忌避の念が生じていく。


これを原因として欧州キリスト教徒は、太古から続く親族網バンドを喪失する。

欧州では生活保護を申請する際、親族の援助を聞かれないという。

これは起源元年後、キリスト教が欧州の親族バンドをすでに破壊しているためだ。


キリスト教が親族網バンド破壊に勤しんだ理由は統一教会と同様である。

それまで親族網にあったシンパシー・忠誠心を、教会に移すためだった。

そしてそれはほとんど完全に成功し、現在欧州に親族網はない。


これだけ聞くと統一教会にも似た極悪カルトに思えるが違うだろう。

キリストは弱者保護を強く打ち出している。

それまでの親族バンドとローマ帝国も構成員にパンとサーカスを提供した。

だが構成員に序列を設け、下部の貧者や弱者に誠心な支援はしていない。


弱者救済は自力での救済、もしくは親族バンドに任される。

だが、親族バンドは最大でも1000人を超えない集団であり、救いの手は薄い。

スパルタ程ではないとはいえ、弱者は見捨てられてきた。


全ての構成員に保護を与える意図のない統治体制がそれまでの主流だった。

これに対してキリスト教は、全ての構成員に保護を与える意図を提言し実践をした。

何方に着くべきかは、宗教に疑問を持つ者にも明らかだろう。

宗教に懐疑的ではあるが、キリストとローマの功績は認めざるを得ない。


太古から続く親族バンドを破砕したキリスト教は人類史畢竟のカルトである。

それは現在、統一教会が家族を壊した宗教と叫ばれるのにも似ている。

しかしそれは親族バンドと既存古代国家が弱者救済を行えなかったためだ。


もちろんキリストが国教になったとしても、全ての人々は救われなかった。

だが全救済を目指す姿勢すら、それ以前にはなかったのだ。


ローマはキリスト教国教化前後で異なる国と見て良いだろう。

キリスト教以前、一定のまとまりはあったものの親族バンドの集合体だった。

国教化後のローマ市民とは、全ての構成員が同率となった巨大な運命共同体となったのかもしれない。

おそらく史上初めて「愛国心」なるものが生まれたのは国教化後のローマではないか。


そしてローマは、隷下にした地域にこの種を植えて植えて植えまくった。

ローマが植えた制度と平等主義が、ブリテン島とパリ盆地で近代の扉となる。

またドイツにも、そしてロシアにもローマは刻印を残している。


欧州はギリシャではなく、間違いなくイタリア・ローマに始まる。

すべての道はローマに通じる、という格言は文字通りに正しい。


ただしローマ帝国以降、イタリアは世界史にほとんど影響を及ぼさない国となる。

そのためイタリアについてはこれ以上を割愛する。

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