もぎたい彼女はTS幼女に悶える
※1/28(投稿当日)に、さらなる後書きの文章を追加しました。
宣言通り、前話の後書きでさらっとやりやがった、重要な恋愛要素を本文で。 ちょ~~っと長いけど、茂木さん視点でお届け。
主人公視点ではない視点名物総集編。 しかし総集編だけど総集編らしくない作りを目指してみました。
それであれもこれもと突っ込んで、出来た駄文は散文気味orz
なお、茂木さんがキャラぶれっぽい感じに見えるかもしれませんが、それはTS幼女とくっつくのにぴったりハマる人間になろうと四苦八苦している、そう見て頂ければ嬉しいです。
真相は、まだ茂木さんのキャラを安定して書けない、作者の力不足なのですが(吐血)
明日のバレンタイン当日を心待ちにしてる、アホ毛が付いたゲーム女子キャラクターの姿になっちゃった元男子同級生と同棲中の、同年代より微妙に長身で切れ長の目が特徴の茂木 晴夏だよ!
あ゛あ゛!! わたしは切れ長の目だ! 決してジト目じゃねぇ!! その上親から前より目が据わった、なんて言われてねぇぞオラァ!!
…………失礼しました。
ゲームみたいなステータスの概念と、ダンジョンや魔物や魔力やスキルと言う要素が組み込まれた、半分ファンタジー化した世界。
成人を越えたわたしが高校生をしていた頃から、ずっと好きでいた相手と一緒にダンマスルームで住む事になって、概ね幸せなまま8ヶ月以上。
本拠地としてるダンジョンの周囲を、手繋ぎおさんぽしたり抱き上げおさんぽしたり。
そのさんぽに野暮なストーカーが付いてきて、巡回の警察に呼び止められてるのを見て呆れたり。
家事の割り振りで「全部俺がやれば効率的だ」とか言って、家事能力の差を見せつけられてひと悶着起こしたり。
料理も「俺のスキルレベルなら失敗はない」とかで、わたしが胃袋を掴みたかったのに掴まれたり。
買い物では楽しくお喋りしながら店内を歩き回って献立決めて、買い物袋をふたりして持ちながら手とか繋いで帰る幻想なんて、事務的なやり取りとインベントリへの収納で壊されたり。
わたしの存在価値を確保するべく行った相談が口喧嘩へ発展して、なんとかもぎ取って共同生活感を得られたり。
どこが幸せか? と尋ねられれば、可愛くて愛しい人と、時々ワチャワチャしたりバカしたりしながらのんびり暮らせる時間と答える。
所で、なぜダンジョンに住んでいられるかだけど、地球の主神から気に入られてダンジョンを司る神も兼任させられたダンマスがアイツ。 わたしはサブマスと設定されたからだって。
現時点でサブマスの仕事はほとんど無い。 わたしがサブマスになる前から運営の基礎は出来上がってるし。
無理矢理挙げるのであれば、監視しているダンジョンで気になった事へ口出しするのと、イベントの提案や企画補佐。
あとはダンマスを可愛がったり、家事の分担を請け負ったり、一緒におでかけしたり、一緒に遊んだり、些細な事でバカらしいケンカしたり。
それでダンマスルームだけど、ダンジョン監視に使う場所を居間として、それぞれの寝室やお風呂場や台所、アイツの趣味部屋やダンジョン運営に関する沢山の施設へ続く通路や扉がある。
なかなか面白い家。
…………今ふと思ったけど、自分の寝室をクローゼット付きの更衣室程度にしか使ってないな。
ダンマスの寝室でいつも一緒に寝てるから。
そんな家(部屋?)で生活していますが、もうすぐ変化が起きそう!
どんな変化か? ふふん♪ お聞かせしましょう!
でもその前に、それまでの歴史をご紹介!
……え? そんなの犬の餌にでもしろって? いやいや、聴いてくださいよお願いします!
まだ同棲じゃなくて同居と言われていた頃、わたしがまだ友達認識されていた頃。
添い寝で、ちゃんとわたしを恋愛対象候補として見てくれて、その嬉しさで勢い余って絞め落としちゃった後の話を。
~~~
あれはまだ、アイツ以外のダンマス達から挑戦を受ける前。
絞め落とした恩恵で、人間を辞める能力を手にしちゃってからしばらくの事。
同居開始当初は「俺を惚れさせてみろ」と挑発された影響で、とにかくアピールを繰り出しまくって失敗の連続。
そこで、押しても駄目なら引いてみろ。
夜の添い寝以外は、変化に気付かれない程度でちょっと控えめに。
冷静さを保ってアピールはそこそこに、何が好きか楽しみか。 もっと色々知ってから、的確に迫ってやるってね!
