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ミッション結果発表

あらすじ

勇仲は無事に蜂学からの潜入調査から帰還する。

 潜入調査を終えた次の日。

 放課後の玖成学園の生徒会室で、操と伎巳は執務机に集まっている。

 一方、勇仲はソファーにグテーンと仰向けに横たわり天井を見上げながら、ずっとウンウン唸っている。

「雄方君、だらしない姿ッスね」

「へっ、うるせぇよバーカ。蜂学に通報されたら俺は警察のお世話になる。入学して早々どうしてくれるんだよ……」

 勇仲は締め殺されるかのような低い声で、口から不平不満を煙のように生徒会室の空中に向かってまき散らしている。

「そこまで心配しなくても……。カツラとメイクで人相は曖昧にしていたしぃ、ここまでたどり着ける可能性は限りなく低いわよぉ、多分」

「あの手の届け出は現行犯でなければ補導には至らないッスよ、多分」

「その『多分』が信用できねえんだよ! 言っとくが俺が捕まったらアンタらも芋づる式にアウトだからな! 覚悟しとけよ!?」

 もうあんな無茶をさせられるのはごめんだ。二人がこれ以上、変な気を起こさないよう、勇仲はただただ天に願うばかりだ。

「それにしても…………あったまおかしいだろ。あの賄賂女」

 勇仲の脳裏に焼きついたおぞましい光景が、昨日から何度も何度も蘇える。

 ためらうことなく袖の下を差し出す。

 暴力を行使する。

 行動の一つ一つが常識から外れていた。

 蓮川あり奈、あいつは一体何だったのか?

「確かにおかしいわねぇ、()()()()は」

「んん? 何だって?」

 勇仲が起き上がって振り向くと、操達は勇仲が危険を冒してまで集めてきた調査結果(アンケート)を見ている。その隣には『正』の文字がたくさん書かれた紙が。どうやら集計を取っていたようだ。

「どうしたんだよ?」

 操は何も言わず手招きをする。勇仲は隣に寄り添い結果を見ると、

「蜂学生徒三十二人に調査したら、いじめを受けたり、受けているのを見たり聞いたりした人は――〇人だそうよぉ」

「〇人? よかったじゃねえか。いじめはなかったってことだろ?」

「回答者の半分以上が一年生なのぉ。まだ四月半ばよぉ? 新1年生全員が『ない』と言い切れるのはおかしくなぁい?」

 勇仲は改めてアンケート用紙を確認した。文面はこうだ。


 新学期――校内アンケート

『人間関係における悩みはありますか? またそんな悩みを持つ友達はいますか?』


 この質問に対し「はい」「いいえ」「わからない」

 

 ――三つのいずれかを答える欄があり、全員が「いいえ」を選んでいる。


 あっさりとした結果だった。

 お陰で集計がビックリするほど楽だったようだが……。

「まだ四月よぉ? 二、三年生はともかくぅ、まだ学校に慣れてない新1年生なら『わからない』と答える者がいてもいいはずでしょう?」

「言われてみれば……」

 確かに、三十二人が全く同じ見解というのは不自然だ。

 勇仲も少しばかりの違和感を覚えた。

「まあ……そう見えなくもねえけど……、考え過ぎじゃねえの?」

「いいえ、このままにしておくのは気持ちが悪い。念のため再調査するわぁ」

「マジか……」

 勇仲は背筋をぐにゃりと曲げる。


 しかし、この時は知るよしもなかった。この時感じた違和感の裏に隠れていた、おぞましい真実に……。


「多分」便利な言葉ですね(笑)




2021年8月21日にて修正

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