TS幼女は主な国内情勢を知る
国内に低級ダンジョンが出来て、まともにダンジョンを資源として使える環境が整ってからの、変化をテキトーに考えて書いてみたものです。
……なんか最近会話形式文の割合、増えてる気がしてちょっと焦り気味。
それと今回も結構長いな……読みにくかったらすみません。
相変わらずなゲームキャラ転生TS薄ピンク髪アホ毛付きポニテ青目幼女だぞー。
……なに? 相変わらずじゃない、連載当初と比べて、嫁ができてから性格が丸くなった?
嫁ってなんだよ、まだプロポーズしてねえっつの。 つーか性格が丸くなった? いやいや、忙しくなる事が減って、ストレスの溜まりが遅くなっただけだって。
そんな訳で、同棲相手のちょい長身ジト目が厳しい茂木晴夏に後ろから抱えられ、今日もダンマスルームにあるソファにて定番膝の上。
最近はどんな心境の変化か、アホ毛の制御を俺が取り戻しつつある。
膝の上に座らされると、いつもはアホ毛が晴夏の腕に伸びて絡み付いたり、俺の頭を撫でる手にちょっかいをかけていた。
しかし、近頃はヤツの魔の手が俺(の体)にちょっかいを出してくると、弾いてくれる様になった。 自動迎撃機能だな。
迎撃された側は少し不機嫌やムキになって、後々寝る時間が減らされて大変なのが問題n――
〈――だからマスター、サブマスへちゃんと定期的に気持ちを言ってあげれば、面倒にはならないと何度言わせれば気が済むのですか?〉
「うっさい! 男は背中で語ってナンボなんだよ、分かってくれタマちゃん!」
タマちゃんが中々辛辣で、つい言い返してしまう。 が、
〈意訳:分かってはいるけど、恥ずかしいから難しい〉
追撃の手をゆるめてくれない。
「完全に理解しているなら、放っといて欲しいんだけど!?」
〈ヘタレ〉
「知ってますぅ! だから放っといて、ね!?」
タマちゃんがキツく当たってくる時があり、少し泣きそうになる日もあるが、
「んふふ♪」
晴夏もなんか微笑んでくれるし、まあまあ楽しくやっている。 でもな?
「どさくさに紛れて、ヒトの胸をもごうとするな」
「えー? 元男がつけてちゃいけない、憎くて醜い脂肪は、排除しないと~……あ痛っ!」
アホ毛が弾いてくれてるから被害は無いが、こいつの巨乳へ抱く恨み、いつ晴れるんかな?
しかし寝る時はあれだけあぁなのに、昼間はとにかくもごうとして酷いんだよなぁ。
現在は3月に入り、新生活応援キャンペーンを開始して、ホワイトデーの準備もしないとな~。 とかそんな時期である。
前回の新生活応援は4月からだった。 つまり今回からは、新生活の準備も応援するつもりって訳だ。
俺本日の服装はアレだ。 エプロンドレスだのピナフォアだの言われる、アリスと言えばコレとかになる水色と白い色の奴。
ちなみにコレはゲーム装備で、防御力は低いが豊富な付与効果がウリ。
これで買い物しに外へ出たら、常に女性からの超音波攻撃とヤバい野郎からのメンチビームを食らい続けて、俺の耐性系スキルを貫いてきた時は本気でビビった。
んで晴夏はウサギの着ぐるみパジャマ。
ウサギに抱えられるアリスとかなんだ?とかも思ったが、組み合わせ自体はまんまだな。
買い物を一緒にした時、常に周りから不審者扱いされて、お巡りさんまで職質しようと寄ってきたのには、本気でビビっていた。
……まあな。 完全無欠のアリス的幼女を連れた着ぐる民。
アリスの母親とかトランプの女王の格好とか、それならゲリラコスプレして楽しむふたりみたいに思われるがなぁ。
背の高い方が着ぐるみパジャマじゃあ、怪しさしかねーからなぁ。
それで晴夏のは時計ウサギか訊いてみたが否定されて、アリスがいつもウサギのぬいぐるみを持ってそうとか言う、勝手なイメージだとよ。
それと……なんだが。
「んふふ♪ デュクシー♪」
「晴夏?」
「デュクシー♪ デュクシー♪」
「晴夏さん?」
買い物から戻れば、すぐさま膝の上に乗せられて、後ろから抱き抱えられているこの身。 人生最大のピンチかもしれん事態を迎えた。
やけに上機嫌な雰囲気を出しつつ、俺のつむじを強めにツンツンしている晴夏が、気になってしょうがない。 構って欲しそうにしているアホ毛も無視されている。
だからこうやって何度か呼んでみたけど、生返事しかされないし、そこらの生意気なガキみたいな事しかやらない。
「……こっちの話しを聞いてくれやしねぇ」
半分諦めていると、タマちゃんが余計な指摘をしてくれやがる。
〈マスター、多分目の前に有る物が原因だと思われます〉
これに反応したのは後ろの野獣。
今にも獲物へ飛びかからんばかりの気迫を発している。
「解ってるよ、そんな事」
だから、それに触れたくないの。 分かって?
