TS幼女は方々を駆け回る
ダンマスTS幼女に、地球の主神の部下から依頼が来た。
それを果たすべく、西へ東へ南へ北へ。
ダンマス幼女はトンデモなステータスとスキルと装備品の暴力でひた走る。
薄いピンク髪したTS幼女だよ。 背はちっちゃいけど、アホ毛は長いし胸もデカいよ!
女は胸とかに刺さる視線はモロ分かりって聞いたことが有ったけど、アレは冗談じゃないみたいだよ。 異世界へ飛ばされた時もだけど、野郎の視線が刺さってムズムズするんだ! この○リコンどもめ!
前回はダンマス業は大変! って愚痴ったぞ!
で、今回です。
前回のダンジョン挑戦者の感想・意見で出た、貴重な動植物の保護と繁殖を目的としたダンジョンの用意。
神が強烈に支持をしているため、ナルハヤで国と話し合ってみた結果、国際条約が有るからとかで範囲は国内限定となりました。
神にそれを報告すると、
[ちょっとズルい力を持っても、驕ったりしない良い子を各国で選別して、君みたいな仕事をしてもらうよう頼むしかないかな]
ってメッセージカードがヒラヒラ落ちてきた。
その後、国内の他のどのダンジョンを乗っ取るか、神と相談して決めました。
決めたら早速ダンジョンアタック。
超高レベルに超ステータスと豊富なスキル・魔法と戦闘経験に物を言わせて快進撃。
更に誰も見てないのを良いことに、ちょっと扇情的な外見のガチ装備セットで駆け回る。
胸元は大きく開いてるし、腹もマルっと出てる。 露出して肌が見えている所を殴られても、見えない装甲の力でノーダメージ。
手に持つは剣の形をした光を生み出すなにか。 ひと振りすれば、中級ダンジョンの魔物ごときは一撃すら耐えられない。
おっきい熊さん何するものぞ、三つ首ワンちゃん三枚下ろし、バッタバッタとチャンバラリン。 俺のアホ毛もご乱心、殿中でごさる殿中でござる。 アホ毛様、コウモリを対空攻撃で刺しコロコロするなんて、望んでおりませぬ!
時には宝箱でガッカリ三昧。 後でギルドにプレゼント。 ボス階の帰還魔法陣を横目に流し、首を洗えやダンジョンコアども。
そんなこんなで3日もかけて、盗りに盗ったりダンジョン5つ。
俺のステータスなら、本気を出せば新幹線を越える速度も出せる。 ビックリだろ? 俺もビックリした。
その結果、本気を出して走るなら、衝撃波が怖いから新幹線のレールの上を走ってくれって国からお願いされた。
ちなみに盗ったダンジョンだけど、タマちゃん大活躍。
盗った所のダンジョンコアがウチのタマちゃんと繋がって、俺のダンジョンから遠隔管理可能だし、盗ったダンジョンへはジャンプ可能と言う便利機能がポコポコついた。
クリアしたダンジョンのコアに触れるだけで“ダンジョンマスターなら”支配できると教わったが、本当に出来た。
ついでにタマちゃんのスペックが上がって、会話で俺をいじる頻度があがった。 こいつ、変な方向に成長してやがる。
で、とりあえず手に入れたダンジョンの内3つをいじってみた。
季節や気温を外と連動させた海環境、山環境、沼や田んぼ・干潟環境。
ダンジョン産の特別入場証が無いと入れないようにして、それぞれの学者と話し合って環境を微調整してから動植物を放す予定。
このダンジョンに許可の無い奴が入り込んで密漁(猟)をしようものなら、ガーディアン設定した餌要らずの超強力な魔物に排除して貰います。
実は動物管理の神から、高名な学者でも知らない知識や情報を“こそっと”もらって、動物達の環境をより良くしてる。
残りの2つ? 俺のダンジョンとはかなり離れてるから、初心者向けダンジョン再び。
冒険者が俺の所に集まりすぎて土地を間借りしてる役所が悲鳴をあげてたから、人が分散されてちょうど良い。
攻略したダンジョンを低難易度化して運用。 減らした階層分は、俺のダンジョンのゼロ階みたいな設備と、なんか妙に人気だったふれあい動物園。
後は、そこの自治体と話し合って目玉になりそうな観光資源化。 海無し県のダンジョンを盗ったら、海エリアが欲しいとか言われそうだ。
「という訳でタマちゃん、再びの試練だ」
ダンジョンアタックも落ち着いて、試練が早々にやって来たのだ。
〈もう少し詳しく〉
話の省略はまだ出来ないらしい。 もっとタマちゃんと交流する必要を感じる。 が、いじられるのは正直ゴメンこうむりたい。
「初心者向けダンジョンを2つ作ったからな。 またオープニングイベントをしろって言われた」
〈ああ、マスターが羞恥に打ち震えて、観客の皆さんがニヤニヤする集まりですね?〉
間違いではない。 間違いではない……んだよ。 だからこそ、なんと言うか。
「辛辣だね、タマちゃん」
〈事実ですから〉
そこを取り出して言われるのがもう、ね?アホ毛がなんだかしおれてて、視界に入ってきてるよ。
「個人としてはね、勇ましい格好をして『これからお前達は戦いに行くんだぞ』って気分を盛り上げてあげたくて、あんな格好をしてみたんだよ」
〈盛り上がったのは、既に盛り上がっているマスターの胸と、野郎共の劣情だけでしたってオチでしたけどね〉
「胸を話題で出す必要あるのか? タマちゃんよ」
なんか助平オヤジ化してないか?
