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【連載版】TS幼女は神様に都合良く使われる  作者: まい
2章 TS幼女は元同級生から迫られる
23/30

TS幼女は針のむしろに座らされる

 本命チョコの交換を果たし、やっと恋人関係となったふたり。


 関係が進む順番を間違えているとしか思えないふたり。


 こんなふたりはどこへ行く。

 …………まいど、地球の主神(変態)から指名されて、ダンジョンの神見習い兼ダンマス(ダンジョンマスター)をやらされている、ゲームマイキャラTS転生系幼女だぞー。


 外見は最小身長のアホ毛付き薄ピンク髪ポニテ、青目で胸囲最大。


 サブマス(サブのダンマス)と一緒に、ダンマスルームで今日も元気な低調子。 ……はぁ(ため息)



「どうしたの? 最近疲れてる? 大丈夫?」


「……お前の所為(せい)だよ」


 バレンタインの本命チョコ交換でハッキリしない態度をとり、茂木(もてぎ)晴夏(はるか)を泣かせかけて自身の情けなさとか痛感。


 覚悟を決めて、どうにか告白チョコ渡しも済ませ、一安心。


 ……とか思ってたら、それから十分な睡眠時間をとれる日が極端に減った。 お陰でスゲー眠い。


 晴夏の驚くほど長い片想い期間があったからなのか、コイツとの関係が変わった事で、タガを無制限で外しやがる。


 バレンタインイベントが終わって1週間位だが、睡眠が短くて済むスキルとか持ってるのに、それでも足りない睡眠時間。


 逆にこのケダモノは超元気。 口に出せないアレを(すす)るだけじゃなく、体力とかHPとかまで啜ってるんじゃなかろうか?


 ……そんな訳で油断すれば食べようと狙う肉食獣が背後にいるため、おちおち昼寝なぞしてられなくて、なおさら眠くなる。


 頭が痛くなっちゃ――――うぉ!?



 …………おい。


 アゴを思いっきり上げて、下から色ボケをにらみつける。


「やめろや、晴夏」


「え~?」


 にらむついでに【威圧】スキルを込めてみたが、暖簾(のれん)に腕押し。


 ロシアンブルーの猫着ぐるみパジャマ()魚着ぐるみパジャマ(晴夏)を着てるふたりだから、非常にシュールな見た目だろうがな。


 ……は? 魚の種類は太刀魚(たちうお)? よくそんな、変なのがあったな。 ()ったのか、そうか。


「膝の上に俺を乗せる事はもう諦めたが、真っ昼間に余計な所を触ってるんじゃねーよ」


「え~? ヤる事ヤってたのに、バレンタインまで恋人って関係をおあずけされてたんだよ? しかもダンマスルームと言えど、ここは自宅だし、ナニしても良いじゃん?」


 ニヤニヤしてるこいつ、目付きがワル……ジト目かつちょい長身でスレンダー体型だからって、男化してる気がする。


 つーかマジで駄目だっつの。 ドコを触ってる、ドコを。 人目を気にしろ、このケダモノが。


「……自宅だけど、ダンジョン運営を補佐してくれてる、リビングドールやドッペルゲンガー達が側に居るからな?」


 晴夏からの魔手を(いく)らはたいて追い払っても、何度でも伸びてくる。


「大丈夫大丈夫、見てない見てない。 もし見てても、見せつけちゃおうよ?」


 …………うぉぉっ!? おいテメェ、耳に息は反則だ!


「それ、イケ好かないスケベ野郎が言うやつじゃね? つーかセクハラだよな、それ」


 こんなのじゃあ、むしろオッサン化だぞオイ。


「は? わたしの腕にアホ毛を巻き付けて、ハートアイコンなんて浮かせてる癖に、なに言ってんの?」


 ちくしょうめ……晴夏のスキルが俺限定で心を見抜く力だから、やり(にく)くてしょうがねぇ。


 主神からのメッセージカードひら~。


 [ああ……悪漢に絡まれるママ(TS幼女)! でもその悪漢がもうひとりのママだから、単なるイチャつきになってて素晴らしい!]


