TS幼女はKAWAIIに立ち向かう
おまけその2。
ウサギまみれ。 そんなネタをなにか短編で書こうかと考えたのですが、物騒なものばかりになったからこっちで。
ういうい。 幼女サイズの矮躯が完成形、TSさせられた幼女だぞー。
現在4月。 あの神罰でクジラを暴れさせはじめて1週間。
着々と結婚式までの時間が短くなってきてるが、準備は問題なく進んでる。
式で使うテーブルは用意してあるし、立食形式食べ放題を予定してるから、それ用の料理も順調。
俺の【無限インベントリ】は時間停止機能が有るからな。 今から作って入れとけば、いつでも出来立てだ。
引き出物も制作中。 シンプルな白い大皿3枚セット。 皿へは割れにくくなったり、常に清潔さを保つ能力を付与した逸品。
皿に乗った物の温度維持機能まで付けてやろうとしたけど、素材(皿)の限界で付けられなかったのは残念。
で、それらと平行して現在、俺と婚約相手の晴夏で何をしているのかと言えば。
「適当とか無難じゃつならないでしょ? もっと考えてよ!」
「いやいや、神級ダンジョンの敵を1体でも倒せる通常人類は居ないから、テキトーでいいじゃんか!」
「見えない所にこだわってこそ女の子! まあわたし達は、ほぼ毎晩全部見せ合ってるけどねっ!」
「何言ってやがるよ!? 言う必要ねー事までよ、おい!!」
「えー、今更恥ずかしがる事じゃなくない?」
「つーか話が脱線しすぎなんだよ! 話を戻せよっ!」
「えー……」
……脱線しまくった会話からじゃ、あまり解らねぇな。
ええと、現在単体だけど解決不能なスタンピードを起こしている、神級ダンジョンの魔物配置会議中。
俺の格好は、ニホンザル着ぐるみパジャマ。
晴夏はひねった格好をせず、外出用の普段着。
俺を膝に乗せて抱き抱える姿は、観光地へイタズラしに降りてきた猿を捕まえた、地元住民の図。
捕まった猿のふりをしているのか、俺のアホ毛はずっとうなだれていて、ピクリとも動かない。
……いや、捕縛者の隙を窺う様に、毛先だけこっそり動いてる。
このダンジョンを創る際に、スタンピードで出撃させるクジラ以外はアトランダム配置だった。
が、神級にはどんな魔物を置けるか気になっていた晴夏が精査して、どうしても置きたい魔物が居たらしく現在に至る。
神級は探索階無しの10回連続ボスラッシュが絶対構成となっていて、ボス1体の強さはひとつ下の難易度最奥ボスより基本強い。
どうせ人類には1回すら突破不可能なんだから、全部見てくれないし配置は変更せず適当で良いだろと俺が主張し、
それに大反対して持論をブチ上げる晴夏。
神級ダンジョン新設を指示した主神は完全におまかせモードで、特に何も言ってこない。
「……で? お前はどんな魔物を、神級へ置きたいって?」
うん。 まだ主目的へ行く前だったんだよ。
提案されたのが面倒だから流そうとしたら、あんな事まで言いやがったからよ?
