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懐古のエンジョイ勢はかく語る

 『テレポストーン』というアイテムがある。字面だけで別に解説する必要もないと思うのだけど、好きな場所に一発で転移できる神アイテム(課金)だ。


 大陸間の移動が不自由だった時代は船なんて待たなくても気軽に飛べるこのアイテムがめっちゃ便利で、そして高い。


 基本的にMMOと言うのは最初はガチガチに移動が制限されていても、大抵不満が出まくって最終的に移動手段がガバガバになる。


 メイプルストーリーも牛乳やら海外旅行やらゲートやら色々あってガバガバになったので便利ではあるけれど需要は減った。


 すぐに行きたい狩場がある!とかそんな程度の事には使う気も置きなかったけれど、遊ぶ分にはすっごく楽しい、本来なら行けない筈のマップに移動できちゃうからだ。


 例えば銭湯。男湯と女湯に分かれていて、基本的に男は男湯、女は女湯にしか入れないけれど、『テレポストーン』ならそんな常識を打ち破れる。凄い!


 行けたからなんだって言う話ではあるのだけど、こう言うネクソンのガバガバなのか意図的なのか良くわからない欠陥は地味に面白い。ちなみにそこからパーティメンバーを呼び出すスキルである『ミスティックドア』を使うこともできる。つまり異性キャラの『ミスティックドア』使いがいれば課金する必要などない。


 僕は『ミスティックドア』使いどころかお友達のリスト自体がすかすかだったので、残念ながら『テレポストーン』に頼るしか手立てがなかった。こうして僕は課金により合法混浴権を得たのである。


 そして僕は数少ないお友達を自らの『ミスティックドア』スキルでお風呂に呼び出しわいわい騒ぐ。


 別に銭湯じゃなくても本来入れない所ならどこでも楽しい。あるいは本来持てないはずのアイテムを持ってくるなんてのもハマった。


 特定のエリア内でしか手にはいらなくて、そこから出ると失われてしまうアイテム。要はクエストアイテムで、大抵の場合は一定時間以内に何個集めろ!とか指示を出される。それで集めきれないとクエスト失敗になって部屋を出るときに没収になってしまうのだけど……地面にぽいっと落として部屋を出る瞬間に同時に拾うと普通に持って帰れる。ガバガバすぎない??


 こうして持って帰ったアイテムをフリマで自慢したり、あるいは一発でクエストクリアできるくらいまで集めて速攻でクリアしてみたりとか、別にあまり意味は無いんだけど本当にこういうのがすごく楽しい。


 MMOと言うとイメージとしては強さを追求したりする人ばかりという印象があるけれど、その頃の僕はそんな感じで遊びながら楽しくゲームを楽しんでいた。多分他のプレイヤーもそうだったと思う。


 ビッグバン前のメイプルストーリーはレベル上げに必要な経験値が沢山必要で1レベル上げるのにも一苦労だったので、寄り道ばっかりしてる感じだった。


 もちろん早々にレベルを上げて最強のビショップスキル『ジェネシス』を使いこなすようなプレイヤーもいるんだけど、そんな人も『ジェネシス』を覚えて何をしているかと言うと普通に遊んでる。


 『ジェネシス』は画面内全部に攻撃できるスキルなので、見せびらかしたくなっちゃうのだ。初心者がいつも屯している『狩場1』というエリアには当然のように高レベルのプレイヤーがわんさかいて、四次転職の強いスキルがぶっ放されるのが日常茶飯事。初心者の人かわいそう。


 かわいそうなんだけど、初心者の視点で見るとそんな彼等に憧れを抱く。自分たちは一体一体を頑張って倒しているのに、上級者は十体以上の敵を瞬殺できる。かっこいいよね!!


 四次転職をできるプレイヤーは当時においては相当な暇人だったのだが、ゲームにおいて現実の身分は関係ない。四次転職勢による有り難い洗礼を受けた彼らは頑張ってレベルを上げて、すぐに飽きる。飽きるのだけど、ゲームは辞めない。


 ただひたすらモンスターを倒すだけというゲームの柱となる仕組みがただひたすらに苦行なのだけど、それはそれとしてモンスターなんか倒さなくても不思議とゲームを遊んでた。


 強さを追求するだけが全てじゃない。本当に当時の僕はその世界を生きていた。


 僕が世界で生きることを辞めたのは、大人になったからなのか、それとも子どもになってしまったからなのか、それともゲームが変わってしまったからなのか。


 今の僕はメイプルを世界ではなく競い合いのゲームとして捉えてしまっている。だからこそ不公平な課金だのバグだのに文句をつけるし、自分は効率のいいバグを利用して搾取する。


 かと言ってどうぶつの森みたいなほのぼのとした世界も好みじゃない。


 僕のあこがれのゲームは、戦闘がメインなはずなのになぜか寄り道してしまう、遊んでしまう。そんな奇妙なバランスの下に成立していたあの神ゲー。


 懐かしいな。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 狩場1……いい場所でしたね…… 何故か一番上に誰かしらいたような記憶がw
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