序幕
イヌ獣人とネコ獣人。彼らは一体何者なんでしょう?
開幕。上手から登場。台車の上に、二対の木製の机と椅子。黒子が台車を引く。ゆっくりと。
上手側にA。下手側にB。
藍色の学ランに、金色のボタン。夜に浮かぶ月のように。学ランの隙間から、彼らの豊かな胸毛が顔を覗かせる。
照明は、昼下がりの太陽のように。
B「(突然、上手側に振り向いて)なあなあ。」
A「(少し気怠げに、ゆっくりと顔をあげて)何。」
B「(無邪気に)この単語ってさ、ドーンて読むんだな。ずっとダウンだと思ってた。」
A「(軽くため息をついて)……お前、それ明日の範囲だぞ。それに、ドーンじゃなくて、“dawn”。」
B「同じようなもんだろ。えっと、意味は確か……(頭を抱え、数秒ほど)」
A「(呆れつつも、優しく)夜明け。」
B「(明るげに)そう、それ。」
二人、顔を手元に戻す。照明、少し暗く。数秒の沈黙。
B「(ふと)夜明けって、どう思うよ。」
A「(水をかけられたように)は?」
Aに薄く、スポットライト。
B「俺はあんま好きじゃないな。夜は、星が綺麗だから。」
A「(思い出したように)ああ、そう。(言い聞かせるように)そういや、そうだったな。」
B「お前は?」
A「俺は、夜明け好きだけど。陽の光、なんか元気になる。」
B「(満足して)そっか。」
A「それにしても、なんで突然。」
B「(木のように)いや、なんとなく。」
A「(思わず口元を緩ませ)なんだ、それ。」
会話の終わりと同時に、下手より退場。暗転。3秒ほどの間を空けて、大きな金属片が閉じられるような、大きな音。鉄製ドア、あるいは。