それで少し経つと向こうから急に、アホ毛をピコピコさせて「海へ行こう!」って言ってきたから、水着で魅了してやる!
なんて意気込んで、凄いの見せてあげたら大人しい水着を渡されてしょんぼり。
渡されたのが、色とサイズ違いのウェットだかドライだかのスーツ。 実に色気の無い格好だけど、お揃いって事で不満は言わない。
それに折角の海だし、ワクワクで砂浜まで出たらまたもやアホ毛をピルピルさせて「競争だ!」と。
てっきりどこか目印までの往復だと思ったら、期限は3日で本州を1周する競争。
……もちろんバカじゃね? って罵り倒したよ? アホ毛をくったりさせてやったよ?
でも、あのがっかりする様な、しょんぼりする様な態度に負けて承諾。
結果? 笑うしかねーわ。 ふたり並んで、2日で1周しちゃったの。 休憩は食事休憩位しかせず、宿は飛び入りの素泊まりで。 泳ぎ通しでも全然疲れなかった。
っつーか競争と煽った癖に、競争自体にはさっさと飽きて、素潜りで遊んだりイルカの曲芸ごっこしたり、流木をふたりで掴んで「ツインエンジンだ!」とかってやった……のは今思うと赤面もの。
…………エンジンはアレだとツインじゃなくてデュアルじゃね? なんて後で訊いたら「ふたりでひとつだから良いんだよ!」と返されて、もしや遠回しな告白か?
なんて両手で熱い顔を隠したら、ただ飛行機の双発ジェットがどうとか言われ、無駄に深読みしただけだと自己嫌悪。
海に関する懸念も楽々対処。 水魔法で水流を操作すれば、海流は味方だし危険な海洋生物だって近寄れない。 それでも突破してくるガッツ有る生き物は、防御系の魔法で泣きを見る。
それでゴールしたらわたしが一方的にはしゃいで、落ち着いた頃に軽くお説教を食らった。
「これが俺達。 力を持ち過ぎだから、注意しろよ?」ってね。
……わたしの為に言ってくれるのは嬉しいよ? でもね?
「折角の海デートを説教で〆るな!」
言ってやった! それとこの幼女に、幼女らしからぬ脂肪を胸からぶら下げてる怒りを、たっぷりぶつけてやった!
掴んだ感触が余計に自分との差を感じさせて、もいでやる! って怒りがマシマシ!
帰りにお詫びでそこらの衣料品店へ寄って、ブリッブリの女児ファッションを着せまくって、遊ばせてもらった。
デート後は地元の商店街でブラブラ買い物デートとか、ダンマスルームに電波が来るのを利用してオンラインゲームしたり、ダンジョンのイベントを一緒に考えたり。
まあ地元の買い物デートって言っても、実際はいつもの食料品や日用品の買い出しをするだけだから、色気はない。
それ以外には、ヒトの顔より下へ視線を向けられて、いい加減にしろ! ってバカとやる喧嘩は最早日常。
それで例のダンマスバトルロイヤルが発生して、準備期間でわたしの心配する気持ちがバカに理解されず、夜の添い寝が添い寝で終わらなくなって分からせた。
………………わたしがこのバカを大好きだから、怪我しないか心配だって気持ちを分かってもらったですよ? どうやって分からせたのかは秘密。
分かってくれたのか、バトルロイヤルで着せた黒のゴスロリは可愛かった~。 黒ゴスが基本だけど、薄ピンク髪だし白ゴスも多分合う。
そんな騒動の少し後だったね。 わたしのスキル【真実を求める眼】が成長して、アイツ限定だけど、まるでゲームのポップアップアイコンみたいな形で簡単な気持ちが分かるようになったのは。
この機能、控えめに言って最強。
ずるいんだよ? 30……下手すれば40センチ近く小さな幼女からそっぽ向かれたり、膨れっ面をされても、頭にハートマークが浮かんでるのを想像してみなさい?
ドヤ顔されたり膝に乗せて後ろから抱き抱えると、恥ずかしがるアイコンとか音符マークとかハートマークとか、浮かべられてご覧なさい?
