TS幼女は異世界を振り返る
ほとんど語らなかった、属性としては有ったけど、薄かったTS幼女の異世界要素。
ここでちょっと補充です。
※作中、かなり薄いですが性的な表現が有ります。 いつも胸ネタが入っているので今更ですが、それ以外ですね。 ですので、駄目だと感じたらためらわずブラバ等の回避手段をお願いします。
※※神のメッセージカード。 今までは『』で書いていましたが、ふたり以上が同時に喋った際にも使っていて紛らわしさを感じましたので、今後は[]で表記します(連載版で投稿済みの話は大体修正済み)
よう! 俺はいつの間にか異世界の女神に拐われて、押し付けられた面倒事を3年で終わらせて帰還した、ポニテ薄ピンk……自己紹介はもう疲れた。
まあ、ちんまくて動くアホ毛が生えた、TSロリ巨乳野郎とでも覚えておいてくれ。
前回は成人式の司会として参加する話まではしたか?
結果は……微妙だな。
いや、成人式自体は成功だよ?
ダンジョンマスターとして活動中の俺と、サブのダンマスとして同棲中の170センチ前後のちょい長身ジト目(気味)女性茂木 晴夏がふたりで参加。
会場は俺直営ダンジョンでも、本拠地にしている所。 そこに設置してある、1000人位入れる魔物が出ない特殊エリアの神社。
ふたりして矢絣着物と袴、大きいリボンのハイカラ凸凹コンビ。
緋色と藍色。 着物と袴、互い違いで合わせた姿は、式参加者の女子達から「カワイー!」の絶叫をもらいまくって大盛り上がりだったからな。
……野郎? あいつ等は俺のアレを見て、女子からの絶叫にまぎれて「デケェ!」「埋もれてぇ!」「はだけろ!」とか馬鹿ばっか。
ほぼ無い茂木がキレそうになってるのを必死に止める、嫌な思い出しかねーよ。
んでガッチリ司会こなして、小粋なジョークも披露して会場を沸かせ、用意したレクリエーションの景品も喜ばれて「良い式だったねー」とか言われて終了解散だよ。
…………嘘言うな? 言ってねーよ?
………………(緊張で)ガッチ(ガチにな)リ(ながら)司会こなして、小粋なジョークも(緊張で不発になったのを茂木からイジられ、更に抱き抱えられて「カワイー!」と叫ばれるような醜態を)披露して(しまって)会場を沸かせたんだから、嘘は言ってねー。 省略しただけだ。
問題はこの後。
希望者だけに当日式参加者限定ダンジョンを用意したんだよ。
森林エリア5~8階のみを使った、困った成人見本市ダンジョン。
最初は酔っぱらいを始めとした誰が見ても迷惑なのから始めて、ナンパ野郎とかしつこく話しかけてくるのとかが出て来て、最後にテレビとかで流されるヤンチャな成人達。
ボス階では迷惑行為連中、全員集合。
をゴブリン達にやらせて、そいつらの大量討伐。
HPが少なく、すぐ倒せる普通のより弱いやつ。 でもドロップは普通のゴブリン。 経験値も普通のと同じだから、低レベル者ならかなりのチャンス。
他人の振り見て我が振り直せ。 迷惑者になるなよ、ここで決別だ~! って思わせる意味も込めてやったけど、
〈なんか見ててキツい〉〈目を背けたくなる〉〈すげー恥ずかしい〉〈心が痛い〉〈ゴブリンと一緒に遊びたかった〉〈式ではしゃがなくて良かった〉等々。
ダンジョンアタックした新成人達の感想が酷かった。 戻ってきた顔もすっごく微妙。
終わり良ければ全て良し。 つまり、終わり悪けりゃ全て駄目。
来年もやるなら、どうすっかね?
~~~
反省会とか終わらせて、次のイベントはなにする? って話になって。
「そろそろ大まかな準備を始めるバレンタインの話は置いといて、節分やらね?」
「内容どうするのよ?」
「オニは外、フクは内。 豆まきを上手く取り入れたいな」
「今 ロリは外、服は内とか聞こえたね?」
「え……。 俺そんな酷いことされるの?(引き気味)」
「しないしない、するならTS幼女は(ベッドの)内、服は(ベッドの)外だよ(キリッ)」
「うわ……(ドン引き)」
〈口にしたら完全な事案……むしろ事件ですね〉
「タマちゃんに俺は全面同意する」
「ええ~、いつも嫌がりながら応じてくれるじゃん……」
「お前の性癖、ずいぶん歪んだな」
「男からゲームキャラの体なんかに変わっちゃった、アンタの所為よ!」
「それは俺の所為じゃねー! 異世界の女神がやったんだよ!」
「なんだかんだ幼女の姿に馴染んで、満喫してるアンタの言える事かっ!」
「あー! あー! きーこーえーまーせーんーっ!」
〈……色ボケふたり、脱線しすぎです〉
神からのメッセージカードひらりん。
[ママ、もし家を追い出される事があったら、いつでもこっちへおいで!]
床へベチン!
