TS幼女はもぎたがる彼女に完敗した
TS幼女、ついに覚悟を決める回?
はいよー。
3月の最大イベント、卒業式……は関係ないな。
ホワイトデー当日の、地球を管理する主神からダンジョン現人神(見習い)と日本のダンマス業を押し付けられたTS幼女だ。
外見はキャラメイク式ゲームで組み上げた、薄ピンクアホ毛付きポニテ青目、身長最小で胸囲最大とか言う拗らせた馬鹿野郎が喜ぶ姿だぜ!
……自分で作り上げといて、それが自分の姿になるとは思わなかったよ。 マジで(ため息)
そうだ、前回のアレな放送をやらかした顛末。
偏向報道と見られるかもしれない内容、沢山のご批判を真摯に受け止め、より良い番組を作れるようウンタラカンタラ。
つまり謝罪してんのか、よく分からねー声明文を出してお茶濁しで終了の、定番パターン。
話を戻して、ホワイトデー当日。
我が本拠地ダンジョンと、他の低級ダンジョンでは前後含めて3日間のホワイトデー配布イベントをダンジョンで開催中。
根回し兼普段からの感謝を込めたお巡りさん達へのお菓子は、気合い入れて【疲労回復】とか【スキル経験値上昇】とか付与してみたぞ!
それ以外については、迷宮を散歩した頃にホワイトデーの話をしたから、ここではダンジョンでのイベント内容は大体省く。
ただこのイベントに言う事があるとすれば、
「野郎が女子へチョコのお礼をする日とされてるのに、ホワイトデーイベント参加者の多くが野郎なのはなぜだ……」
5割……いや、6割が野郎ども。 ソロとチームの違いは有っても、ダンジョンアタックで突入してくる組としての割合が、そんなモン。
残りが女の子チームやカップル達。
男女区別無く大半が、ここで入手して誰かへのお返しとするのかな~? とか思ったんだが、手に入ったらすぐ封を開けて食ってやがる。
なんだこいつら? と思ったよ。
配ってる菓子なんざ急造のクッキーや、ダンジョン内で栽培した金平糖モドキの実が生る異世界植物を、小袋に入れた物だぞ?
食いたくなったらスーパーでも買える様な味の。
それが欲しくて必死になってる様子なんざ、見てるこっちはドン引くわ。
んで食ってる様子を見ると、涙なんて流してるのもそこそこ居て、引く倍率ドン。更に倍。
こんな酷い光景を、へんにゃりしてるアホ毛と共にながめていると、タマちゃんからフォロー?が入れられた。
〈仕方がないでしょう。 あれらの多くは、チョコが貰えなかった個体だと推定されます。 なのでホワイトデーでもマスターから、何か物を貰いたいんですよ〉
まあ俺も元はモテない野郎。 分からなくはない。 ないんだが。
主神のメッセージカードひらー。
「だからってコレは、本気で酷すぎる。 なに? 幼女の配布物だぞ? 小さい子からの微笑ましいプレゼントを貰ってる空気じゃないって」
見ろよ、あの飢えた獣の顔を。
見ろよ、同じチーム内で配布物を奪い合う、あの浅ましい様子を。
「ほら、ダンジョン運営を手伝ってもらってる、ドッペルゲンガーやリビングドール達の様子との対比を」
ダンマスルームでは俺が管理しているダンジョンの様子が確認できるモニターを、壁に沢山浮かべている。
それで大画面にして表示したのは、休憩中のドッペルやドール達。
こいつら用に用意した居住エリアの大広間、そこにはケーキバイキングがずらっと。
どれもコレも俺がスキルやステータスに物を言わせて作ったケーキ達。
みんな素朴に和気あいあいと、ケーキを選んで思い思いの場所にて、笑顔でつついている。
「これと意地汚い野郎ども、この対比でフォローできるか?」
