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詐欺が蔓延るこんな世の中じゃ 1

 当時のメイプルストーリーは確かに詐欺が盛んだった。感想欄にどこぞの実況者が「良点は詐欺だけ」などと言っていたというタレコミがあるくらいだ。知らないけど『はりーシ』辺りが言ってそう。


 詐欺が盛んだなんて途轍もない邪悪なMMOだ!!と思うかもしれないがそうではない。むしろその逆だ。プレイヤーが余りにも低レベル過ぎて素っ頓狂な詐欺にも引っかかってしまうだけ。つまり心の綺麗な人が集まるゲームだったのだ。


 メイプルを代表とする詐欺と言えば『ss詐欺』が挙げられる。余りにも有名なのでメイプルの話を聞いたことがある人であれば知っているかもしれない。


 ssとは『スクリーンショット』のこと。手順としては至って簡単で、そのへんを歩いているプレイヤーに「その装備、かっこいいですねw」と声を掛ける。すると相手は「それほどでもない。やれやれ」などと言いながら自慢し始める。


 そうしたら後は簡単。「スクリーンショットを取りたいので地面に落としていただけませんか?」とお願いするだけ。


 ん?って思った方もいるだろう。地面に落とすって??どういう事??それって不味くない??


 ちなみにこのゲームにおいて地面に落とすという行為は即ち所有権の放棄であり、周囲のプレイヤーの誰もが拾える状態だ。


 地面に落ちた装備のスクリーンショットを取りたいと言う事なのかもしれないが、控えめに言ってこれで素直に装備を落とす奴のほうが馬鹿であり詐欺師は全く悪くない。


 もっと露骨に「貸していただけませんか?自分が装備しているところを取りたいんです」とお願いする事もあるが、どちらにせよ小学生くらいしか引っかからないレベルのギャグにしか見えない詐欺行為。確かにこんな詐欺がまかり通るような環境であれば()()()()()()()()良点であり神ゲーと言えるのかもしれない。


 しかしこの詐欺については有名すぎるのでわざわざ取り上げる必要もなかったかもしれない。というわけでもっとマニアックなあるある詐欺ネタをここからは取り上げていこうと思う。


 『閉鉱帰還の書』詐欺だ。これは閉鉱という場所に一瞬で飛ぶことができる便利なワープアイテム。徒歩で行こうとするとそこそこ長い道のりで苦労をするので割と重要なアイテム。更にいうとそこには『ジャクム』と呼ばれる当時における強いボスモンスターがいるので、毎日倒しに行くためにこのアイテムを何枚もストックしているという人が少なく無かった。


 『閉鉱帰還の書』自体はクエストを達成すれば何枚でも増産することができるのだけれど、そこそこ拘束時間が長いグループクエスト(一応ソロも可)と言うこともあって自分で量産するのは少々めんどくさい。


 なので他の人が量産した書を『フリーマーケット』で買うという人も多く、逆に資金稼ぎのために閉鉱クエストを何回もクリアすると言う人も多分いた。


 とにかく『閉鉱帰還の書』は高く売れたのだ。


 そして『帰還の書』というアイテムもある。これは一番近い街に戻れるというすごく単純なアイテムで、その辺のNPCからいくらでも買える激安アイテム。とりあえずで99個買っても何も問題ないくらいのアイテム。


 『閉鉱帰還の書』と『帰還の書』。価値からすれば天と地ほどの開きがあるこの2つだが、ある共通点があった。


 見た目が似ているのだ。


 もちろん名前も違うし説明文も違う。正直見た目も色がほぼ同じなだけで厳密に言えば違うしで間違える要素なんて無い、間違えそうになっても直ぐに気づくレベルで全然違う。むしろ1つしか共通点が無いんだから当たり前だ。


 しかし、引っかかる。これをフリーマーケットに堂々と高額なメルで配置すればいい。すると何故か売れる。冗談じゃなく売れる。僕も一度このテクニックを試した事があるので間違いない。いや、実験ね?実験だから、ね?ほんとだよ?僕詐欺師じゃないよ?


 なぜ人々は騙されるのか?そのままでは見た目以外の共通点が無い『閉鉱帰還の書』と『帰還の書』だけど……。


 それはいたって簡単な話だ。高額で店に配置すると、新たな共通点が生まれる。そう、()()()()()()()()()


 見た目と値段が似ている『帰還の書』。もうこれは買うしかない!むしろ本来の『閉鉱帰還の書』よりやや安めの設定にしておくのがコツだ。そうすればその店に訪れたプレイヤーはこう思う。「早く買わないと」「売り切れちゃう!」


 少しでも落ち着いたらすぐにわかるはずの明らかな違い。しかし、値段を下げるだけで本来人間にあるべき冷静さはたちまち消え失せる。即座に店にある『帰還の書』全てを購入して……それから初めて気づくのだ。


 もちろんこんなクソみたいな詐欺が長続きするはずがない。運営は対処しないが、一度引っかかったプレイヤーはさすがに学習するし、そうでないプレイヤーも詐欺の存在自体は認知する。警戒される。


 そうしたら作戦第二段の始まりだ。売れなくなった『帰還の書』を売るために、一つだけ手間を加える。これは現実においても有効な戦略であり、数々の戦場で活躍している王道的な手法——


 『サクラ』だ。


 『フリーマーケット』に展示されたアイテムは売れたとしても枠だけはその場に表示され続ける。売り切れになったという事がひと目でわかる表示になっているのだけど……この売り切れ枠を意図的に作り出す。


 サブPCでログインして自分の店の『帰還の書』を爆買いするのだ。手数料はかかるが、一枚分なら端金。それ以外のメルはメインアカウントに売上として移動するだけなのでコストはほぼ皆無。


 そうすれば後は先程の展開の焼き直し。売れてる!売り切れそう!買わなきゃ!




 メイプルは詐欺の手口が学べる神ゲーである。

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― 新着の感想 ―
[一言] くっ、なんて邪悪なゲームなんだ…
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