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29.支援役ロベル 魔族四天王のひとりをカンタンに倒す②


29.支援役ロベル 魔族四天王のひとりをカンタンに倒す②





「けど、あんた。本当は、あと3回しか復活できないんだろ?」


「クカカカカカ……カ?」


「それならあと4回だけ、あんたを倒せばいい。カンタンな話だ」


「な!? なな、なななななななな!?」


魔族は動揺しまくっている。どうやらアタリみたいだな。


「あ、あ、ああああアナタは何を言っているのです!?」


「さっきあんたが復活するとき、マントの宝玉が砕けてたろ?」


「いっ!?」


「宝玉は残り3つ。それが、あんたの復活の限界ってわけだな」


「バ!? ババ!? ババババカなことを!? なななな何を根拠に!?」


「根拠なんてない。状況から判断しただけだ。ただの当てずっぽうだよ。ま、あんたの態度が何よりの証拠だろうけどね」


「ぐぐっ……クク……クククク……」


魔族がふるえ出したか思うと。


「クククククククク……クカカカカカカカ! クカーーーーーーーーーーーッカカカカカカカカカカ! クカーーーーーーーーーーーーーーーーーーッカカカカカカカカカカ!」


いきなり高笑いを始めた。


「このワタシ! 『不死のガイナ』を! あと4回も倒す!? 倒せるものなら倒してみなさい! 人間ごときにその様なマネができると! 本気でお考えなのですかァ!?」


「本気も何も。今さっきカンタンに倒したし」


「ホザくなあああああァァァァァ! ならばワタシも全力を出しますよおおおおォォ! 受けて見よおおおおおおォォォォ! 『不死のガイナ』の究極暗黒魔――」


「させないよーーー! セイクリッド・サンライトォォ・ブレイジングウェェェェェェェェブ!」


魔族の先手を打ち! サミーの体と『太陽のペンダント』から、オレンジ色の波動がほとばしった!



カアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!



「ノギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!?」



魔族は一撃で倒れた。



パキイイイイイイイイイイイイイイイイン!



魔族のマントに埋め込まれた、宝玉の1つが砕け散る。残りはあと2つ。



バシュウウウウウウウウウウウウウウウ!



あふれ出た闇を受け、魔族が復活する。


「こ、こここここの小娘がぁぁぁぁぁぁぁ!? ブチ殺して――」


「スキだらけですね! ジャスティス・ホーリーライト・ヴォルテックス!」


今度はアンリの体と『光のペンダント』から、白い光の渦が放たれる!



パアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!



「ホギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!?」



魔族はあっさり倒れ伏す。



パキイイイイイイイイイイイイイイイイン!



宝玉が1つ砕け散る。残りは1つ。



バシュウウウウウウウウウウウウウウウ!



闇に包まれ、魔族が再生する。


「き、ききききキサマぁぁぁぁぁぁぁ!? エルフごときが、エルフごときが魔族に盾つくなどと――」


「まだ終わりじゃない。ディバイン・ムーンライト・エクスプロード」


続けてトウナの全身と『月のペンダント』から、金色のエネルギーがあふれ出る!



ブアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!



「ゴゲァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!?」



魔族は一瞬で崩れ落ちる。



パキイイイイイイイイイイイイイイイイン!



最後の宝玉が砕けた。残りはゼロ。



バシュウウウウウウウウウウウウウウウ!



闇があふれ、魔族の体を包むが。


「ば、バカな!? バカなバカなバカなバカな!? こんなバカなぁぁぁぁぁぁ!? 『魔族四天王』のこのワタシが!? 『不死のガイナ』様が!? なぜこんな小娘ごときにぃぃぃぃぃ!? いったいなぜえええええええええええええええええええぇぇ!?」