タマちゃんに突き付けてやった現実。
カードひらりん。
〈それでも――〉
タマちゃんが何か言おうとしている所で、割り込む声があった。
「――ねえ」
声の主は茂木晴夏。 3年かかった異世界転生と帰還の前から知っている、元同級生で友達の女子。
押し掛け同居のサブマス→同棲→同棲している恋人、とか言う特殊な経緯を持つ相手。
いつもは俺を膝に乗せていじってくるが、最近は雑誌攻撃の為か、別ソファで対面するように座ることが増えた。
服装は俺に併せてコーデする場合がほとんどで、今日は俺がよそ行きの少しお高い服を着込んでいるために、晴夏もそんな装いだ。
俺は一応元の性別である男を意識した組み合わせなんだが、膨らんでるアレが邪魔して、どうしてもボーイッシュになりきれない。
対して晴夏は、じゃじゃ馬娘のお目付け役。 動きやすいけど、お淑やかな印象になるやつ。
それから特徴はちょい長身で、ジト目である所。 それとアルファベットでAやBにコンプレックス持ち。
……ついでに長すぎる俺への片思いを持ちすぎた結果、俺限定でサトリ効果のあるスキルを持ってしまった、俺の天敵。
あー、いや。 天敵ってのは嫌いって意味じゃねーからな?
外見は幼女でも、心は男。 晴夏の前で格好つけてても見透かしてくるから、格好がつかなくて一生恋愛で勝てそうにないってだけ。
現在も結婚情報誌攻撃が続いており、俺がやったバレンタインのお返しとして、茶色の紙を渡された時には気が遠くなった。
そんな女が、こう言った。
「わたしへの、バレンタインのお返しは?」
ドッペル達へのケーキで、思う所があったらしい。
普段よりジト目の強さが、強烈だ。
――――わたしを差し置いて、ホワイトデーのプレゼントを他人にしてんじゃねーよ。
そう聞こえそうな眼力。
……まあ、ちゃんと用意はしてあるんだが、ちょっと勇気がいるんだよ。
カード。
「あるんでしょ? ちょうだいよ」
ヤバい……完全に目が据わった。
これは怒る据わり方じゃなくて、バレンタインまで俺が曖昧な関係でズルズルしてた頃に見せた、マジ泣き寸前系。
関係が変わる事にビビって、自分の感情に蓋し過ぎて、彼女の気持ちを知らず踏みにじりそうになったやつ。
あの時の涙目は、俺にすげー効いた。
俺のあまりにも不甲斐ない情けなさに。
これに、タマちゃんからの援護射撃が。
〈マスター、もう腹をくくったんですよね?〉
ぐぅっ! それは晴夏用のケーキを飾り付けていた際に、タマちゃんと喋ってた話!
カーd。
………………。
目を閉じて、ゆっくり深呼吸。
ここで男を見せないと、流石にヘタレ過ぎるよなぁ。
いい加減、覚悟を決めるか。
つーかここでヘタレたら、何のために気合いを入れた服着てるんだってなるよなぁ。
決意に釣られたのか、アホ毛がピンと張る。
目を開けて力を込めて【無限インベントリ】から、ホールケーキを取り出してテーブルに置く。
「っ!!?」
そのケーキを見て、息を飲んでいる。 晴夏は理解したのだろう。
多分単なるホワイトデーの菓子だと、思っていたのだろうな。
思いがけない攻撃で、どんな顔をすれば良いのか分からず、無表情である癖に真っ赤な顔をしている。 ……と思われる。
どんな攻撃だったかをざっくり言えば、ケーキに文字デコがされている訳だ。
なんて書かれているか? 言えるかよ、そんなモン。
「~~~~~~!!」
追撃で中身を見せる様に開けた小箱をひとつ追加したら、晴夏は両手で顔を隠しながら、体をクネつかせた。