目の前、テーブル上に置かれている物は、特別な意味を持つ雑誌。 これを見せられた男は、覚悟を迫られる伝説のブツ。
結婚情報誌“デュクシィ”。
買い出しの時に少しだけ別行動したウサギさんが、自前で買ったものだろう。 見てしまった瞬間からどれだけ余所へ意識を振り向けようとも、冷や汗が止まらない。
「デュクシー♪ デュクシー♪ んふふふふ♪」
この晴夏が嬉しそうに出している声とは裏腹で、指から伝わる圧力は増していく。
どんな反応を示しても、俺に致命的な何かが起きる予感からしばらく動きを止めていたが、そうは問屋が卸さないらしい。
「わたし達の同棲生活、やっていないのはプロポーズと結婚位なのよねぇ」
「っ!!?」
……解ってる。 とっとと返答しろってんだろ? でもな?
「照れアイコン出してる暇が有るなら、言っちゃった方が楽になれるわよ?」
「っ!!?!」
晴夏のスキルで、俺の感情は丸見え。 気持ちが解っているなら、言わなくても良いじゃん! とか言いたくもなるが。
「同棲を始めて10ヶ月位。 もう良いんじゃない?」
「…………もうちょっとだけ。 本当にちょっとだけ待ってくれ」
だからこう言った物は、タイミングってものがだな?
そんな話しに持っていきたかったんだが、そこで無粋な乱入者が。
〈プロポーズをするから待ってくれって、それもうプロポーズですよね?〉
これへ即座に返すは、要求過激派。
「そんな夢の無いプロポーズなんて、プロポーズと認めませんっ!!」
〈そうですか〉
「そうなんですっ!!!」
晴夏の熱弁により話題が微妙に逸れて、どうにかお流れとさせられた。
昼間の回想も済んだな?
今は夕飯のカレー後。 カレーを俺達の格好でよく食えるな?とか言わせねーぞ。
魔法で綺麗に出来る時代だ、服のシミ・汚れなんぞ、もう何も恐くない。
「ほら、始まったから見なさい」
おっと、そうそう。
今日はこの番組を見る気でいたんだよ。
年度末になったからか、国内の年度振り返り番組1発目として、ダンジョンとそれを取り巻く事情をネタにしたやつ。
以前見たのは、低級ダンジョンが出来てから半年~とか言った国際情勢を混ぜたやつで、今回のは国内がメイン。
これでダンジョンの不備が指摘されれば、その内容次第で調整する参考にするつもり。
なにせ俺はダンマスで、晴夏がサブマスだからな。
観覧場所は定位置。 俺は最早、晴夏の抱きぐるみ。
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番組内容は大雑把に意訳だな。
まず国内代表、俺の本拠地ダンジョン入り口のアップから空パンしてタイトル。
次に低級ダンジョンが出来てからの経済効果。
「ダンジョン素材で色々出来て、新素材新技術が花盛りって感じかな?」
〈研究が進めば、もっと良い物も出てくるでしょうね〉
「輸入……出費が減ったのも多そう?」
「あー、鉄とかがダンジョンから簡単に掘り出せるから、輸入額なんて減ってるな。 全部とは言わんが、かなりの量を自前で用意出来る様になったのが大きい」
〈数が出て来ても値崩れしにくい鉱物をと選びましたが、まあそうなりますよね〉
【農業】スキルにより、農作物の増産・生産量安定化・高品質化され、【酪農】スキルでも似た事が発生。 食品価格の暴落が懸念される。
「まあ、有るかもな」
「でもみんな低級ダンジョンへ遊び感覚で突入して、活動的になったから食事量が増えるし、プラマイゼロに落ち着くんじゃない?」