 すぱぁ。


 アホ毛が晴夏の腕からはがれ、何も言わずにカードを切り捨ててくれた。


 ~~~


 ぐったり。 マジで寝たい。 でも寝室へ行っても、絶対についてきて寝られない。 その証拠として、俺のアホ毛も(しな)びてる。


 そんな恨みも込めて、俺に膝枕してる晴夏をにらんでみた。


「んん? もっとシて欲しい?」


 効果は逆効果。 ニチャッた顔がシャレにならないから、ダンマスルームの違うソファへ移動して寝転ぶ。


 折角離れたと言うのに、しつこく頭の側へ来て撫で回す晴夏。 ……オイこらアホ毛、犬の尻尾みたいに揺れるんじゃねえ。


 俺は少しだけ離れて、静かに休ませて欲しいだけだ。


 そう言いたいが、今のアレには通じないと判断して黙っていたら、タマちゃん(喋るダンジョンコア)から俺にだけ【念話】が飛んできた。



 〈マスター。 言いたい事があるなら、包み隠さず全て言いましょう〉


 あまり使ってないが【念話】を返す。


 以前も俺だけに宛ててコレをされた時は、状況的に焦っていたもあって、使い忘れていた。 反省。


(ちゃんと言ってる)


 〈言えてません。 実際に伝わっていないじゃないですか〉


 どうにもキツい物言いだ。


(アイツがちゃんと受け止めてないだけだ)


 〈いいえ、言葉が足りてないのです〉


 わからん。 タマちゃんが何を言いたいのか。


(具体的に言ってくれ)


 〈サブマスは、バレンタイン以降好きとか愛してるとか、そんな言葉を貰えていません。

  最初はただの暴走でしょうが、次第に不安となって、今はまた確たる言葉が欲しいのでしょう〉


 言われた事に驚き。 だって晴夏からここまでアプローチされて、それに応じているから、十分だと思っている。


(なんでそうだと思う)


 〈バレンタインでマスターから沢山誉めて頂きました。 でもそれが過ぎてしまえば、また言われたいのです。

  アレはプレゼント……特別に言っただけで、普段はそう思っていないのでは? と、不安になるのです〉


 再び驚き。


 アレだ、晴夏がアレだけ好き好きアプローチしてたのに、年末実家へ帰ったやつ。 それをまたされるんじゃないかって、なんかモヤモヤ来るやつ。


(すまな……いや。 ありがとうタマちゃん、いつも助かってる)


 〈!……はい!〉



 念話終了。 理解はしたが、タマちゃんへする感謝の言葉とは、ハードルの高さが全然違う。


 どう伝えたものか。


 晴夏から頭を撫で回されている現状で「好き」だのなんだのと言えば、撫でられるのが好きだと勘違いされて、ハゲるまで撫で回される。


 口説(くど)く様な、キザったらしいセリフは柄じゃない。 つーか大嫌い。 もしそんなのを見かけたら、即殴りたくなる。


 様々な案を直感系スキルと色々相談しているけど、全て却下。


 もっと案を考えねばならんが、本音としてはそんなの放り投げたい。


 だってなぁ……。


 俺はなぁ……。


「晴夏を好きなのは絶対だし、愛してると言えるが、今は眠いんだよぉ。 普通に寝かせてくれぇ……」


「はい!! ごめんなさいっ!!」


 ……ん?


 頑張って少し体をおこし、なんとか晴夏まで視線を運ぶと、どこから見ても文句が出ない直立不動っぷり。


 しかし露出している顔や手は、サウナから出たばかりに見える、(ゆだ)った様子。


 んんん?


 何が起きているか理解できずにいると、タマちゃんから声が。


 〈……極限状態までいかないと、口から本音が出ないマスター。 これは苦労しますね(小声)〉


「俺、なんか言ったかぁ?」


 〈いいえ、おやすみなさい〉


 普通に寝たいとか言ってたみたいだ。 ならいいや、ねよう。


「おー。 ダンジョンの管理を頼むぅ……」


 なにかがゆかに落ちたおとは晴夏へまかせ、アイマスクにアホ毛が早変わりして、そふぁでちょっとおやすみなさーい。


 〈ヘタレの意地っ張り……面倒な〉


 なんかきこえた? まあいいや。