それでクネりながらもチラッと目を逸らしたのに気付いた俺は、その先にある物を察して【無限インベントリ】へ無言の収納。
箱は買ってきた物だが、中身は自作品。
【紛失・盗難防止】【状態異常無効】【回復速度上昇】【ステータス強化】【スキル経験値上昇】【MP蓄積】【サイズ自動補正】
その辺の効果を込めに込めた、最高のファンタジー金属と神級ダンジョン産の魔石で作った指輪。
ステータスとかスキルとか魔法とかダンジョンとか、半ゲームみたいな概念を取り入れてしまった、ファンタジーな地球だから作れた代物。
あー……まあ、なんだ。
つまりアレだ。
俺の様子に気付いて、指の隙間からこちらを覗く晴夏と、その目を見据える俺。
ついでで妙にまぶしく、チカチカ点滅するアホ毛。
カー。
「タイミングを探ってたんだ」
顔を引き締める。
プニプニほっぺの幼女が引き締めても、どれだけ効果が有るか知らんが、引き締める。
覚悟が伝われば良いな、と思いながら。
「言われ続けて、アプローチされ続けて、流されて言わされました。 なんて言い訳したくないし」
……引き締められているのだろうか? なんか外気を少し涼しく感じてしまうが。
そして晴夏のスキルで見える、俺の感情アイコンはどうなっているのだろうか?
ハートマークが乱打されているとか、恥ずかしい事にまさかなっていないだろうか。
…………ん? むしろ覗いている晴夏の瞳に、ハートマークが浮かぶ錯覚。
「その、なんだ。 一緒に不老へならないか? ……ってのは物で釣ってる物言いだな、すまん言い直す」
まずった!
単刀直入、結婚しようとか言うつもりだったんだが、現在の戸籍が女になってるから無理~とか思って除外したから、すぐ出せる言葉がみつからない!
どうする?
一緒に暮らそう? 同棲してるんだから、今更だ。
俺と同列になって、神の連れ添いになってよ! どこの魔法少女セールスビーストだ!?
ヤバい! 全然出てこないっ!
ええい、困った時の直感系スキル! 口と声帯の制御を頼んだぞ!
「晴夏と、子供を作りたいっ!」
サイテーだーーーーーーっ!!!
おいスキル! それ不味いやつ!
アホ毛も調子に乗って、一番強く光りやがって!
アレじゃあただのケダモノ宣言!!
以前主神から、神なら同性でも結婚すれば、子供を作れるって言われたけど、プロポーズの言葉としてそりゃねーよ!!
やべーよやべーよ、コレじゃあただの色情狂だよ!
そしてアホ毛は光らなくなったと思ったら、楽しそうに暴れるな!
カ。
晴夏を放ってひとりでパニック起こして、頭を抱えて蹲っていたら、大音声が響いてきた。
「よろこんでーーーーっ!!」
俺の視線がバッと上がり、視線が特定の人物へ向かう。
向かった先はもちろん晴夏。
あの漫画で女の子が「バカヤロー!」とか叫ぶ時に見せるポーズを、ソファから立ってしていた。
〈なんだ、このバカ夫婦……〉
タマちゃんの声なぞ耳に入ってこない。
制御不能になったアホ毛が、まるで扇風機みたいに回りだす。
「良いのか、晴夏!?」
確認として聞き返すが、
「雑誌を見せたのはわたし! むしろこっちからお願いしたかったっての!!」
指の隙間から見たのは間違いでは無かった。
こいつの瞳は完全にハートマークだ。
〈もう爆発してなさい、獣どもが〉
なんか聞こえたのはスルー。
俺はスルーしたが、目の前にいる人物はどうやら違った。
「……ばくはつ」
呟きと同時で、急にテンションが落ちる晴夏。 何か“ばくはつ”から連想される、嫌な事があったのだろうか?