脱線した話を戻したのは良いが、そうしたらそうしたで、晴夏の瞳がギラついてくる。
そして、神級魔物召喚リストから抜き出した物を、俺に思いっきり見せつけて来た。
それは―――
「コレ! この子を中心として、モフモフ可愛いダンジョンを創りたいのっ!」
「ラブ・ヴォーパルバニーか」
「そう! 見た瞬間から、可愛くて可愛くて! 可愛いらしさ神級ってねっ! ぐふふふふ」
「……はぁ(ため息)」
ラブ・ヴォーパルバニー。 説明をせねばなるまい。
以前超級ダンジョンで見かけた、ヴォーパルバニーの変種。
ラブの名前は伊達ではなく、外見があざといほど可愛い。
普通のヴォーパルバニーが野うさぎ的、自然な愛らしさを持つ外見。
対してラブは2次元と言うか、ファンタジー的と言うか。 やたら人工的で作為的な可愛い外見を持つ、とにかくKAWAIIウサギなのだ。
小さいシルクハットだのレースカチューシャだのヘッドドレスだのを頭に被ったラブ、
小さい紳士ステッキや魔法少女的ステッキや花一輪を背負ったラブ、
天使の輪っかと羽根や小悪魔の羽根と尻尾なんかを付けたラブ、
自然では存在し得ない弩ピンクやハートマーク柄やパステルカラー毛皮のラブや、
燕尾服風やドレスや水着と言った何かを着てる様に見える毛皮のラブまで組み合わせ自由自在。
ありとあらゆるKAWAIIを全面に押し出し、油断してモフろうと近寄ってくる犠牲者の首を、刎ねる。 それがラブ・ヴォーパルバニー。
しかも油断せず、ボス部屋で出てきても必ず群れで存在する、本気の危険物。
単体でのスペックは超級最奥ボス以下だが、集団でKAWAIIしてくるそれは、神級の名に相応しい危険度。
ちゃんとそう丁寧に、見た目ほど可愛くない事を晴夏へ説明したのだが、全く効果が出ない。
「神級モフを集めたダンジョンだよ!? そんなの絶対可愛いに決まってるじゃんっ!! 最強だよ!?」
……これだよ。 この後も、いくらモフを集めても自分達ではモフれないとか、そのダンジョンへ行けばモフをコロコロするんだぞ? と何度か説得しても、頑として譲らず。
んで、ダンジョン全体と言った以上、他にもモフを推してくるわけだ。
モフ子犬を装って、近付く者に反応し頭をでかくしてパックンチョする、変種のフェンリルとか。
外見モフい巨大モグラだけど、地竜とは違う土竜と呼ばれるれっきとした竜種で、しかも土竜種最強な特別種とか。
ライオンサイズの猫で長毛種。 しかし実態はケットシー系の最上位戦士である特異種だとか。
ペンギンのヒナっぽい見た目で、超音速誘導ロケット頭突きしてくる、生きたミサイルだとか。
見た目熊のモフいぬいぐるみだけど、頭や手足がもげて飛び回って爪やビームで攻撃してくる、まるで脳波制御によって機動する戦士のスーツやアーマーみたいなのとか。
モチーフが分からんけどなんか弱くてモフ可愛いぬいぐるみで、倒したと思ったら長くて太い海苔巻きみたいなのへ変身して、飛び回ってガリガリゴックンしてくるヤベーのとか。
人間サイズでカバの妖精っぽい奴だけど、白い触手の大群を召喚してくる本気でヤベーのとか。
「まあ俺らなら油断しなければ簡単に倒せる連中だけどさ、倒すにも罪悪感とか湧くだろ?」
「見る分には最高なんだから、なんの問題も無いの!!」
終始コレ。
何度も何度も堂々巡りする俺達を見かねたのだろう、タマちゃんが助け船を出してくれた。
〈どうせ地球人類では手に負えない物ですし、それにサブマスターが良いと言っているんですから、やってあげたらどうですか?〉
……助け船じゃなく、俺への降伏勧告だった!