俯いたりしょんぼりしたりすると浮かぶ、悲しそうなアイコンとか出されたら?
卑怯すぎるだろーーーーーーっ!!!
何アレ? 可愛過ぎかっ! どれだけ感情を揺さぶってくれば気が済むのよ!
しかもアイツは感情直結型のアホ毛もついてて、犬の尻尾みたいにブンブン振ってくるのよ? 甘える様に巻き付いてくるのよ!?
あんなの本当にズルいわ。 母性本能を刺激する能力がチート過ぎる!
ここまでされたら、性癖歪まない方がおかしい!(自己正当化)
あ゛~~~……駄目だ。 はやく夜になれー、すぐにでも添い寝したいなー。 今からでも抱っこして――――
――――っとと、ステイクール……ステイクール。 大丈夫、わたしは冷静だ。 冷静なんだからね?
スキルの眼、今はもう少し詳しく見られるけど、可愛らしさ重視でアイコン止まりにしてる。
あ、ヒトを見て板みたいなアイコン出しやがる時は例外ね。 その時は心を鬼にします。
秋は特に無いなぁ。 穏やかだった。 秋に相応しいイベントで頭をずっと悩ませたり、アイツが3年間連れ去られてた異世界の、秋の味覚を【大農園エリア】で作ってくれたりする位。
あの大農園エリアって面白いよね。 種とか苗とか植えて、魔力を注ぐと最速10分で収穫時期到来。
テレビの超速再生映像見てるみたいにニョキニョキ生長する様子は、不思議と笑える。
他には……アレから、わたしの気持ちを遠慮なくぶつける夜がしばしば有るのが、変化らしい変化?
一緒に寝ようとしたらアホ毛ブンブン振られて、追加でハートマークを出された日には、寝られなくなるのも日常化したし。
ソレを嫌がらないし、膝に乗せたり抱き上げればハートマークを出してくれるし、あの「惚れさせてみろ!」は完全にわたしの勝ちだと分かって余裕が出来たし。
でも本当は直接言って欲しいと期待しながら、時々じゃれるみたいに言い争いしたり、胸ネタで遊ばれて仕返ししたりで秋が過ぎた。
え? 同棲開始当初の引いてた期間? とっくに終了してるよ。 感情アイコン頼りでトライ&エラーがトレンドさ!
モノによってはアウトラインギリギリを狙って、そのアウトラインを広げてやろうって色々してるよ!
その辺の作業報告を、アイツの妹ちゃんへメールで打っちゃったりしたね。
後は真剣味が欠けてたけど、超級や神級ダンジョンでデートした時。
ポロっと溢した結婚式をほのめかす言葉とか大袈裟に捉えて、それを両方の実家へ流して外堀埋めなんて遠回しにお願いしたね。
秋、けっこうやってるね。 陰謀じみたことだけど。
……あー、あの変化はいつだったかな? 冬前? はっきり認識したのは年末だったけど。
いつの間にかアイツがわたし達の関係を、同居から同棲へと呼び方が変わってたのは、昼なのに夜の行動をする程嬉しかったなぁ。
朝になって、アレから「腰に力が入らねぇ」と文句を言われたり、タマちゃんから〈お盛んですね〉とからかわれたり。
んーー…………しっかし、ナンだね。 こう何度もしつこく言ってるけど、全然女の子っぽくならないのよね。 寝てる時に少し可愛くなるくらいで、振る舞いは男の子のまま。
よく有る創作物だと、体に意識が引っ張られて~~とかなるけど、そんな様子は全く無い。
本当に心まで女の子になっちゃったら、恋愛対象として見てくれなくなる危険があるし、変わって欲しくはないんだけど。
でもアチコチへの気配りはさりげなくこなして、冒険者のひどい無理をさせない育成もして。 お母さん臭を感じるんだよね。
なんだろ? 微妙に女として負けた気分が、少しする。 まあ良いか、わたしはあの可愛い物体から告白を引き出すのに、全力でいれば。
とまあ、そんな日々に幸せを感じてました。
でももうその頃には、わたしにある種の限界が来ててね。
いい加減下の名前を呼べ、それとテメェの気持ちを口から出せ! いつまで待たせやがるっ!
寝る時どれだけお前へ心からの「しゅきしゅき、だいしゅき、あいしてる」を言ったと思ってる!!