 ~~~


 起きたら夕方。 眠気はなんとか晴れ、ご近所の目が痛い晴夏との買い物も済ませ、これから昼間にやるべきだった案件にとりかかる……前の、買い物中での話。



 うん。 外出はマジで視線が痛いんだよ。 以前からだったけど、最近は余計に。


 同棲当初は姪を世話する女の子~みたいな微笑ましい目で見られていたのが、途中から好奇な目で、今はコレ。 すげートゲトゲしいの。


 好奇な目で見られていた頃に、情報が出回ったんだろうね。



 晴夏は外出で魚着ぐるみが流石に恥ずかしいのか、無難な格好へ。 だがなぜか太刀魚リュックを背負っていた。


 聴覚全開して歩いていたら、あちこちから(ささや)きなんか届くが、


「あの子、まだ待たせるのかしら?」「同棲を1年近くして、最近ようやく恋人関係」「普通恋人になってから同棲よねぇ」


「ウチなんて半年交際で指輪をくれたわよ」「相手の子、直球結婚してアピールを半年はやってるって」『健気よねぇー!』


「本人もまんざらじゃない様子で」「ああして買い物は恋人繋ぎして」「若さを見せつけといて、若い判断はまだって」『ヘタレよねぇ』


「猫の着ぐるみなら、さっさと隣の魚リュックちゃんを食べてあげれば良いのに」「アレ、太刀魚よ」「ネコとタチ魚?」『あらー♪』


 視線だけじゃなく、そっちの面(奥様方のうわさ話)でもキッツい。


 助けが欲しくて晴夏を見れば、目がギラッギラでマジ怖い。 アホ毛もなんとなく寒そうだ。


 そもそも誰だよ、我が家の事情を流しまくってんのは!