「お断りだーーーっ!!」
そんな会議(?)を我がダンジョンのダンマスルームで、ふたりして白ウサギ黒ウサギの着ぐるみパジャマを着ながらしていた。
……俺が白だったのは、解せん。 黒の方が好きなのに。
大枠で、成人式イベントダンジョンを流用するのは決定。 虎柄パンツを穿かせたカラフル小鬼祭。
浅層はミニゴブのみ、中層はゴブ追加、それぞれのボス階はボス戦突入人数×20。
深層はゴブファイター・メイジ・アーチャー追加。 深層ボス戦は突入人数×20と大ボスのゴブ指揮官。
ボス戦はとにかく、ドッタンバッタン大騒ぎしてお祭り感を演出!
イベント中のみ、挑戦時無償レンタルでゴブ特効武器の炒り豆やら藁納豆剣やら崩れない豆腐ハンマーやらの、大豆武器。
これらが決まり、それから細かい所をどうしようか。 そんな辺りだった。
ぽつりと、茂木が言葉を漏らした。
「そう言えば、異世界でどんな生活をしていたか、訊いてなかったな」
唐突だった。
イベントをどうしようかと、冒険者連中が楽しんでくれれば良いなとか明るく楽しく話していた所で、急に陰を背負うものだから心配した瞬間だった。
〈そうですね。 異世界へ連れていかれる原因をどう対処して帰ってきたかは聴きましたが、暮らしぶりは知りませんね〉
タマちゃんも同意する。
知らない・聞いてない=教えろ。
好奇心が隠せていない瞳でこっちを窺う茂木。
これに俺は、ずっと膝の上で抱き抱えられて座っていた状態から飛び降りて、ひとりソファーへ腰かけてため息をひとつ。
~~~
最初は舐められっぱなしだったよ。
自由に動くにはハンターギルドへ登録すると良いって女神から聞いてたから、そこへ行く時からだ。
「ハンターギルド?」
向こうでは冒険者じゃなくてハンターとか呼ばれてた。
それでテンプレの新人いびりを回避しようとしてな、転生時もゲームキャラの全財産維持したままだったし、ゲームの露出が無いけどそこそこに強い装備で固めて突入したんだよ。
そしたら全員硬直。
〈豪華な装備を着た幼女で、依頼にでも来たのか? って所ですか?〉
そう。 それで、新人登録に来たって知られて、金目の物全部寄越せと絡まれた。 ついでに脱がした俺を~って色目も有ったんだろうな。
……まったく反吐が出る。
〈どう対処したのですか?〉
威圧で発狂させて制圧。 スキルマックスでやり過ぎてな、町の全体へ効果が飛んで、そこから一気に恐怖の使者扱い。
〈舐められてないじゃないですか〉
いやいや。 強かなギルド員がいてな、それだけ強いのなら……って厄介な仕事ばかり振ってきやがる。 報酬は書面通り、色が無い支払いのままでな。
具体的には封印されてたヤバい魔物を狩れだの、俺だけで小規模スタンピードを鎮圧しろだの。 バッカじゃねーの?と何度言ったか。
「それでもやり抜く力と、ハイハイ請ける律儀さ」
〈よくもまあ、生きていられましたね〉
やってみたら、それほど危険を感じなかったからなぁ。
で、それでも全てこなすものだから、無茶振りの難易度が天井知らずで、休む暇も女神の使命を果たしている余裕も もらえない。
そうそう、向こうの魔物は倒しても実体が残る世界でな【解体】スキルを得るまでは、素材価値を落としまくって大変だったな。
〈それらはソロで?〉
基本ソロだな。
「あれ? アンタは女の子と宿に泊まったとか、お風呂へ入ったとか言ってたじゃない」
“基本”と言っただろうが。 成り行きだったり同行依頼や他パーティーのヘルプ、他にも護衛依頼なんかの時にだよ。
「あ、そっか。 そこで一時的に抱き枕とかお風呂のオモチャ扱いされたのね」
…………おい。 なんか嬉しさと威圧感、両方飛んでくるんだけど。
「嫉妬半分、それ以上の踏み込んだ関係になってなくて嬉しかった半分だからね」
お、おう。
〈今のマスターも似たようなものじゃないですか。 怯え半分、嬉しさ半分でしょうか?〉
タマちゃんはちょっと黙ろうか?
〈お断りします〉
え~……。
……それから、俺の強さに目をつけて、あの手この手で囲い込もうとするハンターパーティー・大商人・貴族・王家・その他。
金さえ積めば、情へ訴えかければ、ハニトラで籠絡してしまえれば、権力で、弱味を突いて。
使命を果たせば帰れるって、女神の言葉を信じて行動する俺の邪魔ばかりしてきやがって、あの馬鹿共が。
世界からその内消えるから無駄だと何度断っても、しつこくしつこくネチネチネチネチ……。
何やっても囲い込めないと解れば、今度は暗殺とか締め出しとか社会的な貶めとか冤罪で投獄を狙うとか。 ふざっけんじゃねーっつの。
唯一の得は、悪意だの殺気だのを感知とか察知とか出来るスキルの入手と鍛えるのに、役立った位だよチクショウめ。
〈マスター、黒いモヤモヤが出てますよ〉
おっと、全力にぱっ☆幼女と星型アホ毛!