どこの国も似たような感じで、資源の多くが国内調達が可能になり、輸出入の動きが鈍くなっている。
「国と相談して低級で出す物決めたんだから、責任は国だな。 知らね」
「他にもダンジョンの魔物から採れる魔石が、発電に使えるかも知れないとかで、原油の価値が変わるって聞くね?」
「油の節約と言えば買い物のビニール袋。 買い物袋としてダンジョン産魔法の鞄とか使えるし、需要が減って無料に戻るかもな」
犯罪率は横ばい……いや微減か。
「レベル制になったこの世界、レベルで強くなったら好き放題やらかすのが、わんさと出てくると思ったんだがなぁ」
「パトロールするお巡りさん達も鍛えてるから、あまり変化は無いでしょうよ」
〈お金が欲しくて犯罪してたのはダンジョンで体ひとつ有れば稼げますし、暴れたい者や猟奇的な者は魔物で代用できる上、ダンジョン内で悪さしようにも鍛えたお巡りさん達が居ますね〉
「魔法の鞄と言う犯罪に使える物が出てきて、出来心で~ってのが増えてたりしてな?」
〈国がそれを想定して、魔法の鞄を使った犯罪は厳罰化されて10~20年程、懲役が伸びる警告をあちこちでしているはずなんですけどね〉
「しかも冒険者登録を取り上げて、登録権じたいも永久剥奪ってオマケ付きよね」
〈こんなリスクを抱えたら、犯罪に対する忌避感は強くなると思うのですが〉
「逆に、魔法の鞄を使わない犯罪なら罰が軽くて済むぜーって、感覚が変になってるとか?」
〈完全に否定はできませんね〉
「空き巣とかはどうなのかな?」
「そりゃあお前、お巡りさん達の追跡系や分析・解析スキルで犯人丸裸だよ」
〈科学捜査も有りますし、犯人特定はより精度が上がってますね。 未逮捕とか出てきたら、それは大体汚職事件へ発展ですね〉
「鑑定系スキルで犯罪称号がついてるか確認すれば、冤罪はほぼ起きないし」
〈悪い事がやりにくくなって来てるのは、良い事ですね〉
「わたし、称号に元・ストーカーが……」
〈もぎ子(仮)さん時代、負の遺産ですね〉
「お前はストーカーじゃないと否定してたな」
「うっ!(目逸らし)」
「あの頃、結構怖かったんだぞ? 胸をもいでやるとばっかり言われてて」
「悪かったと思ってるから! でもわたしに異世界から帰還したって、言ってくれなかったそっちも悪いんだからねっ!」
「連絡方法が無かったと説明しただろうが!」
「ウチのお母さん、アンタが向こうへ行ってから、そっちのお義母さんとずっと連絡を取り合ってたって聞いてるからね!」
「ぐぅ……っ! でも俺はそれをあの対面した日まで全然知らなかったと、ちゃんと謝ったよな!? あとお前の言ったオカアサンに、なんか引っ掛かる感じがあるんだけどっ!?」
〈はいはい、痴話喧嘩してないで、番組に集中しなさい〉
自分で自分をコロコロしちゃう者は激減。
「身投げする命があるなら、命を捨てる気でダンジョンに立ち向かえ~とか、そんな政府広報があったな」
〈ファンタジーな世界がやって来ましたからね。 人生つまらないとか、死んだ方がましだとか。
それだったらダンジョンから刺激をもらえ、安易に死なずダンジョンで燃やしてみろよ……でしたか〉
「辛い目に遭った方々へ、なんて物言いよ! とか言われてたけど、当人達が発奮して、広告として上手くいっちゃった例……だったわね」