「どうした?」
激しい気分の起伏。 感情のジェットコースター。
心配になって寄ってみたのだが、どうやら何かをブツブツ言っている。
気を利かせたのか、アホ毛も大人しくなった。
「…………クソ、ノーマルなリア充どもめ。
ホワイトデーイベントダンジョンで爆破されて汚されたら、お前らは普通に休憩できるホテルへ行けて良いよなぁ、わたしなんてパートナーが永遠のロリで利用しようとした瞬間にお縄だぞ。
なんだよちくせう、わたしらが穏便にスルなら家しかねーのかよ。 少しは刺激が欲しいんだよ。
結婚まではーって、ヤッても清い体を意識してるから、内容も単調でいい加減飽きがきてるしよぉ…………」
…………すげぇ恨み節。
ここまで不満を溜め込んでたのか。
あの欲望に若干引くものは有るが、プロポーズした相手だ。
一応だが不満にわずかでも応えられる手段がある。 これは……久し振りにダンジョン拡張か。
そうと決まれば、ささっと脳内で拡張を指示。
有り余るDPを消費して、即座に作業完了。
まだブツブツしてる物体を見上げながらスカートの端を握り、何度か小さく引っ張る。
「……ん? カワっ!」
正気に戻った晴夏がこっちを見下ろして、変な鳴き声を出したが聞き流す。
「ついてこい」
「いや、ちょっと待って! そこそこ長いけどそこまで引っ張られたら、少し恥ずかしいんだって!」
スカートを破かないよう、優しく引っ張って誘導する。
その連れていった先に広がる光景は――
「……プライベートプール?」
――例の、が付くのに似せたやつな。
だがそれだと少し狭いから大きくして、プールサイドも拡げた。
内装の寂しさをふたり並んで寝られるエアクッションや、南国風観葉植物をいくつも配置して誤魔化す。
そしてダンジョン周囲の時間天気気温等に合わせて変化する採光ガラス?アクリル板?の外が、風情を演出する。
水温は常に温水。 ヒャア、冷たくてデキねぇ(プールから)出るだ! なんて事態は起こさせない。
「コレ以外にも紹介する部屋は、全てダンジョン設備。 壊れないからお手入れ不要、いつも清潔で後始末の心配も不要」
でもそれだけじゃない。
「まだあるぞ」
入ってきた場所以外にも扉が2つ。
「可愛いお風呂っ!」
ギュー詰めしてなんとか3人しか入れない小さな浴槽と、所々透ける磨りガラスで隔てられただけの、シャワールーム。
配色は全体的に淡いパステルカラーで統一されていて、目に優しいところが良い。 が、やはり割合的にピンク色が多いのは、どうにも気恥ずかしい。
あと当然だが、ここにもエアクッションを敷けるだけのスペースが、確保されている。
それとジェットバブルだのなんだの、変な風呂機能満載な浴槽。
浴槽の周りには、なんかふわ~っとした気分になる香りがする花が、点々と植わっている。
ダンマスルームには他にも普通の風呂と大浴場が有る。 だがコレはそう言った、普通の用途で使わない風呂だろう事は、見れば分かるだろう。
「3部屋目だ」
最後の部屋は、
「真っ白!? なに、この部屋!」
晴夏は困惑しているが、
「これはプレーン状態だ。 見てろよ」
壁に埋まっているパネル。 これを(背が届かないから、アホ毛で)ピピッと操作すると、瞬時に内装が変わる。
この部屋を造った際に警告された、パネル操作時は当人以外は部屋外へ退避、最低でもパネルのすぐ近くに居ることなんかも忘れず伝達。
「夕焼けの教室!?」
「それだけじゃないぞ」
このまま畳み込んでやる。
パネルを操作し続け、次々と現れては消えていく内装。
保健室、用具室、プールの更衣室、職員室、階段の踊り場、大学の講堂、研究会の会室、病院の病室、診察室、ベタなホテル。
