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完全勝利

あらすじ

あの夜の作戦終了後、蓮川は警察に自首する。

マスコミの手によって蜂学との隠蔽工作が全て公表された!!

「……マジか」

「マジッスよ」

 放課後の玖成学園、生徒会室で三人は集まっていた。

 勇仲と伎巳はそれぞれ自分のスマホで動画サイトを見ながら息を呑んだ。ニュース番組のアカウントから蜂須賀学園の校門前に報道陣達が詰めかける様子や、職員達の謝罪会見の模様が度々流れていた。

 SNSのトレンドランキングも『蜂須賀学園』『隠蔽行為』『悪霊に』その他諸々、関連ワードが上位を埋め尽くしてる。

 蜂学は世間から批判の憂き目を見ることとなった。身から出た錆だとはいえ、なかなか目を覆いたくなるような地獄絵図だ。

「嘘みてえだな。ぜーんぶアンタの思惑通りだ」

「フフフ、もっと褒めてくれていいのよぉ」

 操は満足そうに胸を張った。

「あの夜の恐怖体験でぇ、蓮川は自らの過ちを心底後悔した。それに加えてぇ、音々ちゃんに扮した勇仲ちゃんの恨みの言葉とともに『償え』というキーワードを蓮川の脳裏に刷り込んでおけばぁ、その足で警察に自首。パニック状態のまま致命的な懺悔(ボロ)を連発するってわけ。

 いくら周りの人間が取り繕ってもぉ、事件を起こした張本人が罪を認めたとあっては揉み消しようがないでしょ?」

 調査に出た日に訪れた公園の近く、蜂学から徒歩十分の距離に警察署があったことを思い出して、操はこの作戦を考えたようだ。

 ニュースでは度々、テレビ局のスタッフが蜂学の校門前で生徒達にインタビューする様子が映る。生徒達は顔をモザイクで隠され、声質も高音に編集され、学校の裏側について意味ありげに語っていた。

()()()、機嫌がいいとお金をくれるんですよ。僕も二千円くらいもらいました』

『たまに旧校舎まで生徒を呼び出して集団で殴るんです。怖いですよね』

『愛想よくしていないと居場所がなくなるので……正直、居心地悪かったです。終わってくれてホッとしてます』

 これまで蓮川あり奈に対して、こびへつらってきた者。恐れてきた者。傍観してきた者。意見は様々なようだ。

 これを見て勇仲は両腕を組んで嘆息を吐いた。

「えらそうに批判してるやつもいるけど……こいつらも結局は黙認していたんだよな? それどころか袖の下もらって、いじめに加わってたやつもいて……、自分達も同罪だってわかってんのか?」

「どうしても蓮川一人のせいにしたいらしいッスね」

 所詮は損得感情で繋がれた関係。『金の切れ目が縁の切れ目』だったということ。

 蓮川あり奈が未成年者だったことが配慮されたらしく、その後どうなったかは不明。いかにして裁かれるのか、どんな人生を歩むのか、――知るよしもない。

「蓮川、どうなったんスかね?」

「どうなろうが俺達にはもう関係ねえよ。目的は達成したんだから」

 伎巳の疑問に勇仲はドライな反応を示す。

 ある意味、合理的な考え方だ。

 勇仲達の目的は井原兄妹を救うこと。

 蓮川を裁き、更生させるのは大人達の役目。

 下手に探りを入れてこちらに気づかれたら本末転倒だ。

「なあ、そんなことよりよ……」

「あら? 何かしらぁ」

 操は勇仲の言葉の濁りをから不安を察知した。

「俺達がやったこと、バレねえよな?」

「んもぉ、心配性なんだからぁ。事後処理に抜かりはないわぁ。使用した小道具は全部処分したもの」

「あの夜、賄賂女に電話を掛けたよな? 警察に逆探知でもされたら――」

「刑事ドラマの見過ぎよぉ。逆探知は事件性があると警察に判断されてぇ、はじめて行われる行為だから。非通知で掛けたしスマホも解約済み。足はつかないはずよぉ」

「事件性? 賄賂女が警察に駆け込んだんだろ? だとしたら多少なりとも警察が動いたんじゃねえのか?」

「あの一件は事件とはみなされないのよぉ。大樹君のアリバイが確保されているから」

「井原先輩のアリバイ?」

「大樹君にはあの日ぃ、玖成学園の映研部への体験入部と称してぇ、朝から晩までレッスンを受けてもらっていたのぉ」

「体験入部、……どういうことだ?」

「旧校舎に痕跡はゼロ。呼び出しに使った手紙も回収済み。

 死亡者は一人も出ていない。

 そればかりか、大樹君が蜂学に行っていないことは映研部が証明しているしぃ、音々ちゃんに至っては一人じゃ病室から出ることすらできない。

 蓮川の供述の信憑性は皆無と言っていいわぁ」

「言われてみれば……」

「つまりぃ、――――あの夜の出来事は、全て蓮川の妄想として扱われるってわけ」

「ああ、そうか! 井原先輩の重要な役割って、このことだったのか!」

 勇仲をわざわざ大樹の替え玉にあてがったのは、アリバイを成立させるため。操は作戦の後のことまで計算に入れていたのだ。

「そういうことよぉ。仮に捜査の手が大樹君に向いたとしてもぉ、知らぬ存ぜぬで押し切れるってわけ」

「そうだったのか。――てことは、賄賂女は真実を知らねえままか? 狐に化かされた気分だろうな、怖っ!」

「自首すると罪は軽くなっちゃうのよぉ? 世間様のためにも、しっかりと戒めておく必要があるわ」

「まあ、否定はしねえけどよ」

 勇仲は蓮川に同情する気はさらさらなかった。

 当然だ。事実に反する事実を強いることで、井原兄妹をはじめ、何人もの人間を苦しめてきたのだ。

 蓮川が生み出した被害者がまだまだいることが、警察の捜査により明らかになった。当分この騒動は続きそうだ。

 それだけのことをしてきたわけだから仕方がない。

 せめて二度とこんなことを起こさないように悔い改めてくれること、罪を償ってくれることを勇仲達は祈るのだった。

「ところでぇ、勇仲ちゃあん」

「何だ?」

「この後、時間ある? 暇なら付き合ってほしいことがあるんだけどぉ」

 操は両手を合わせ軽くウインクしながらお願いする。

「急にどうした?」

 勇仲は顎を触りながら操を見やる。

「フフフ、いいとこ連れてってあげるわよぉ~ん」

「んん?」

 何のつもりかは変わらなかったが、勇仲は素直に応じることにした。

 ――――今はなんとなく、気分がよかったから。


結果発表後半戦も終了。

やっと残っていた謎を回収できた。

ちょっぴりブラックな話が続きましたが

次がご褒美回というか……、多くは語りません。

安心して見ていただければと思います( ̄▽ ̄)ニヤリ



2021年10月1日金曜日にて修正

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