メイプルストーリー
これは僕のかつて遊んでいた神ゲー、『メイプルストーリー』の思い出だ。このエッセイを読んで「なんでこんなクソゲーやってんの?」と思う者もいるかもしれない。
しかし僕にとってはこれが、これこそがMMOである。僕にとってのMMOはバグ修正なんてされないし不正をしても利益を享受できる。
そんな僕の人生の約1厘程度を占めるクソゲーの思い出を支離滅裂に語るので聞いていただきたい。
まず僕のメイプルストーリーの思い出で最初に思い浮かぶのはとあるスキルの話だ。
属性ダメージを一定割合でカットしてくれる優秀なスキル、『エレメンタルレジスタンス』。
全ての属性攻撃のダメージをカットするという優秀な性能を備えていて、『プリースト』と『ドラゴンナイト』(現:『バーサーカー』)という職業がこのスキルを持っていた。
似たようなスキルは他の職業にもあるのだけど、炎属性及び毒属性に限定した耐性だったりすることもあり、こちらのほうが汎用性が高い。
もちろん性能的にはぶっ壊れスキルと言うわけではないし、PvPなんて無くてひたすらレベルを上げまくるだけのゲームだったからこういうのは『事故死が減る』以上の利便性があるわけではないのだけど……。カタログスペックの上では。
カタログスペックの上では、という前置きは一体何なのかと疑問に思うだろう。一言で説明するとバグだ。
なぜかこのスキルにポイントを振ると受ける属性ダメージが100%カットされるとかいう意味不明な現象が起きたのだ。
百歩譲ってMAXまで振ってそうなるなら分かるけど、『1』振っただけで属性攻撃無効。凄い。イカれてる。早く修正されろ。巻き起こる怨嗟の声。しかしスルーされ続けるバグ。利用し続ける僕。
最終的にこのバグが修正されたのは約1年半後の事だった。
その頃にはもはや『エレメンタルレジスタンス』とは相手の放つ属性攻撃を無効化できる最大レベルが1のスキルという風に世間では認識されていて、快適すぎる狩りに慣れた一部のプレイヤーは今まで簡単に倒していたモンスターを倒すのが難しくなり、場合によっては狩場のランクを落とさざるを得なかった者もいたという。
バグ利用を散々しておきながら元の仕様に戻った事で発狂し引退する者もいたらしく、それが僕の事である。バグが修正されたから引退するってダサすぎである。
しかしこれがもし最低でも発覚した次のパッチ辺りで修正されていたら残当としか言いようがなく僕もゲームを続けていたに違いない。何が言いたいかというと運営が全て悪いのである。NEXONは今すぐバグ利用者に謝罪しろ。
なんだかんだ言ってその後に復帰。時はメリークリスマス。当時は冬の期間限定的なイベントが行われていて、1時間に1回特別なマップで空からアイテムが降ってくるというイベントだった。
そのアイテムを集めると混沌の書とかいう当時において最大の性能を持つ強化アイテムなどのレアな一品が貰える。めっちゃ欲しい。
当然全力で拾い集めたいのだが他にもプレイヤーがいて取り合いになる。ゆっくり段階的に降ってくるので移動速度が速いプレイヤーが総取りしたりする。勝てない。
しかしやはりと言うべきか、このイベントにもとんでもないクソバグがあった。
その名も『1時間に1度のアイテム落下に備えて待っているとゆっくりアイテムが降ってきているように見えるけど降ってる最中にマップに入ったプレイヤーからは最初から全部落ちてるように見えるバグ』。
区切りのいい時間帯になった瞬間にそのエリアに入ると、まだ空から落ちてきている途中のアイテムを眺めているプレイヤーを尻目に全部を拾える。クソすぎる。当然ながら他のプレイヤーの視点では空中のアイテムが拾われているという控えめに言って極悪非道のチートが行われているようにしか見えないし、開始前から待機してたのに1個もアイテムを取れずたった1人のプレイヤーに総取りされる。なんなら想定される落下時刻よりも早くアイテムを取れるので、そのエリアで全部アイテム回収した後他のチャンネルに移ってもう1回総取りできる余裕がある。
クズすぎる。やっていいことと悪いことがあるだろう。生きてて恥ずかしくないのか。その光景を目の当たりにし、さんざん罵倒した後僕もやった。楽しい。
バグの理屈を知らぬじょうよわ共が何故か降ってこないアイテムに困惑している。やはりMMOは情報戦。我々のようなじょうつよが常に勝利し続ける為のゲームなのである。
しょうないバグなら他にもいくつも利用した。
例えば露店。このゲームの露店は『フリーマーケット』というエリアでのみ開くことができて、プレイヤーキャラクターの頭の上に吹き出しのような感じで店の名前や売ってる商品の紹介文などが表示される。その吹き出しをクリックすると店の中の商品を見ることができるという仕組みだ。
この吹き出しは宣伝のために必要かつ重要な要素であり、読むことができなければ話にならない。なので当然ながら他の人の露店と被って商売をする事はできず、フリマは場所の取り合いになる。
当たり前だが『フリーマーケット』の入り口から一番近い場所が一番売れ行きが良い。なのでそこを頑張って取り合うのだけど、他のプレイヤーも当然そこを狙う。一等地なんてそうそう狙えない。
でも一等地にお店を建てたい。そうして僕が利用したのが『ジャンプ露店バグ』。
一見すると他のお店と重なっていて露店を開けないように見える場所。通常は実際開くことができないのだが、ジャンプしながら露店を開けば販売できてしまうという恐るべきバグだ。
通常の状態なら重なるが、ジャンプ中なら吹き出しの重なる面積が小さい。だからジャンプ中に店を開いてしまえば落下したあとに吹き出しが重なっても問題なく店が開ける。実に完璧な理論である。
これによってとてつもなく狭いスペースにも店が開けるのだが、それでもさすがに他のプレイヤーと完全に重なって店を開くことはできない。同じバグ……もといテクニックは知っている者は皆利用しているので『ジャンプ露店バグ』で開けるスペースが残っていない事も多々ある。
そんな時は次の手段だ。バグなどではない正攻法で行かせてもらう。スキル『ドラゴンロア』。
ドラゴンが派手に咆哮しつつ画面が揺さぶられるという極めて派手な演出で、マップで行使している人が居るとクソ雑魚スペックの回線なら一撃でラグ落ちしかねない最悪のスキル。これをフリマで行使する。
この頃のフリマはログイン中に画面を開きっぱなしにして放置することによって販売を行うという前時代的なシステ厶(そもそも時代が前時代)だったのだ。つまり、フリマのお店はラグ落ちすれば——消える。
「死ね!『ドラゴンロア』!『ジェネシス』!」
当時における最強の重力系スキルを友人と連発することによってじょうよわ共を突き落とす!僕のPCも言うほど高性能ではないが、この程度のスキルで落ちる事などありえない。
——なぜなら画面が揺れる演出をOFFにしているからだ。
一流のプレイヤーであれば重力系スキルへのメタとしてお店を開く時に解像度を下げて演出をOFFにするのは当然の事。それを怠るじょうよわはフリマの争奪戦に負ける。極めて当然の理屈。怠惰なプレイヤーは一等地から出て行け。
これこそがMMO、これこそが我が人生!ダーティなプレイで他人を蹴落としバグ利用で優位を得る。晒しスレなど知ったことか!!