畳敷きの旅館、田舎の古い民家各部屋、渓流そば、林の中、どこかの公園、特殊なホテル内装各種等々。
〆てシチュエーション総計50種を軽くオーバー。
極め付きで、マジックミラーに囲まれた小さな部屋なんてのも有る。
蛇足だろうが、マジックミラーの外は映像であり、実際の外で無い事は言っておく。
ちなみに時間設定はプールと違って自由。
ついでに言えば、特殊過ぎる部屋としてトイレもいくつか有るが、正直それは使わないだろう。
非常時としてトイレが不要になる魔法を使えば、中断と言う強制クールダウンさせられる時間は消せるし。
呆気にとられて、ぼんやり立ちすくんだままの晴夏。
このまま置いておけないから、手を握って引っ張りダンマスルームまで戻る。
戻って、ヤツを扉付近に放置して、俺はソファに座ってのんびりすると決めた。
アホ毛を10秒間ブンブン振らせること12セット。
「はっ!?」
きっちり2分かけて我に返った晴夏。
すると現在地を確認する様に周囲を見渡してから、俺を猛禽類が獲物を見つけたみたいな目で睨んでくる。
「なんだよ?」
なぜか睨まれているが、別に悪い事をしていないはず。
なのだが、晴夏が肩を怒らせてツカツカと歩み寄ってきた。
「なんだよ」
その迫力に負けてもう一度訊いてみたが、答えてくれずに、少し動けばキス出来そうな至近距離まで詰め寄られた。
それで、無言のまま俺を抱え上げる。
この時点でアホ毛はどんな意図があるのか、硬直して全く動きを見せない。
k。
「なんなんだよ!」
もう訳が分からねーよ!
悲鳴と非難を混ぜた声にも耳を貸さない晴夏。
俺はとうとうお米様抱っこにされた。
……まあお姫様抱っこされるよりは、羞恥心的にマシなんだがな。
んで、こんな姿にされてはじめて、推定拉致犯がとても澄んだハート型の瞳を輝かせながら喋った。
「タマちゃん! しばらくダンジョン運営をお願いします! 重大なトラブル以外はお任せでっ!」
ヤツの瞳を良く看るとハイライトが消えていて、真っ当な状態とは決して言えない。
〈了解しました。 楽しんできて下さいね〉
「なぜタマちゃんへ指示した!! そしてタマちゃんはなぜそんな返事なの!?」
本当に意味不明だ!
俺の混乱を余所に、拉致犯はとても楽しそう。
「ほら、新しく用意してくれた3部屋で、しっぽり楽しむわよ!!」
マジかよ!?
「それよりまず、実家へ婚約報告じゃねーの!?」
俺が真っ当なはずの意見を出すも、晴夏には違う物が見えているのか、否定してくる。
……まあ、ハートマークだもんな。 普通の目じゃねーよな。
「あんな楽しそうな部屋を出されちゃあ、報告なんて後になるって決まってるじゃない!!」
「今昼間だぞ!! 夜まで待てないのか!?」
なんとか正常な思考へ誘導しようとするも、
「やだ! 絶対遊ぶの!!」
知能の低下具合まで見せて、修正は不可能な様子。
「タマちゃん助けて!!」
儚い可能性に賭けて出した、ヘルプコールの結果は、
〈諦めて、サブマスを慰めてあげなさい〉
当然のように失敗。
抵抗しようにも俵担ぎでは、どうにもならない。
「はい、試験運用! やったねダンマス、遊び場が増えたよ!」
無情にも、既にプールへの扉前。
ヤバい人の空いていた手は、とっくに扉を開けて例のプールモドキが見えていた。
「止まって、待って! 止まって、待って! とめったっっ!!?」
慈悲を願う声は、噛んでしまうと言う珍事で立ち消える。
扉をくぐられ、閉まって行くその向こうへ何度助けを求めて、舌を噛んだ痛みも我慢して暴れ叫ぼうとも、助けなんてこないし俺を捕まえている愛の戦士の腕はビクともしない。