 ……いや、わかってます。 一緒に暮らしてないと分からないネタまで出てるなら、晴夏しかいません。


 それの協力者として、両方の実家や地域の皆様です。 妹からの意訳したメールで、地域から晴夏とは夫婦認定されていると書かれてて、言い知れない悪寒が走りましたし。


 もはや完全な包囲網。 外堀はおろか内堀すら埋まってる感じで、残すは俺の言葉ひとつ。 はい、ヘタレでスミマセン(白目)


 ~~~


 ようやく本題。


 晴夏の膝上にセットされ、アホ毛をいじり続けられる定番姿勢。


 帰って来て魚のリュックを降ろし、部屋着として定番の、モコモコ素材なやつ。


 お題は、仕事帰りで飼い猫に癒されるOLだとよ。


 これはアレか? 俺に「にゃーん」とか言って欲しいのか? 鳴いて甘えねぇぞ、そんな恥ずかしい事をやる俺じゃないからな。


「まずはダンジョンの様子から」


 ダンマスルームに浮かんでいるディスプレイ。


 そこには多種多様な光景が広がっている。



 もう夕飯時だと言うのに、帰還せずダンジョン内の魔物とひたすら戦っている者、帰還を急ぐ者。


 休憩地点(セーフティーエリア)でガスコンロを出して煮炊きする者、携帯食料で済ます者。


 ダンジョン探索の警戒を過剰に行っている者、そいつらが疲れるのを今か今かと付け狙う者。 ……これは対ダンジョントラブル用警官隊へ通報。


 低級限定だが、ダンジョン運営を補佐してもらってるドッペルやドールから、大怪我の治療を受けている者。


 本拠地ダンジョン内で、ダンマスルームへ続く隠し通路の扉に気付くが、どうやってもどうにもならず諦める者。



「ん?」


 ダンジョン入り口まで来て俺に用事だと合図する、土地を間借りしてる役所の人、それを確認した俺。


 …………。


 着席する俺、抱き留める晴夏。


「なんだったの?」


 アホ毛いじりを再開する晴夏、いじられてご機嫌なアホ毛、アホ毛の感覚がくすぐったくて眉が寄る俺。


「いつもの。 役所に併設の冒険者ギルドで、回復薬の在庫が減ったから融通(ゆうずう)して~ってやつ」


「あぁ。 わたしもスキルレベル上げで沢山作った、アレね」


 ディスプレイへ目を戻す俺達、眺めているのに飽きてどこかへ行くドッペル。



 本拠地(俺が住んでる低級)ダンジョン1階、支所(本拠地でない低級)ダンジョンでのふれあい動物園にて、非戦闘的(ノンアクティブ)なモフい魔物をウザがられるほど愛でる者達。


 本拠地のみに設置された静かな神社エリアで、ひっそりとした空気を味わう者、物陰でこっそりイチャつくバカップル。


「ヒトの神社でしっぽり(たの)しんでんじゃねーよ、バチあたりめ」


「アレはお巡りさんへ通報しちゃう?」


 〈通報済みです〉


『ナイス、タマちゃん!』


 低級3ヵ所に設置された、スキル取得・ステータス値アップ用訓練設備で、ひたすら汗を流す者。



 ダンマスルームから繋がる大農園エリアで、沢山の野菜や果物を収穫しているドッペルや、エリアの端でBBQ(バーベキュー)してウェーイするドッペル達。


 同じくダンマスルームから繋がる生産設備満載のエリアで、生産活動に没頭するリビングドール達、それとなんかコソコソしてるドッペル。


「アレは何してるんだ?」


 〈駄目と言っておいた、お酒を造ってますね〉


「違法だ。 その酒は破棄」


 造っている物を消されて悲しんでいるが、自業自得だ。 駄目なものは駄目。 後でまた注意した方がいいかも知れん。



 大浴場にて(とろ)けた表情で湯に浸かるドールやドッペル達、広いからって泳ぐドッペル。


「風呂で泳ぐなと、後で叱るか」


 ちなみにだが、俺か晴夏のどちらかが入っている時は、風呂場のカメラは作動しない。


 絶滅危惧種等の希少動物を保護するダンジョンで、国の監視員に守られながら観察している研究者、背中を預けて動物と一緒に寝こけているドッペル。



 中級(一般向け)ダンジョンへ泊まり込みでアタックしている者や、帰還魔法陣で引き上げる者。


 中級への無理なアタックで失敗し、ひどい怪我を負う者、あえなく命を落とす者。


 ダンジョンアタックは自己責任、その辺は徹底されている。


 ダンジョン神になって中級以上の様子も見られるようになってから、亡くなった方の名前は国へ届けているが。



 上級(ベテラン向け)以上は、まだ遊び以外で挑戦してみようとする者はいない。


「上級ダンジョンで通用する冒険者は、いつ出てくるんだろうな」


 〈まだしばらく居ないでしょう。 中級の中層へ、トップグループがようやく踏み出せた程度ですから〉


「だよなぁ」


 とまあ、ざっと監視した。



 次は前回のイベントに対する反省会……の一部。


 〈まとめたバレンタインイベントの感想から、幾つかピックアップしました〉


「よろしく」





 〈チョコがもっと欲しい〉


 はい、無視。 ひとりに1つを徹底した仕組みへ変えたのに、それでも用意したチョコ全部が無くなる事態だったんだからな?


 〈2個目のチョコが貰えなくとも、チョコダンジョンへアタックしたかった〉


 それを許すと、横取りや強盗等の問題が容易に予想されますので、駄目です。


 〈モテない男の為のバレンタインイベントなのにやってくる、勘違いイチャつきカップルを撃退する自爆魔物の配備グッジョブ!〉


 時勢に合わせて行っているイベントですので、別にモテない男の為のイベントではありません。 勘違いは厳禁です。


「カップルはむしろ、あの魔物の自爆をわざと受けてるよね?」


 受けてるな。


「なんで?」


 服を汚したなら、どこへ行く?


「服を洗うために、脱いでも問題ない…………あぁ」


 分かったな? じゃあ言うか、せーのっ。


「くそ、(うらや)ましい連中め!」

くそ、野性動物どもめ!


「…………えー?」

…………えー(引き気味)


 〈チョコくれたアホ毛巨乳幼女チャン……アッアッ〉


 ………………この人が来年来たら、チョコじゃなくて青く着色した寒天でもあげようか。


 〈チョコくれる幼女達の衣装は胸元が開いてて、とても眼福でした。 ありがとうございます〉