「そんな奴等がダンジョンアタックしてくると、ドッペルゲンガー達が介助に介護に、忙しいんだよなぁ」
〈その献身を受けて立ち直ったヒト達の性癖が歪んで、大変な事に〉
「…………やめてくれ、それは忘れたいんだから」
企業の生産性アップ。
「? どういう事だ?」
〈見ていれば分かるでしょう〉
ダンジョンアタックでレベルアップして、スキルも獲得し、動ける社員が急増。
運送業のドライバーは、低級ダンジョンクリアを目指し、マジックバッグを手に入れるまでが研修となっている。
「あー」
「アンタは【無限インベントリ】があるから分からないでしょうけどね。 バッグは手放せないわよ。 コンテナ位? 入って、荷物が軽くなってホント助かるわ」
〈低級クリアで出る小サイズは、2tトラックのコンテナ半分ほどでしたね〉
「それで、追加のマジックバッグはサイズ別で、中級以上なら難易度に合わせて、宝箱からランダム出現だったわね?」
〈はい。 大・中・小が難易度にそってそれぞれ出る設定ですね〉
「超級で大を狙って、何度も周回しようかしら」
「言ってくれれば、俺がDPで生成するぞ?」
「自力で拾うから、意味があるの!」
「一理有る。 でも行く時は一緒にな、ステータス上は問題無いが、超級の魔物や罠は油断すれば軽く死ねる」
「……心配してくれるの?(ニヤニヤ)」
「一応な」
〈素直に「もちろん」とか言えば良いのに〉
「おいやめろ、タマちゃんっ!! 俺だってヘタレてなきゃなあ、その言葉以外にも好きとか愛してるとか、毎日でも言いたいんだぞコラァ!!!」
「ぐふぉ……っ!!(鼻血&吐血)」
「なんか頭に。 ……晴夏ぁ!? 回復、回復魔法ぉぉぉ!!」
スポーツ業界も、従来の練習よりダンジョンを推奨している。
「まあなぁ……筋肉鍛えるより、レベル上げた方が手っ取り早く、能力が上がるからなぁ」
「アンタが代表よね。 こんなぷにぷにモチモチやわやわなのに、新幹線より速く走れるもんね」
「ヘンな所触るな。 つーかお前も目立った筋肉がついてないのに、俺と同等だろうが」
〈一応補足しますが、レベルに加えて従来の練習で筋肉をつければ、より効果が出ますからね?〉
結果、スポーツの業界は壊滅寸前。
「ん?」
ダンジョンアタックと言う、命を張った練習ばかりで、選手生命も絶たれやすい。
更に新記録続発で、記録が滅茶苦茶に。
「そこはしょうがないだろ」
〈歴史の転換点と思えば良いじゃないですか〉
「ひどい言い掛かりだよねぇ」
我が国だけ低級ダンジョンでの救済措置があり、極めて低いリスクで選手達が強くなれる環境に、世界からブーイングが来ている。
「うわー、ここでドッペルやリビングドール達が救助してるシーンを使うかぁ」
〈ブーイングする前に、自国のダンマスへ要望を出せば良いだけじゃないですか〉
「全くだねぇ」
選手の環境に大きな差が有ることから、国際大会への参加を受け付けない可能性も出てきた。
「なんだそりゃ」
身体能力で言えば、レベルやスキル、ステータス値の登場によって男女で分ける事が難しくなってきている。
「……冷凍カジキ」
〈ダンマス祭でフライングした余所のダンマスを、マスターが打ち据えている場面ですね〉
「しょうがないわね。 あんな重そうな物を軽々振り回す幼女なんて、とっても解りやすいから」
「ぐぬぅ」
それにより男女共同参画が進み、より一層の晩婚化が懸念される。
「職場恋愛を推進すればなんとかなるんじゃない?」