〈冒険者達を観察して得た事実です〉
ヒラヒラ。
俺が悲しみに沈みそうになったタイミングで、狙っていたかのように神からのカードが。
[成る程成る程。 そんな目的であのドレスアーマーだった訳ね。 ならば、そう言った目的別のコスプレを……むふ]
ばちーん!突っ込まない。 無言で机に叩きつけて、カードを消す。 そして勢いのまま、思い付いたまま口を開く。 すると視界からアホ毛が消えた。
「今回はアレにしよう。 アニメとかを参考に、戦うシスターとアブない赤ずきん」
〈シスター……深スリットのシスター服は嫌がったじゃないですか〉
「アレは単体だったからだ。 銃弾の帯を体に巻き付けて、大きい模造銃とか持っていれば、格好いい感じになるだろ?」
以前見たぞ。 アレは格好いい……しかも強キャラ臭が漂っていて。 逆光を背にして、眼鏡を真っ白にギラリと光らせているシーンなんて、震えた。
……まあ、アレはシスターじゃなくてメード服だった気もするが。
〈銃は模造でも、法律を考慮してやめておいた方が良いと思います〉
「ならば、タワーシールドと身の丈を軽く越える大きさの両手剣を片手で持てば、イカツイシスター。 こっちでも見映えはする。
ミリタリー赤ずきんは流れでNOだから、そっちはメイスタイプとチェインフレイルタイプ両方のモーニングスターで良いかな?」
〈マスターはエロカワは嫌だけど、エロカッコいいのはOK……と〉
「ちょっと待て」
なんか不穏な単語が聞こえた気がするが。
〈どうしましたか? エロマスター〉
「誤解を招く様な言葉はやめろ!」
〈でも、深スリットシスター服を着るんでしょう?〉
「着ないよ! 裁縫……服飾スキルでスリットを縫って、普通のおとなしい服に戻すんだよ!」
〈そんなのつまらない!〉
「良いんだよ!」
〈つまらないです……〉
「少し悲しそうに言ってもダメ! 俺が着るんだから、エロいのは絶対にNO!!」
タマちゃんの抵抗に、俺も全力で抵抗する。エロいのはいけない、絶対に変なのが涌く。 厄ネタにしかならない。 俺の意思を示すように、アホ毛が盾みたいな形を作って目の前をガードした。
ふたつのダンジョンオープニングイベントでの、反応をまとめて抜粋してご紹介。
〈凄まじい威圧感すらある装備なのに、本人はド緊張でプルプルしてるの可愛い〉
〈プルプル震えるシスターと一緒に、別のところがプルプルしてた〉
〈シスター服の胸元が妙に大きく開いて見えて、心のヘンな扉が開きそうになった〉
〈相変わらずの挙動不審なアホ毛〉
〈ダンジョンアタック前に、男子トイレで行列ができてた〉
〈可愛らしい赤ずきんに4つの大きな球が……ふぅ〉
〈トゲ付き鉄球で殴られたい〉
〈シスター・赤ずきん、両方の頭巾をアホ毛が貫いて、生えているように見える件〉
〈もしかして:生きたアホ毛?〉
〈おとなしい格好なのに自己主張するプロポーションは卑怯。いつかもいでやる〉
「……これは」
〈アブない人が増えている印象でした〉
「だよねぇ。 前のオープニングイベントの時は可愛いだのなんだのって意見ばっかりだったのに、妙に変態度が上がってないか?」
〈マスターのせいでしょうね〉
「なんで? 俺はそうならない様にってヘンなのが釣れそうな服は、全力で避けてるんだぞ? ……それ以前に恥ずかしくて着たくないけど(小声)」
〈逆ですよ〉
「逆?」
〈清楚で大人しい物や健全な可愛らしさを目指した服ばかり着ているからですよ〉
「……分からん」