 あの子達は息苦しいのが嫌いとかで着ているだけです。 変な目で見ないよう、お願いします。


(メッセージカードひぃらり)


[ドッペルちゃんやドールちゃん達へ、可愛い服の作り方を沢山教えてあるから、ママも気に入ったのが有れば着て欲しいなぁ]


(無言で粉砕)


 〈本命チョコ、美味しかったよ!〉


 お前にはやってねぇ。


 〈今年もチョコが貰えたから、入れ替えようと魔法の鞄(マジックバッグ)で保存していた去年のチョコを食べたら、お腹を壊しました〉


 低級(初心者向け)ダンジョン初回クリアでひとり1個だけ配っているバッグには、時間停止機能なぞありません。


 今年配ったのも、既にヤバくなっているでしょう。 さっさと処分して下さい。


(カードひゅるりら)


[今年も去年と同じだったけど、ママの本命チョコだよね? アレって]


(ガン無視)


 〈チョコを配ってる暇があるなら、大切な人への指輪でも用意しなさい〉


 …………急になに? これまさか、ご近所さん?


 〈でしょうね〉


 ちょっと返答はパスで。


 〈ヘタレ〉


 う゛っ!


 〈ダンジョン運営でそこそこお金はあるんでしょ? 良い指輪の店を紹介するわよ?〉


 また? パスでお願いします。


 〈ご紹介に預かりました、指輪等を扱う商店でございます。 ご用命でしたら、同封の住所まで〉


 素材は用意済み! 自分で作るから、結構です!


「ふぉっ!!?」


 晴夏ぁ!? お前なんで膝に乗った俺を放り捨てて、顔を手で隠してソファから落ちたんだ!


「だって、だって!」


 〈うっかりで本音お漏らし。 マスター、意識して本音を出せるよう、精進してくださいね?〉


 は? それより晴夏の心配だよ!


「腰が抜けるほど、今日は凄い日だぁ……なに、わたしってばこのまま死んじゃうの?」


 死なせねぇから! まだプロポーズだってしてねぇんだからな!!


「限界、はふぅ……っ」(失神)


 晴夏ぁぁぁあああっ!!!


 〈なんで真面目な雰囲気で、普通に言えないんでしょうね。 このヘタレは〉


 タマちゃん、晴夏が!! ちくしょう! どうしてこんな事にっ!!


 〈はいはい、サブマスはただ失神しただけですよ。 だから、なんか危ない感じで暴れてるアホ毛を落ち着かせてくださいね?〉


 失神しただけ!? そんな訳あるかぁ! 回復魔法! 最上位各種連発準備!


 〈ダンジョンの中で起きた事だから、回復魔法の効果は確かにあるんですよね。 でもマスター、サブマスを寝室へ運ぶだけで十分ですって〉


 ぐっ……! 分かった、タマちゃんを信じるからなぁ!


 〈あ、寝室ってマスターの方の寝室ですか。 そうですか。 ……とっとと結婚しちゃえばいいのに、あのふたり〉

茂木さんを寝かせて、夕飯の支度をしながら。


〈マスター、今後のダンジョン運営はどうします?〉


「去年は4月からだった新生活応援キャンペーンを、3月からに拡大する予定」


〈他には?〉


「ホワイトデーイベントも開催。 去年と同じだな」


〈サブマスへは、何をあげるのですか?〉


「……ドッペル達と同じ、まとめてホールケーキを大量生産かなぁ」


〈特別なものはあげないのですか?〉


「どうだろうなぁ」


〈またヘタレるご予定で?〉


「ぐぬ……っ!?」


〈あー、はいはいヘタレずにハッキリ言えれば、男らしくて格好いいのに〉


「やかましい!」


〈……そうですか。 ではマスターへひとつ助言を〉


「どうした?」


〈ちゃんと睡眠時間を確保し続けたいなら、サブマスへ週1とかで定期的に好きとか言ってあげて下さいね〉


「なんでだよ? 恥ずかしいぞ」


〈昼間に言ったばかりでしょう。 不安になるからだと。 ハッキリした繋がりが欲しくて、過剰に接触を求めるんですよ〉


「むぅ……努力する」


〈普通なら、努力するまでも無いはずなのですが〉


「うっさい!」


〈ところで今晩のおかずは?〉


「晴夏が急に倒れたし貧血とか考えて、ニンニク増し増しのニラレバ炒めがメイン。 口臭はキレイになる生活魔法で消せるから、問題なし」


〈(晴夏(サブマス)が)押せば退()き、引けば見送る。 正体を知っていなければ、幼女へ本気にならないだろうとか思っている。

 それだから、スキルで感知できる悪い相手でなければ、無防備に世話焼き屋……どこまでも面倒な幼女〉


「ん、どうしたタマちゃん?」


〈何でもありません〉


「そうか」




※ヘタレの癖に自分ってのを確立させて、こじらせちゃった野郎から本音を引き出すには、平常心を奪うしかない。 と自分は思うのです(他の手段が思い付かない)


※※関係が進んで、もっと愛の言葉が欲しくてアホほどアピールするけど、言われるとしたら特別な機会だけだと思ってて。

  実際なんでもない日に言ってくれると思ってなくて、不意討ちくらって乙女ムーヴかます系女子の茂木さん。


 面倒な性格してるふたりが、不器用にイチャつく様子で自分は砂糖を吐けます。 はい。


~~~


夜、幼女の実家。


妹「あのヘタレ、プロポーズする気はあるそうです」


母「これ、笑う所かしら?」


父「どうせ実行する気配無しってオチだろ?」


妹「バレバレだね、こりゃ」


母「晴夏ちゃんからの詳細だとなんて?」


妹「関係が進んだってのがきっかけか、素面(しらふ)じゃなければ、さらっと愛の言葉が出てくる様になったんだって」


母「…………(父をガン見)」


父「…………(目が激しく泳ぐ)」


妹「あぁ……(色々理解)」


母「これは晴夏ちゃんへ、沢山教えないとダメかしらね?」


妹「あのヘタレを簡単に追い詰める手管(てくだ)……(のど鳴らし)」


父「…………(静かに合掌)」

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― 新着の感想 ―
[良い点] ヘタレは遺伝かぁー [気になる点] 青く着色した寒天? 一体何なんだろぉー? ブロロロロ……
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