「それか、他社との交流を活発にさせるか」
〈有用なスキル持ちが寿退社なんてもったいないなら、それ用の対策すれば良いだけじゃないですか〉
スキルの普及により、原材料の加工……2次産業が変化。
スキルを使えば不要になる機械設備、スキルを使う人間の方が上がる品質、しかしスキルレベル次第で機械の方がいい場合も。
経営者は難しい舵取りを迫られている。
「いやいやいや、そんなのいつの時代もだろうが。 持ち上げて落とす、番組の常套手段だとしても、これはちょっとアレだ」
〈人から機械へ、機械からスキルを持つ人へ……時代ですねぇ〉
問題は商品の変化にも。
低級ダンジョンに存在するイベント用ダンジョン。 そこで季節毎に採れる物が変わる素材で、ひと波乱。
「おい?」
夏に暑さへの耐性が得られる物質、冬には寒さ。 これによって気温対策グッズの需要が変わり、市場が混乱している。
「おいおい?」
企業の運営計画が大きく崩れ、経営立て直しで人員整理が度々起きている。
「おいおいおい?」
ダンジョンに物を言うのは酷だが、余計なことをするなと言ってやりたい。 こんな状況を見過ごす政府は何をやっている。
「ダンジョン周辺での、冒険者用商売の需要は? 可食魔物素材による食の広がりは? 経済はむしろ良くなってると、地域の奥様ネットワークから聞く話は?」
〈取り上げる場所の違いですかね〉
「限られた真実ってやつか?」
「ダンジョンそのもの、ここは中心地だから影響が大きいわね」
「今時こんな事言ってて、どっかから批判されても知らねーぞ?」
ダンジョンに関して、神から嘘をつかれた。
「……ここで俺の、人生初会見映像」
「まあまあ」
スタンピードが起きない作りにしたと言われたが、実際には起きてしまった。
「これなぁ。 主神がちゃんと警告したじゃん。 国同士の争いに、ダンマスを直接介入させるなってさぁ」
〈該当する国のダンマスを戦争の道具として使い続けるなら、罰を与えると言ったやつですね〉
(主神からのメッセージカードひらひら)
[へぇ、警告した事さえ前提に置かず、随分な報道の自由を行使してらっしゃる]
「神が気持ち悪いメッセージを書いていないなんて……」
〈下手したら……いえ、下手せずとも巫女服マスターの勇姿を見られそうですね〉
「やった!」
「嫌だよ!」
ダンジョンアタックをすれば、死人が出る。 しかも、死ねば自己責任とか言う現代社会を否定する暴挙を神が主導した。
「死んで欲しくないのは、神側も同じ。 低級でしっかり下地を整えて、生き残る力を身につければ、そうそう死なない難易度設定がされてるっつの」
(カードひらん)
[良いぞママー! 神のママだけはあるーー!]
(アホ毛でカードみじん切り)
我が国は他国より死亡率が低い事に目をつけた会社が、冒険者向け死亡保険を始めているが、疑問の声が上がっている。
「どこから?」
「番組の制作じゃね?」
〈遺体はダンジョンへ吸収されて消えますから、死亡確認できず支払いが難しくなるのは確かですが、それを承知で入っている人に対してそれを言いますか……〉
こんな危険性を持つダンジョンは、国として一度閉鎖し、封印を考える時期が来ているのかもしれない。
「どんな経緯でそんな結論が出た!」
〈色々飛ばしましたね〉
今も冒険者などと言って一般開放している政府にも、疑問を持つべきだ。
「世界各国がダンジョン利用前提の国家運営を始めてるのに、逆行しろってか!?