こちとら交際期間無しでプロポーズされても、喜んで受ける気だぞっ!!
口に出さずとも、相手に気持ちが伝わるなんて幻想だっ!! 念話ですら言ってくれねぇってふざけんなぁ!!!
このままヘタレてっと、逃げ場完全に奪って追い込みかけるぞアァンッ!!?
あ~~、ごめんね? もっと長くて、報われない片思いをしてる人も居るよね?
でもわたしは考えるより行動する女。 待ち合わせで遅れてる相手を待つのなら、迎えに行くタイプ。
わたしへ気持ちを向けてくれてるのが見えるから、余計な不安を持たないで済むけど、それでもやっぱり焦れっ焦れ。
年末。 両親から年越し準備を手伝って欲しいって連絡を貰い、ついでだから少し花嫁修行もしちゃおっかな? とか思い立ち、置き手紙とタマちゃんへ伝言を残して帰省。
帰省っても同じ市内だから、そんなでもないけど。
家の事はアイツから教わった生活魔法でパパっと。 それから向こうを訪ねて、家の味を教わったり今後の相談をしたり。
いっその事ふたり分ウエディングドレスを縫っちゃうか? って話したり、もし結婚式をするならダンジョンの特殊エリア【神社エリア】になるから白無垢? お色直しで両方着ちゃえば良いじゃん! となったり。
余談だけど、縫い針を使うのが【裁縫】スキル、編み針を使うのが【手芸】スキル。 裁断は【裁断】スキル。
ミシンを使うと【機械操作】7:3【裁縫】又は【手芸】でスキル経験値が分けられるんだって。
そうして年末を楽しく過ごしていたら、まさかの帰省してきたゲッソリ幼女。
なんかわたしが、このバカを見限って失踪したと思い込んで、酷い状態になったそうな。
これにはわたし、おもいっきりニヨニヨしました! でもやっぱり本心を口には出してくれないんだ、ってムカムカもしました! ええ!
新年。 ついにヘタレの妹ちゃんが爆発した。
あのバカ、結婚する意味を固く考えすぎていたみたいで、法律とかその辺を絶対的な越えられない壁にしてたみたい。
それを妹ちゃんが論破。 バカは呆然。 良いぞもっとやれ!
それから新年の挨拶回りが終わって帰ってきたら、今度は役所から成人式の相談。
そこでどうにも、バカの頭からモヤモヤアイコンがどかない事が気になって、眼の精度を上げたら本当にバカな考えをしていると見えた。
仲間外れだの、味方が居ないだの。 いっそひとりになりたいとか、その辺の感情が見えてしまった。
だからそんな感情を、本心ぶつけて解そうとした結果。
「晴夏」
待ちに待った、待望の名前呼び!!
ずっと茂木だったけど、待ってました!
どれだけ待たせたのよこのバカ!! 大事な事だからしつこく繰り返すぞっ!
でも直後の胸ネタでプッツン!!
名前呼ビハ幻デ終ワリマシターー(憤怒)
落ち着いてからもっと詰ってやろうと思ってたけど、実行したらなんか悪い方向へ拗れそうな予感がして、良い子ぶって我慢した。
後でステータスを見たら【予感】スキルが生えてたのは、知らない。 知らないったら知らない。
……けど、詰らずにいて正解だったと、ホッとしたのは事実。
~~~
司会として参加した成人式でふたりの思い出をしっかり作って、やって来ましたバレンタイン!
本当は憎くて憎くて仕方ないバレンタイン!
は? 同棲する相手がいるんだから、憎む必要は無い?
憎いもんは憎いって。 目の前でイチャつくカップルなんて見たらどうよ?
本気で爆発しろとか言いたくなるわよ。 わたしなんてどれだけ好き好き光線を出そうが、慌ててスルーされるのよ?
光線を浴びせて効果が出るのは、夜に添い寝する時だけ。 それでも効きが悪くて、わたしがどれだけ悶悶としていることか……。
鏡を見せてきてどうしたの? お前が言うなってなに? わたしとバカはまだちゃんとした関係じゃないわよ? は?恋人通り越して嫁になってるだろって? なれてたらこんなに荒れてません!
…………オット、変ナ方向ニ話ガ。 イケナイ、イケナイ。 ヲホホホホ! ハナシ ガ ズレテマスワネ?
ダンジョンでやるバレンタインイベントの準備は、本当に心が死にかけたけどそれは過去の事!
……節分?