こうなると、賛成2の反対1。 俺に勝ち目は無くなった。
「分かったよド畜生! 変更はスタンピードが終わってからだけど、スペックや倒しやすさ順でリストを作ってくれれば、変えてやるよ!」
まあ、こうなるよな。 抵抗は最初から無駄だったと、予感や直感系スキルの通りになっちまった。
やれやれ。
忘れない内にToDoリストへ登録と、タマちゃんにも覚えていてもらわないと。
そう決めて行動に起こそうとしたら、晴夏が俺を抱える力を強めた。
なんだと思い後ろを見ると、ちょっと怖い顔した当人。
「何言ってんの? クジラが暴れてるダンジョンじゃなくて良いんだよ?」
「は? クジラの様子を見ながら提案されたんだから、あのダンジョンの話だろ?」
なんか訳の分からん話になってきた。
「神級ならどこでも良いのよ。 わたしは今すぐ、ラブリーなモフ天国へ行きたいの」
「……マジ?」
「マジ」
どうやら俺の勘違いが有ったらしい。
「なら早く、配置する10組を決めてしまえ」
「はーい! 決めたら早速、一緒にいこうねっ」
「はいはい。 なら晴夏用の最高性能防具で、肌面積が大きい奴を用意して待っててやるよ」
「むっ……だったらアンタはビキニアーマーで決定! この余計なデカブツを強調して、恥でもかくと良いわ!」
そりゃねーぞ晴夏! つーかドサクサ紛れに胸をもごうとすんなよ!!
「いやいやいや!」
「いやいやいやいや!」
「いやいやいやいやいや!」
「いやいやいやいやいやいや!」
さっきの言い合いには負けたんだ、今度こそ勝ってやる!!
〈あんたら……ふざけるなら、とっととやる事やってからにしなさいな〉
ちっ、勝負はお預けか。
『はーい』
〈この馬鹿ップルが……〉
タマちゃんのボヤきなんて聞こえなーい!
神級モフダンジョンを攻略して、帰還後。
「20周てお前……しかもマジでビキニアーマー以外許さねぇとか」
「なによ?」
「モフモフでモフモフしてモッフモフにまみれて、幸せ~とかお前がすると思ってたんだよ」
「可愛いものが大好きなのは認めるけど、そんな目的で用意して貰ったんじゃないから」
「そうだよな、晴夏ってば無慈悲に倒しまくってたもんな」
「……なによ、その引っ掛かる言い方は」
「別に?」
「わたしは可愛いからって、倒すのを躊躇う甘い奴になりたくないから、今回のお願いをしたのよ」
「そうか」
「そうよ? わたしに何か言う事はないの? スキル全開にして心を読まれる前に、正直に言った方が良いわよ?」
「採った毛皮で、それぞれのぬいぐるみを縫ってやろうか?」
「マジ!?」
「マジ」
「ヒャッホーーィッ!」
「…………」
「なによ?」
「…………」
「なにを言いたいのよ?」
「別にぃ?」
「はっきり言いなさいっ!」
「やっぱり(神の補佐として、感情論で動かないよう)割りきる訓練だけ、じゃないんだなってな」
「メインはそれよっ!」
「メインは、な。 ちゃっかりしてんなぁ」
「悪い?」
「いや。 だからこそ(添い遂げる覚悟をしてくれているお礼として)のぬいぐるみだし」
「可愛くお願いね♪」
「お前に負けない位には作ってやるよ」
「っ!!?」
「どうした?」
「アンタがわたしを可愛いって! いま!!」
「言ってねぇよ」
「言いましたー! ぬいぐるみより可愛いって、ハートマークアイコンを浮かべながら言いましたー!!」
「知らんし、ハートマークなぞ浮かべてねぇ」
「もう一回言ってよ!」
「訳分からん」
「言ってよ、ねぇ!!」
「知らんって」
「ハートを出してたのは嘘だったと認めるし、スキル使わないから、言ってよーーーー!!!」
「うるせぇ」
「……もういい。 直接体に訊いてやるから」
「!? 待て、どうしてそうなるっ!」
「知らない! アタマを真っ白にさせて、だいしゅき晴夏!とか、世界で1番可愛いよとか言わせてやる!!」
「いやいやいや! 20周して疲れてるから! リビングドール達の目もあるから!」
「だったらアンタの部屋の奥へ行きましょ。 それと言い訳は、1度アンタを可愛くさせてからね!」
「やめろ~~~~っ!」
〈…………私は永遠に、こんなふたりの秘書で居続けるのかぁ〉
※お疲れ幼女は、口数がかなり減る。