主神がダンジョンを創ったのは、資源の再配分って目的さえさっぱり忘れてねぇか、この番組っ!?」
〈なぜここで政府批判?〉
(メッセージカード)
[テレビじゃなくて、個人撮影してネットにばら蒔くやり方でお願いするね、ママ]
「嫌だって言ったよねぇ!?」
〈と言いつつ、どうせ律儀に応じるマスター〉
「可愛いよねぇ、あの巫女服姿」
「……はぁ(ため息)ばら蒔くのは親友へ頼むか」
最後に、宗教問題が起きている。
神の定義で一神教が危険に陥っている。
「主神、地球の管理者。 総責任者ってだけで、管理する部門別で神はかなり居るもんなぁ」
「アンタも見習いだけどダンジョンの神だからね」
〈一神教は、なぜ発生したんでしょうね?〉
神はひとつの存在では無かった。
「……巫女服着た俺が映ってる(白目)」
「可愛いよねぇ」
日本のネットでは自演だと言う批判と、女神幼女ハァハァで真っ二つ。
「この暢気な国民性よ……」
「可愛いは正義! は真理でしょ」
「お前な(呆れ)」
〈マスターを神として迎えるって、紙を読み上げている所ですね〉
「しかもイメージ図として、鑑定系スキルで脳内に出力される情報を併記したか」
〈人種の欄がダンジョン神(見習い・候補)とありますね〉
「実際は候補が外れてるけど、そう見せてる」
「それ以前でしょ!? ステータス欄を隠すように“見せられないよ”って書かれたボードを持ってる、デフォルメされた当人の姿に言うことは無いの!?」
「アホ毛が矢印になってて、ボードを指してるな?」
〈本人が嫌がる白ワンピース……サマードレスを着せている所に、何か余計な意図を感じます〉
「いや、そうじゃなくてね?」
「三毛猫着ぐるみパジャマに設定していたんだが。 テレビ局め、描き換えやがったな?」
「え!? アンタがああやって隠したのっ!?」
「隠蔽系スキルを鍛えると、アレくらい楽勝だ」
〈隠蔽を見破れても、能力差が有りすぎればまともに情報を読み取れないですし〉
「あ、うん。 そうなんだ」
「晴夏の持つスキルで、いくら能力差が有っても俺のデータは見抜かれるから、知らなくてもしょうがない」
どう言った結末になるかは不明だが、ダンジョンが現れなければ無かったはずの変化である。
「そこでそう意味不明なダンジョン批判へ繋げてくるか……何がしたいんだ、この番組は」
〈一神教は、地球全体の管理体制全般を、神と呼称する流れで落ち着くんじゃないでしょうか〉
「その辺が妥当で穏便な決着だよな」
(紙ひらーん)
[ママ、忘れないでね]
「今回のは流石にな。 俺と晴夏の最終学歴がアレだし、ダンジョンを無くされると本気で困る。 やっとくさ」
番組放送翌朝、幼女の実家。
妹「対応早いわ~」
母「どうしたの?」
妹「昨日のダンジョン不要論番組に対する、お姉ちゃんの反論がネットに上がってた」
母「あらあら」
父「早すぎるな」
妹「経済のデータは国からもらった物を出したり、中級までのアタックされてるダンジョン周辺に起きてる経済活動とか出したり」
父「娘のダンジョンが出来てから、この辺は本当に金回りが良くなったからなぁ」
妹「スタンピードの話は番組が伏せた部分を持ち出して、嘘で大げさで紛らわしい放送に疑問をぶつけたり」
母「ああまで露骨だと、広告審査のCMより、放送倫理に関するCMを流して欲しいわよね」
妹「他にもおかしいと思った部分に、疑問とか突っ込みとか入れてるね」
父「少し酷かったな、なんだか陰謀論でも唱えたくなるレベルだった」
妹「で最後にその内国と合同で調査して、正確なデータを出して抗議するとか言い切ったみたい」
父「見た目幼い子が、その辺を指摘する動画ってインパクトが有るな」
妹「まあ一番の見所は、神社エリアで撮影してるからお姉ちゃんの巫女服を見られるってのだろうね」
母「巫女服も良いとは思うけど、一番可愛いのはゴシックでロリータな格好。 黒だけじゃなくて、白も良いわよねぇ……。
赤系統は髪の色的に合わないかもしれないけど、なんであの子はロリータファッションを嫌がるのかしらねぇ」
妹「ボソッ(可愛いは可愛いけどさ、ハタチ越えた良い歳の奴に、ゴスロリは精神的にキツいって)」
母「なにか言ったかしら?(肉食獣の眼)」
妹「ちっちゃい子にゴスロリは可愛いよねっ! て言っただけ!」
母「うふふ、同意してくれて嬉しいわぁ」
父「ボソッ(無理矢理同意させといて、よく言うよ)」
母「あなたぁ?(肉食獣の眼)」
父「いやいや! 何でもないさ! うん!」




