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第九九幕
久久。
上手から登場。台車の上に、一対のオフィスデスクと、オフィスチェア。黒子が台車を引く。ゆっくりと。
オフィスデスクに腰掛ける、B。純白のタキシードに身を包む。赤いスポットライトを彼に。それ以外は、凛と暗く。
何かを言おうとして、口を開き、つぐむ。それを幾度か繰り返す。やがて、微かにひとりごつ。
B「神など、いない。」
そのまま、頭を垂れる。数秒。にはかに上を向き、祈るように手を組む。
B「(恍惚を身に宿して)違う。畏れ多いほどに、違う。
神は、我々を救われた。
神は、我々を殺された。まっしろな我々を、滅ぼした。
それは、救いであった。
おお、決して赦されることのない神よ。私は神を信じる。
すべての人々に、神の御加護があらんことを。」
台詞終了。上手と下手の間、中央の位置。黒子、台車ごとすべてをひっくり返す。
B、言葉にならぬ叫びを上げる。やがて嗚咽に近づく。舞台、暗転。閉幕まで、Bは叫び続ける。
閉幕。幕には、以下を記す。
いつまでも。悲劇のヒロイン。ゆかいゆかい。
おしまい