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操のセルフプロデュース

あらすじ

勇仲は井原兄妹を助けたい気持ちを操に伝えた。

操もまた井原兄妹を見捨てるつもりはないという。

――その時、勇仲は真実を知る。

操の正体は劇団いた頃の友達、あやちゃんだったのだ!

 午後七時過ぎの玖成学園。

 下校時間をとっくに過ぎているにも関わらず、校内に残る生徒が三人。それもあろうことか、その内の二人が生徒会役員。

 操は生徒会室のソファーで、グースカと年頃の女子らしからぬ大きないびきを立てながら深い深い眠りについている。よく見ると口からはタラーッとよだれを垂らしている。せっかくの美貌が台無しだ。

 寝具を完備しているということは、どうやら普段からここを寝床として利用しているようだ。

「おっさんみてえないびき……」

 そんな操の姿を見ながら勇仲はドン引きしていた。

 突然の再会による動揺も相まって……、部屋の入り口の近くから彼女の寝顔を疲れた目で見つめていた。

「まあそう言いなさんな。お嬢は創作のことになると二、三日の徹夜は当たり前ッスからね。しかも授業も休まずにッスよ?」

 お使いから戻った伎巳は、テーブルの上にエナジードリンクやお菓子の入ったレジ袋を置くと、操が寝そべっている向かいのソファーに座る。

 ぼんやりとしたその目で入り口近くに立つ勇仲を一瞥すると、

「にしても、今さら気づいたんスか?」

 呆れ返るアメリカ人のように左右の手の平を上に向ける。

「知らなかったんだよ。『あや』ってのが芸名だったことも、二つ年上だったことも。それに見た目も性格も昔と全くの別人だったし」

 再会できてよかった。よかったはずなのに……言葉では説明しがたい謎の屈辱感に、勇仲は悔しそうに奥歯を噛みしめる。

 同じ事務所にいた頃の姿とは似ても似つかなかった。

 あやちゃんこと英房操はあの頃、黒髪のおさげに真ん丸の眼鏡がトレードマークで、いつも着ていた服は 落ち着いた色合いのワンピースしか勇仲には見た覚えがなかった。失礼な言い方をすればオシャレとは縁遠く、実に野暮ったい印象が強かった。

 それが今では栗毛色の絹糸のようなさらさらのロングヘアーになって、普段はコンタクトレンズを、パソコン作業の時だけブルーライトカットの眼鏡を着用しているとのことだ。

 内面においても甚だしい変わり様だ。当時、お世辞にも社交的とは言えない恥ずかしがり屋だった。

 それが事務所をやめてからどんな人生を歩めばあんな変人生徒会長に仕上がるのか。

 ニワトリの雛からクジャクにでもなったのかと思えるくらいの、劇的過ぎるビフォーアフターだった。

「まあ確かに、当初のお嬢はあそこまでオープンではなかったみたいッスね。映研部で陽キャを演じていていくうちに、本当に陽キャになっていったんスよ」

 映画は一人では作れない。

 シナリオを起こし演技や演出の指示を行なう監督。監督の方針のもとスタッフを統制するプロデューサー。物語上の様々な役を演じるキャスト。カメラマン、照明、美術、メイク、衣装、タイムキーパー、その他諸々……。監督はスタッフの一人一人と心を通わす必要があるため、コミュニケーション能力は必須。

 あれから操は自分を変えるための努力を重ねてきたのだろう。幼い頃に磨いた演技力がこんな形で今に繋がるとは。

「つーかアンタら、いつから俺のことに気づいていたんだ?」

「入学式の少し前に職員室で新入生の名簿の中から、たまたま雄方君の名前を見つけたみたいッスよ。面白いから気づくまで黙っていようって、お嬢が」

「面白いって……」

 勇仲は元気のなくなった体をなんとか支え、立った状態をキープしている。

「それと、雄方君は誤解してるみたいッスけど……」

「どうした?」

「他の同期生がどうだったかは知らないッスけど、少なくともお嬢が事務所をやめたのは雄方君のせいじゃないッスよ?」

「んん、どういうことだ?」

 伎巳の神妙な態度に勇仲は食いつく。


「実は……お嬢はあの頃、交通事故に遭って脚の靱帯をやってしまったんスよ」


 勇仲は耳を疑った。

この辺からあやちゃんこと操の

これまでが次々と明らかになっていきます。

お見逃しなく!(`・ω・´)ゞ




2021年9月10日金曜日にて修正

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