通過したイベントですね。
……片思い相手が連れ去られた先で、過ごした3年間の異世界生活話?
嫉妬と悲しみしかない話は、もう忘却の彼方ですが、なにか?
また話がずれた。 本命チョコを誰にあげるかで、もの凄く可愛い自爆をしてバラしちゃったあの子の為に、わたしだって本命を用意しました!
お呪いは一切無しで、直球勝負!
あのベッタベタな大きいハート型チョコ!!
……いや、だってね? 【料理】スキルマックスで高級チョコ専門店の商品にすら勝てそうな、凄いの作って見せるアイツに勝とうとするなら、この路線しかないのよ。
一応イベント中だし、実家へチョコを届けるタイミングを考えると、わたし達も朝……実家へ行く前にチョコを交換するしかない。
だから朝早くにご飯を食べて、適度な距離で向かい合ってチョコ交換タイム!
……ってなったんだけど、なんか目の前のコイツが挙動不審。
顔真っ赤で、視線が定まらなくて、冷や汗ダラダラで落ち着かずキョロキョロ。
頭のアイコンは、全力のモヤモヤ。
………………オイ。
ついでに言うと、この後実家だからちょっと良い服着てるみたいだけど、なんでそれが白ブラウス青紐タイ・チェック柄群青プリーツスカート・紺長袖カーディガンのJK風スタイルになるよ?
わたしも着ろってか? 成人してるのに? って事で、せめてもの抵抗としてレディーススーツ。 これなら教師と生徒の併せコーデだ。
部屋で急いで着替えて化粧も手直し。 急いでも時間はそれなりにかかるから、居間へ戻る頃には落ち着くかもと期待していたけど、様子は全然変わってなかった。
しょうがないから、わたしから。 大きくて四角い、ラッピングされた箱を渡す。
「わたしは前の告白から変わってないわよ。 今でも貴方を、大好きです」
……ああ、恥ずかしい。 やっぱり素面で告白なんて、わたしのガラじゃない。
でもわたしから言えば、今こそ言葉を返してくれるんじゃないか。 そう期待すると勇気が出てくる。
それを受けたコイツは無表情で、感嘆符を頭に浮かべてアホ毛もピーンと張らせたまま、無言で受け取った。
…………チッ。
本気で舌打ちをしそうになる。
「ありがとう」すら言わねーんかい。
アイコンは三点リーダだし、アホ毛は固まったまま。
これ位で落ちる好感度じゃないけど、分かる形で返ってくるものが無いと、気持ちはどうしても萎えるし冷える。
しばらく冷めた目で見ていると、ぎこちなく稼働してこっちを探ような目ぇしながら、ようやく馬鹿の口が開いた。
「……開けて良い?」
「もちろん」
わたしの返事を聞いてから、ゆっくり開封される。
箱から出てきたのは、もちろん前述したハートチョコ。 白いチョコペンで大きくLOVEも入れた逸品。
再び固まる馬鹿。
……おいコラ、なんで固まってんだよ。 好意を持ってる相手からの本命チョコだぞ? お前の笑顔とか赤い顔してオタオタするとか、良いリアクションが欲しくて気合い入れたんだぞ。
お前からの「好き」って言葉を、わたしがどれだけ待ち望んでいるのか、分かってんだろ?
なのにこんな形で期待はずれって、スルーされるかも知れないって。 もしかして心変わりでもしたんか? なぁもうちょっとさ、なんか反応は無いの?
聴覚が働ける心理状態かは分からないけど、補足と言う名の追撃を入れる。 ねえ、ホントになんか反応頂戴よ?
届いてるよね? この気持ち。
「学校でアンタを知ってからの、わたしの長い片思い。 舐めるなよ?」
言葉の受け取り方によってはまるでストーカーだけど、偽らない本心なのは間違いない。
【威圧】まで小さく込めたこの言葉に、少し怯える。
……なぜ怯える。 わたしの全身全霊だぞ? 本当は受け取りたくなかったーとか言わないよな?
長いこと馬鹿を見つめていたが、ようやく返ってきた言葉はただ、力ない「ありがとう」だけ。 しかも俯きながら。
なんだよ。 明言しただろ? わたしへ本命をくれるって。
なんだよ。 なんでそんな、変な態度なんだよ。
なんだよ。 なんで素っ気ないんだよ。 わたしのひとり相撲で、アンタはお情けで一緒に居ただけとか?