〈ならば、こちらのマスターの今までのファッション履歴をどうぞ〉
「そんなの記録してたんか!? ……って、これって!」
〈はい。 だからこそなんです。服だけ見れば、健全な服なんですよ〉
「そうだった。 俺はこの身体を見慣れていてあまり思う所がなくなってきてたけど、キャラとして作ってすぐの頃は何着せても興奮してたわ」
〈内気そうに見えて、ちんまくて可愛らしい幼女に付いている、大きく主張する胸。 男の妄想力をあなどってはいけません。 ……って、マスターも男の子だったのですね〉
「……どんな服を着てても手遅れ、だな。 あと、だったじゃない。 今も心は男だよ」
〈はい。可愛い幼女マスター〉
「おいっ!」
ひらひらーん。
[健全だ。 だからこそ、それもイイっ!ふむふむ……そっちも攻めてみようかな?]
べちーん!!
「芋ジャーとビン底メガネセットでも、ヘンな需要が有るみたいだから却下。 そうなると……外へ出るときには、温度調節機能付きの着ぐるみパジャマ辺りで統一しようかなぁ。 そうすれば可愛らしさしかばら蒔くものがなさそうだし」
〈猫の着ぐるみで、野良猫が親猫だと思って付いてくる珍事が発生したり━━〉
「それは無い」
━━━━
第2次オープニングイベント終了後
「そう言えばだが、地球に戻ってきてから、既に半年は過ぎてるんだよな」
〈いきなりなんですか、その説明臭いセリフは〉
「いやぁ、ここまで駆け足で来てるからさ、いっちょ振り返っとこうかと」
〈振り返るほどの中身は有りましたか? あまり記憶に有りませんが〉
「ひどっ! ……ってまあ、帰ってきてからおよそ4ヶ月位は初心者向けダンジョンの設置場所の候補探しと、俺の立ち位置扱い等々の交渉で潰れたからな」
〈場所を大体決めたら実家等への挨拶。 それが終わってからずっと首都のホテル暮らしで、寝て起きたら会議、寝て起きたら交渉、寝て起きたら説明会。 しかも全部話がまとまった時には、神から貰っていた資金がなくなりかかっていたって愚痴ってましたからね〉
「あれは神経が擦り切れるかと思った。 連中はずっと信じられないだのさっきはこう言っただの、神なんて本当にいるのかだのゴネ倒して、揚げ足とってマウントとって~しかも滞在費は経費で落ちない。 自腹でヨロシク~って……あ、なんか目から汁が」
〈それからダンジョンを実家の有る市の役所へ置けるよう交渉〉
「国から設置許可自体はもぎ取ってきたからな。 ここに置くと良いこと有るよ~ってメリットデメリットを並べたらすぐOK貰えた」
〈デメリットも律儀に並べたんですか?〉
「考え付く限りのは、な。 言っとかないと話が違う!ってひと悶着起こされそうだし。予防線だよ予防線」
〈そこから実家に寄生して私を設置して、ダンジョンを作成して会見して、オープンまでが1ヶ月〉
「で、例の動物の神からの依頼が発生してアレコレやって更に1ヶ月。 外はとっくに冬だ。 と言うか年末だ。……ん?キセイの漢字が違くないか?」
〈年越し準備は?〉
「(スルーされた……)まだ! と言うか、実家に一任! 料理とか手伝える所は手伝う予定! 大掃除は俺の生活魔法でチョー綺麗にしてやる!」
〈お気楽な計画ですね〉
「ゴタゴタしまくってたんだよ! 暇が無かったんだよ! 良いだろ、それくらい!」
〈……マスターとの年越しは、出来そうに無い感じですか?〉
「いやいや、タマちゃんと離れていても、やり取りできるアイテムは作ったろ? それを持っていれば同じ事だろ」
〈……ちっ〉
「なに、その舌打ちっ!?」