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憂鬱な放課後

あらすじ

蜂須賀学園で行なわれている悪行について聞かされる。

ところが操は悲しみの中にいる大樹を放って

返ってしまう……。

 井原音々のもとを訪ねてから二日がたった、木曜日の放課後。

 玖成学園の校舎と体育館の間にある、トタン屋根と金網のフェンスで囲まれたちょっとした休憩所。

 勇仲はそこにある自販機で買った紙コップ入りのコーヒーを嗜みながら、ベンチに腰掛けて、ただただ時間の流れに身を任せていた。

 そこから校舎の向こうの空を、夕暮れが時間をかけて青空から茜色へときれいなグラデーションを描き、夜へと塗り替えられるところがそこから見える。

 野中はコンビニでのアルバイト、羽田は柔道部の稽古。勇仲一人だけが時間を持て余していた。

 つい最近まで、生徒会に持ち込まれた厄介ごとに振り回されていたのだが、あの日を境に全く呼び出されなくなった。

「百か(ゼロ)か……両極端だな」

 勇仲がすぐに帰らなかったのは、操からの呼び出しが来ないかを気にしていたからだ。

 しかし、スマホは一向に沈黙を保ったまま。

 苦しまぎれにグループチャットで二、三回メッセージを送ってみるも、既読すらつかないという体たらく。

 もう本当にあの件についてはノータッチのつもりなのだろうか。

 カリカリしている勇仲だったが、――――すでに気づいていた。今と自分と、先日の自分との行動が矛盾していることに。

 このまま生徒会達がやぶ蛇行為を起こさなくなってくれるなら、それは願ってもいないことだ。もうこれ以上首を突っ込む必要はない。

 ――――なのに、釈然としないのは何故なのか?

 まるで喉に刺さった魚の骨のように、放置しているだけで不快感が増していく感覚に似ている。


 先日の井原大樹から知らされたいくつかの真実。

 蜂須賀学園のおぞましい実態。

 親の権力と財力にものを言わせ、学校を私物化し、一人の生徒に植物状態になるほどの重傷を負わせた蓮川あり奈。

 それを隠蔽する、賄賂に汚染された職員達と、蓮川への恐怖からか、損得感情からか、黙認する生徒達。


「どうして……、みんなが仲良くできねえんだろうな」

 勇仲には理解できないし、理解しようとも思わない。

 他人を蹴落とすことをためらいもなくできてしまう蓮川あり奈の暴挙。

 常軌を逸しているとしか思えない。

 奪う側、奪われる側、どちらになるのもごめんだ。

 

 そんなことに悩まされた時期が、――――勇仲にもあったからだ。


この後でやっと勇仲の過去、

勇仲が役者を辞めた理由に迫ります。

……ご期待ください!




2021年8月28日土曜日にて修正

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