泣くぞ?
目に集まってくる水分を自覚していると、あの馬鹿に動きがあった。
アイコンが消え、アホ毛は通常モードに。
顔は引き締ま……り切れず、眉がピクピク口の端はヒクヒク。
ハートチョコと入れ替えでインベントリから出した箱を、わたしに差し出す。
箱はラッピングされていて、ハートシールこそ無いものの、気合いの入ったリボンがかかっている。
そこで一度深呼吸をはさんで、今度こそシリアス顔。
ここまできて、出てきた声量は弱弱しい。
「あの」だの「その」だの「ああ」だの「うぅ」だのとばかり呻き、再びキョドりそうだったのを軽い【威圧】で正……せず俯いた。
【威圧】はいつ手に入れたのか? 最初からだよ。 学生だった頃には、胸でいじられるなんていつもだったよ。 慰められる事すら、威圧して拒んでたから。
だからアップデートされた世界で、最初からスキルとしてもってたんだろうよ。
過去の嫌な思い出に浸っていたら、アホ毛をぎこちなくピクピクさせながら、消え入りそうな声でようやく出てきたのが、
「ぐぬ…………はるか、すき。 これ……うぅ。 ほんめい、です」
最低限!
なんでぐぬらないと言えないのかなー? つーかもっと言う事は無いんか? ほれほれ、もっと言って良いのよ?
でもそれは別として、ようやく! ようやく言ってくれた、本当に欲しかった言葉!
ずっと見たかった光景!
これにわたしの心が急浮上!
満足感と共に「うむ!」なんて言って箱をうけとった。
なんだよ! ただただ超ヘタレてただけかよっ!
なんだよ!! ド緊張してただけかよっ!!
なんだよ!!! 覚悟ができていなかっただけかよっ!!!
なんだよ!!! わたしを好きじゃないかもって、馬鹿なわたしの勘違いだったのかよっ!!! 疑って本当にごめんなさい!!!
反省は後にするとして、さっきしたヤツの言葉は小動物みたいだし、学生風も組合わさって可愛すぎかよ!! ちくせうっ!!
…………はっ!!
これ端から見たら(外見)女教師へ(外見)JK(?)が本命チョコ!? これ禁断百合シチュかよ! ヤベェよヤベェよ!!
元男子がロリって、女子へ本命差し出す。 なんて倒錯的!!
元々好きだった相手が愛らしくなっちゃって、更にこんな事までしてくれるだなんて、どこまでも背徳的!!
ああもう……ああもう! ニヤニヤが止まらない!
持った箱をテーブルに置いて、箱を差し出した形で固まっていた大好きな人の手を両手で包んだ。
「嬉しい、ありがとうね!」
顔の制御を放り捨て、心のままに言葉を紡ぐ。
そんなわたしに、すっかり体が解れた貴方は頭を上げて、アホ毛をブルンブルン回しながら僅に朱味が差す汚れの無い笑顔を返してくれる!
「コンゴトモ ヨロシク」
なぜここでボケたテメェェェェエエエっ!!!
ひと頻りふたりではしゃいだ後、チョコの交換で一時冷たい目と声にて【威圧】したのを謝ってから。
「それにしても……」
「なんだよもt……晴夏、ニヤニヤしやがって」
「んふふ♪」
「ハッキリ言えよ、気持ち悪い」
「じゃあ言うね? わたしのスキル【真実を求める眼】が、ついにアンタの気持ちを映像で見られる位まで、成長しました!」
「なん…………だと!?」
「チョコを受け取る時にね? 見えちゃったのよ」
「っ!!?」
「表面とか実績ばかりで見られてて、もっと内面を見て欲しいとか言う潔癖になっちゃった心とか」
「うぉっ!? おい!」
「異世界での女性経験(恋愛ではなく交流)から、女性への恋愛感情湧かず、男はイヤ。 帰って来ても、寄ってくるのは変態ばかりで、恋愛諦めムード」
「待て待て!」
「そこにわたし! 力を持つ前……女の子になる前から交流があって、その頃から好きだったと言われる!!」
「待って! 晴夏マジ待って!」
「そこから一緒に暮らして、ただのいち個人としてちゃんと見てくれて!」
「ホント、もう止めてっ!」
「何をするにも一緒で、面白おかしくバカやりあえて、しかもナニとは言わないけど積極的に求めてくれる!」