……はあ。何言ってんだか。


「言うほどたいしたことないよ、あんた」


「なっ!?」


「さっき無限によみがえる、とかウソついただろ? 本当は4回しか復活できないクセに」


「ぐぬっ!?」


「最初に瞬殺されてビビったのか? とても『四天王』とは思えないセコさだね」


「あぐっ、ぐぐぐ……!」


「今だって。小娘ごときに、とか言ってたけどな。はっきり言って格が違うよ。サミーもアンリもトウナも、あんたの100倍は強い」


「がっ、がっ、がががががが……」


……さて、と。


「宝玉はぜんぶ砕けたな」


「ヒ、ヒィッ!?」


「チェックメイト、ってとこか」


「まままま待て! 待ってくれ! わかった! アナタ方の力はよくわかりました! ワタシから魔王様に掛け合ってみましょう!」


「掛け合う?」


「そそそそそその通りでございます! アナタ方を魔王様の側近にしていただけるよう、ワタシが頼んであげましょう! これからこの世界を手に入れる、偉大な魔王様の右腕になれるのです! 悪い話じゃないでしょう!?」


「断る」


即決した。何ひとつ迷う余地がなかった。


「なっ!? ななな!? なななな、なぜ!?」


「邪悪な野望の支援なんてゴメンだね。ついでに言うと、目立つのは好きじゃないんだ」


「い、いいいいいったいアナタは何者なのです!? まさか!? かつて魔王様を倒した、勇者の生まれ変わりだとでも!?」


「違う。ただの『支援役』だ。あんたを倒せる程度のな」


「ヒイイイイイイイイイイイイイアアアアアアアアアアアアアアアアア!? ヒアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」


いきなり魔族が逃げ出した。転移魔法を使う余裕もないらしい。


「悪いけど、逃がすつもりはない」


俺は魔族の背中に、ショートソードを投げつける。



ドシュッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!



「ぐあああアアアア! ウソだああああああアアアアアアアアア!? なぜ不死のガイナが死ななければならんノダアアアアアアアアアア!? ワタシガ死ヌハズガナイ! 死ヌハズガナインンンダアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァ…………」


魔族の体とマントはチリとなり、消滅していった。



「もう復活してこないな! これにて完全決着だ!」


「やったねお兄様! すっごくすっごくすーーーーーっごくカッコよかったよ!」


「魔族四天王、ひとり目を撃破ですね! さすがはあなた様! わたし、ほれぼれしちゃいました!」


「主様の力で完封」


「いやいや! すごいのはみんなの神聖魔法だよ! 俺の支援スキルなしでも、メチャメチャ威力が出てたじゃないか!」


「へへー! ステータスがマックスになったおかげだね! つ・ま・り! ステータスを上げてくれたお兄様のお・か・げ!」


「すべて、あなた様のお力です! あなた様が先を見通して、わたしたちを強くしてくれたからこそ! ですよ!」


「主様は偉大。世界でいちばん偉大」


「そんなことないさ! 全部みんなの力だよ!」



……しかし。


「魔族四天王が出てくる状況、か」


「魔王は本気で、世界を侵略する気なんだね」


「わたしたちも、急いで手を打たなければいけません」


「主様。ご指示を」


……そうだな。


「少し、散歩してきてもいいか? 歩きながら、考えをまとめたいんだ」





    □    □    □





俺はみんなと離れ、ぶらぶら歩き出す。


前にアンリが言ってた話が、頭の中でぐるぐる回る。



『文献によりますと。かつての勇者様はレベル66で魔族四天王を、レベル77で魔王を倒したそうですよ?』



「俺の今のレベルは1,934。過去の勇者をぶっち切っている」


もちろん。魔族四天王や魔王が、以前よりもパワーアップしてよみがえった可能性は高い。


しかし。それでも。


「俺にはたった今、四天王のひとりを完封した事実がある」


ここから導き出される結論は、ひとつ。いくら慎重に考えても、ひとつ。



「俺は魔王を倒せる」



……そうだ。さっき、自分で言ったばかりじゃないか。



『レベルやステータスが高くても。スキルをたくさん使えても。力を見せびらかすだけじゃ意味がない。大事なのは手にした力で、どんな支援ができるか、だからな!』



……よし。


「覚悟を決めるか。俺が『支援役』であり続けるためにも、な」



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