当然か。 だってあっちもこっちも俺の部屋、権限や許可がなきゃ入れないんだから。
それに思い至り、諦めの境地で全身の力が抜けてしまう感覚に襲われていたら、耳元で甘く……とても甘く囁かれた。
「恥ずかしがって抵抗する可愛いコは……どんどん、愛しちゃおうねぇ」
…………。
………。
……。
結局、晴夏から解放されたのは、ホワイトデーイベント終了後の朝だった。
いつもとは比べ物にならない勢いで、トロットロのグッズグズにされた記憶を、思い返すだけで脳が沸騰しそう。
もう(理性と言う壁が)ダメ(になったの)だけど、解放されたらなんとか正気に戻れた。 ああ、朝日が黄色く輝いて見える。
茂木の称号【ダンジョン神の恋人】は【ダンジョン神の婚約者】となり、後に【ダンジョン神の伴侶】となる訳です。 ちなみに婚約者や伴侶に変わっても、称号由来のステータス補正は変わりません。
完敗とは結婚を決意する意味で無く、キャットファイト(笑)で完敗しただけと言う。
そして徹底的に無視され、読まれないメッセージカードに合掌。
ちなみに、次の話?となる人物設定紹介が章最後となるので、話自体はこれで最終回。
気まぐれで次章の雑な構想が出来たら、投稿を再開するかも。
~~~
婚約の挨拶をされた後の幼女実家。
妹「あのヘタレお姉ちゃんの事だから、プロポーズまで半年はかかると思ってた」
母「同じ感想ね。 情報誌攻撃をしても、のらりくらりと逃げ回ると踏んでたわ」
父「オレもやられたなぁ(遠い目)」
妹「でもなぜ今プロポーズしたのか、説明を聴いたら納得だったね」
母「あの息子がヘタレ娘になった、命日だったあの5月頭の連休を、良い日へ上書きしたい。 なんてね」
父「3月にプロポーズしたのは準備期間とか、参加者のスケジュール調整で時間が必要だからだろうな」
妹「ところで、参加予定者ってどうなってるの?」
母「両方の家以外には、役所の人へ声をかけると言ってたわね」
妹「役所の人?」
父「併設されてる、通称冒険者ギルドだな」
妹「あー、いつも忙しそうだよねー」
母「あと娘と晴夏ちゃん、共通の友達」
妹「あの居るのか居ないのか分からない人ね」
母「他の地域にある、低級ダンジョン近くに置かれているギルドにも招待状を送るって言ってたわね」
父「会場はあいつの居るダンジョン内にある神社で、会場内は立食形式だとかも言ってたな」
母「沢山料理を用意するから、地域の人も飛び入り参加を認めるとかもね」
妹「自由だよね~。 あ、年末に晴夏さんと縫ってたウエディングドレスは、どうなるんだろ」
母「何度かお色直しするって話だし、着るでしょ」
父「娘も着るのだろうか」
妹「ははは、晴夏さん命令で着せられるでしょ、どーせ」
母「真っ白なゴスロリも、着せられたら良いんだけど……」
父「そう言えば神社って事は、神前式か。 本人が神だけど、見たい誰かが居るんだろうか?」
妹「居るね。 地球の神様が、テレビに出るお姉ちゃんへ何度もカードって形でカンペを出してるでしょ?
それがお姉ちゃん達の晴れ姿を見たくて、神社にさせたんだよ」
父「納得」
妹「……しっかし、お姉ちゃん達が結婚したら、同性で子供が作れるって話だけど、どう作るんだろうね? 物理的な手段として“生える”のかな?」
母「分からないわねぇ」
父「孫か。 可愛いんだろうなぁ。 でもそれはそれとして、娘がとても眠そうだったのは気になる……」
※作者は願えば一時的に“生える”形を妄想していますが、どんな感じで子供が出来るのかは、読者様方の妄想にお任せ致します。