「NO~~~~~~ッ!!」
「このまま一緒に居られたら、一生楽しいだろうなぁとか思ってたら、いつの間にかコロッと行ってた!!」
「…………(放心&ケイレン中)」
「アンタは純真な男の子って言うより、むしろ純情な乙女の方に、精神構造が近いんじゃない?」
「やめ…………やめ……。 マジで恥ず…………(ビクンビクン)」
「ふふん♪ 折角の良い空気なのに、照れ隠しでボケてくれたお返し。 あと大丈夫よ、普段はアイコン程度までしかスキルを発動させないから」
「うぅ……そもそも発動させない方向で、お願いします…………(顔真っ赤&悶絶)」
「イ・ヤ♪」
「うおぉぉおおっ!!(男泣き)」
「って言うかさ、コロッと行ったの早すぎでしょ」
「やめろおぉぉおおっ!!」
「ダンマス達とやり合うより、随分前だなんて」
「pくぁwせdrftgyふじこlp!!!」
「んで直前の夜に、私から求めたら「したかった申し出を、向こうからしてくれるなんて嬉しい!」って思うとか、どんなチョロインよ?」
〈おふたりさん、時間。 チョコ持って実家へ挨拶に行くのでしょ?〉
「っと、そうだよなタマちゃん! ほら晴夏、そろそろ行くぞ! ドッペル達も解散だぞ!」
「いや、ドッペルゲンガー達は楽しい事大好きだから、わたし達の騒ぎを見にきたんだって。 騒ぎが収まれば、勝手に解散するわよ」
「だから終わったから、それぞれ持ち場へ戻れっての!」
〈マスター。 ドッペルを構ってないで、サブマスと出掛けてきなさい〉
「酷い!?」
「……本当に時間がまずいわ。 ほら、行きましょ!」
「お前もか!?」
〈今更ですが、行ってきますのチューをしないのですか?〉
『しねーよっ!』
〈そうですか。 では、行ってらっしゃいませ〉
「はーい、行ってきまーす!」
「待ておい! 首根っこ掴まないで! 痛い! 痛いからやめて!!」
〈このまま屋外へと出たら“新米女教師又は慣れない仕事で疲れた新人OLによる、JK幼女連れ回し事案”……なんと犯罪的な〉
「そこ、うるさーーい!!」
「ここでからかうんじゃねーぞ、チクショウめ!」
※この時点で茂木さんは、既に得ている【神殺し(絞め落とし)】に追加で【神殺し(恋愛攻略)】と【ダンジョン神の恋人】とか言う称号も付きました。 結果、TS幼女に一歩劣るステータス値から、横に並べるステータス値へ。 この二人がなんでもアリのガチ大喧嘩を始めると、地球がピンチで危険が危ない事になります。
~~~
バレンタイン当日夜、食後でまったりするTS幼女の実家。
妹「今朝の続きです」
母「ようやく、ヘタレが一歩進んだ話の続きね?」
父「…………」
妹「進展の報告しに行った先でご近所の方々が、メチャクチャにブー垂れてました」
母「そうだったわね」
父「…………」
妹「地域ぐるみでとっとと結婚しろと、結婚させる雰囲気を作ったのに、まだそこかと」
母「秋から協力してもらっていて、ようやくですものねぇ」
妹「あのヘタレもちゃんと気付いてはいたんだよね」
母「ウチへ戻ってくる時に、ご近所の目を気にしながら、ビクビクしてたものね」
父「…………」
妹「なので、ちょっとこっちからメールも入れてやりました」
母「なんて?」
妹「遅い! ご近所のおば様方が、早く花嫁姿を見せろとオカンムリだぞ! ……って」
母「あらあら」
妹「恐らくご近所の皆様は、よりアクティブに追撃を入れる様になるんじゃないでしょうか」
母「面白い事が好きな皆さんだものねぇ」
父「……なあ」
妹「なに?」
母「どうしたの?」
父「会議は良いが、目の前でこれ見よがしに娘からのチョコを食わないでくれ。 つらい」
妹「今朝宣言したじゃない」
母「あなたの目の前で、美味しいチョコを美味しそうに食べてあげるって」
父「本当にやるとは思わなかった……」
妹「今朝とっくに食べちゃったヒトの分は無いからね?」
母「店売り5000円のバレンタインチョコより、本当に美味しいわよ。 このチョコ」
妹&父『っ!!?(ガタッ!)』




