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ナイトメア・イン・ナイト

あらすじ

何者かに旧校舎に呼び出された大樹と蓮川。

大樹に半年前の事件について問いかけられ蓮川は

音々のことを罵り出す。

するとその後、音々が死んだ事を告げられる。

 蓮川の頭に『ズシン!』と衝撃が走る。

「死んだんだよ、一昨日の夜に生命維持装置の故障で……音々は!」

「……冗談でしょう?」

「本当だよ!」

 大樹はバッと仁王立ちになると、

「今だって……お通夜、抜け出してきてるから!」

「――はっ」

 ずっと気になっていた。

 大樹が着ている黒いスーツにネクタイ。

 あれは、――――喪服だ。

 怒りと憎しみと涙でにじんだ大樹の瞳には、突然の告白に暑くもないのに額から汗をタラタラと流す蓮川が映っていた。

 音々が亡くなった直接的な原因は、病院の不手際によるものだが、大樹はそんな風には考えなかったようだ。

 そもそも半年前の出来事がなければ、音々は病院の世話になどなっていなかったわけなのだから。元凶である蓮川に怒りの矛先が向くのは当然の道理だ。

「ククッ……アハハッそ、そんな衣装まで用意して……よくそんな手の込んだ嘘を……バカバカしいですわ!」

 蓮川は左の口角だけがグイグイと上がっていき、引きつった顔で動揺を紛らわすかのようにかすれた笑い声を散布しながら、大樹の告白を拒絶する。

 ここまで強気で振る舞って、今さら後には引けない。

 信じようとしない。

 頑として受け入れない。

 非を認めるわけにはいかない!


『ヴ――――ン、ヴ――――ン』


 蓮川のスカートのポケットにあるスマホのバイブが鳴った。画面を見ると、どうやら非通知での着信のようだ。

「こんな時に、誰でしょう?」

 蓮川は手を震わせながら電話に出た。

「もしもし!」

「……」

 相手は何も言ってこない。お互いが無言のまま十秒ほどの無言の時が流れる。

「もしもーし!」

「フッ……フッ……」

 電話の向こうからは、ボソボソと相手の息遣いだけが蓮川の右耳へと干渉してくる。

 そうしてさらに七、八秒の間が空いた後に、

「に……いさんカら……ビッ……なはレ……ビビッ」

「え? 何?」

 電波が悪いのか。ノイズ混じりに飛び飛びの音声が鼓膜を揺さぶる。


『ビリッ……ビッ……ビビビイイイイイイイイイィィィィ…………』

「……………………!?」


 ノイズに耳の奥を引っ張られるかのような奇妙な感覚に襲われた蓮川はその時、はっきりと感じ取った。   

 ――――自分の身体に起きた異変を!

 まず軽い目眩に襲われ、目がチカチカして脳が揺れ動くように体がぐらつく。

 次に起こったのは過呼吸。空気を吸っても吸っても肺がそれを受けつけないみたいだ。

 そして今度は動悸に見舞われた。脈打つ鼓動がまるで、心臓の奥から全身の血管へといも虫が這っているような気持ち悪さを覚える。

 さらに胃液がグツグツと煮えたぎるような感覚に吐き気を催した……!

(なん……ですの、これは!?)

 何の前触れもなく発生した身体の不調に、蓮川はただただ汗を垂らしながら困惑するしかなかった。

 そんな蓮川に追い打ちをかけるかのように、さらなる異変が起きた――

「おいデ……おイで…………」

「!」

 ――――今度は教室の四方八方、前後左右から不穏な呼び声が飛び交い始めた。

 耳をピリピリと刺激するその声は電話で聞いた声にどことなく似ていた。

 蓮川は呼吸が荒くなり、視線は定まらず、足がブルブルと震えて落ち着かない、もう立っているのがやっとだった。

「どうかしたの? 何か変だよ?」

 そんな蓮川を不審に思い、大樹は自分の涙を拭いながら問いかける。この場で起きている異変には気づいていないようだ。

(……この声、聞こえているのは……私だけ?)

『に……いさんカら――」

 電話の向こうから聞こえた声が脳裏で蘇える。

「にいさんから…………ハッ!」

 この場で『兄さん』と言えば井原大樹。

 その一言で蓮川は一つの可能性にたどり着く。


(この声の主は、井原……音々!?)


 音々が亡霊となって語りかけている?

 今のこの体の不調も、音々の怨念による祟りなのでは?

(じゃあ、井原音々は本当に、死――――)


「その電話、まさか!」

 何かを察知した大樹は、血相を変えて蓮川から乱暴にスマホを奪い取った。

「音々! 音々なのか? わかるか? 兄ちゃんだぞ!?」

 大樹は死に別れた妹との邂逅に、戸惑いながらも涙目で話す。そのまま数十秒の間、電話の向こうの声に「うん、うん」と頷く。

 その一方で、蓮川はとうとう自らの体重を支えることもままならなくなり。その場にしゃがみ込んでしまう。そして、周りを飛び交う呪詛のごとき声にただただ耐えながら、うつむき頭を抱える。

(霊の……仕業、なの?)

 そうでもない限り、自分が今体感している異常事態の説明がつかない。

『バタバタバタッ』

 意識が混濁する中で慌ただしい音が聞こえる。

 蓮川のスマホを持ったまま、大樹が大きな足音を立てながら廊下へと飛び出したのだ!

「ああっ私のスマホー!」

 一年四組の教室に置き去りにされた蓮川。彼女の身に降り掛かる怪奇譚が今、大きく動き出したのだった。


ここからホラー展開が続きます。

おかしなところがあったら気兼ねなく

指摘してくださいね。



2021年9月17日金曜日にて修正

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