放課後ミッション
あらすじ
勇仲は操達に弱みを握られ
生徒会の仕事を手伝うはめに……。
《蜂須賀学園》。
通称・蜂学。
大正時代から続くお嬢様学校で数年前に共学となった。生徒一人一人に合わせた教育プログラムにより大学受験に強く、国立大学の合格者を多数輩出する名門校。
そのとある教室で――
「すみませーん、委員会のアンケートにご協力くださーい」
勇仲は月曜日の放課後に蜂学の生徒になりすまし潜入中。こんなことがバレれば不法侵入で、下手をすれば警察に補導されてしまう。
しかし、それでもやらなければならない。やるしかないのだ。こんなことをする破目になったのは、先週の金曜日の放課後にさかのぼる――。
操達の罠にはまった勇仲。
写真を撮られた後にスマホの電話番号を交換、SNSのグループも組まされる。入学してから羽田、野中に続き、不本意な形で操と伎巳の連絡先が勇仲のスマホに加わる。
教室に戻されるも授業の内容は全く入ってこなかった。
ホームルームの直後、グループチャット経由で改めて生徒会室に召集。あんなえげつない手段を使ってくるような連中だ。一体何を要求されるのやら。
「それで、俺に何をさせる気だ?」
勇仲は不満を腹の内に留めつつ、操らの向かいのソファーに腰掛け足を組む。
操はブレザーの胸ポケットの中から一枚のメモを取り出して読み上げる。
「ある生徒から相談を受けたのぉ『蜂須賀学園に通う妹が、校内でいじめを受けているかもしれない。真相を確かめてほしい』だそうよぉ」
「蜂須……賀?」
……勇仲は首を傾げた。
「蜂須賀学園って……玖成の隣の学区にある偏差値のめっちゃくちゃ高ぇ進学校だろ? つーか何だそのメモは」
「玖成学園の生徒会では生徒からのトラブルの相談を受けつけていてぇ、たまにこういう依頼が舞い込んでくるのよぉ」
「それで、俺に何をしろと?」
「蜂学には以前からきな臭い噂が多いのよぉ。優秀な生徒が突然の不祥事で退学してるとか、あくまで噂だけど。外部から調べるにしても限界があるからぁ、正確な情報を得るためには現場に赴くしかなくってぇ――」
操は何か言いたげに上目遣いで勇仲を見つめる。
「まさか、そこに俺が?」
「そう、潜入して調べてきてほしいのぉ」
「――っ」
なかなかとんでもないことを言い出した操に、勇仲はポカーンと口を開けた。
「蜂学の学生服は用意したッス。細かい指示はインカムから出すんで、カツラはお好みのをどうぞッス」
伎巳がキャスター付きの黒いスーツケースの中から、蜂須賀学園指定の白のブレザーとハンズフリー通話用のインカム、そして黒髪、茶髪といった様々な色や髪の長さのカツラを次々と取り出した。
「制服まで用意したのか? このためだけに!?」
「映研部では小道具の収集もアタシの仕事ッスから、これぐらい訳ないッスよ」
まだ勇仲はやるとは言っていない。
しかし、抗議したところで昼休みの捏造スキャンダル写真がある以上、封殺されるのは目に見えていた。
ご丁寧にクラウドシステムを通じて、自宅のパソコンにも保存しているそうだ。不本意ながら今は従うしかない。
だが、それでもこれから自らの負う危険性を、鵜呑みにするのも何だか悔しい。せめてもの抵抗として、勇仲は問いかけた。
「なあ、確認したいんだが」
「なにかしらぁ?」
「百歩譲って潜入してもいいが、それって不法侵入だろ? そもそも見慣れない顔の人間が校内をうろついていたら、制服を着ていようが十中八九バレる。そしたら俺はもちろん、アンタらも責任を問われるぞ?」
「それなら心配ないわぁ」
操はニコッと口角を上げて勇仲を見やる。
「フフフ、普通の人ならそうだろうけどぉ、あなたなら大丈夫よぉ……」
「んん?」
勇仲の不安をよそに、潜入調査の日を迎える。
他校に潜入。スパイものみたい……(*'▽')。
話を作っていくうちにいつの間にかそうなりました。
2021年7月24日土曜日にて修正