「はぁ……あざと可愛い」
満足したか? 話しを続けるぞ?
……つっても後はそんなに長くねーけどな。
異世界の常識とか基礎知識とか、体の動かし方やスキルや魔法の使い方。
その辺を学習し終えてから、あっちこっち動き回って、使命に関する情報を集めて回って。
………………あー。
「どうしたの?」
余計な事を思い出したから、少し脇道に入るな。
「……良いけど」
どーもな。 行った先は中世ヨーロッパ風ファンタジー世界で、そうなると心配だったのが衛生観念。
そこら辺に不衛生な物が転がってるんじゃねーかと結構ビビってたけど、その辺は大丈夫で安心したよ。
そー言うのを食べて処理してくれる無害な魔物、ゼリー種がそこらじゅうを這い回ってた。
「ゼリー種?」
スライムみたいに物理攻撃への耐性を持たない、プルプルした奴ら。 他にもゲルとかグミとかウーズとか居るけど、ここでは省略。
「え? 物理耐性を持っていないのが、普通のスライムじゃないの?」
それはどっかの国民的知名度のゲームから来た影響だな。 【スライムボディ】とか【溶解液】とか、そう言った種族固有スキルを持ったのがスライム種。 持ってないのがそれ以外。
攻撃方法で分けるなら、溶かしてくるのがスライムで、体当たりや顔を覆っての窒息狙いを主体とする連中がスライム以外。
「へー」
…………ほれ、ダンマス特権の、ダンジョン配備魔物リスト。
地球でもそんな分類になってるだろ?
「本当だ。 知らなかったわ」
お前とスライム、縁がないのかもな?
で、そいつらを倒して畑へ撒くと、良い肥料になるってんで、どんな小さい集落でも必ず存在した。
しかも魔物だから、倒せばわずかだが経験値になる。 倒したのを農家へ売れば小遣いに。 かなり便利な奴扱いだった。
「ほー」
変態は小さいのを体へ入れて愉しんでたって言うが、変態のやる事は分からん。
「そんな話はいらないから」
あ、そう。 じゃあ話を戻して、初めの町から離れた後な。
時々邪魔してくる連中を蹴散らしたり、ダンジョンへ逃げた重要証人を追いかけて潜ったり。
時には財力使ってしつこく追ってくるロ○コン共へ、トラウマを植え付けるべく報復したり。
使命に関係有るかと思って、全力で壊滅させた悪い組織は関係無かったなんて勘違いも、よくあったな。
「よくあったで済ませるこの子の感性よ……」
〈そんな組織が沢山ある、異世界の物騒さ〉
ソロでなんでもこなせて実績積み上げて多大な名声を得る俺に、首輪と鎖をつけようとするハンターギルドが多彩な難癖付けてきたから、だったらギルドを脱退するわと逆に脅す回数も両手じゃ足りず。
「っ!? そんなプレイをコイツにさせようとする不届き者が、そこまでいるなんて!!」
〈違います。 飼い慣らす……意のままに使い倒そうと、囲い込もうとしたって事です〉
「あ、ああ。 なんだ、高度な変態が群れて現れたかと」
そんな思考が出来る茂木も大概だぞ。
「う゛っ……ボソッ(アンタがいちいち可愛いのが悪いんじゃない)」
……はぁ。 生産スキルもかなりの物だからな。 生産系ギルドへも入れるから、ハンターギルドにこだわる必要が無かった訳だ。
それで、数々の妨害に遭いながらも、なんとか亀の歩みで使命を果たし、帰ってくるまでに3年かかったと。
〈それで〉
ん?
〈どうしてマスターだったのですか? どうして異世界の女神はマスターを選んだのですか?〉
さあな?
「さあなって……」
神のメッセージカードひら~ん。
[人柄、最低限のコミュ力、その異世界の造りに一番似たゲームを、一番やり込んでいたのがママだったって。 直接訊いたから間違いない]
マジかよ……。
〈今明かされた、しょうもない事実〉
「わたし、そんな理由で4年以上の時間を……」
追撃カードつるーん。
[で、そっちの異世界に極めて近いステータスシステムを、現在の地球でも使ってるから、ママは強いまま帰還したのです!]
……それは、喜べば良いのか?
〈分かりませんが、笑っておけば良いんじゃないですか?〉
は、ははは、はははは(乾いた笑い)
再び俺on茂木の膝。
「……まあ、また逢えたから良いか」
「俺の頭を撫で回して、落ち着いたか?」
「なんとかね。 って言うか、アンタずっと異世界で苦労してたのね」
「……いや、結構楽しんでたな」
「本当に? 追い回されてたなら、拠点とか無くて落ち着けなかったんでしょ?」
「まあ、ナルハヤで帰るつもりだったから、元々拠点を作る気が無かったし」
「そう」
「狩った強い魔物素材で何を作るかワクワクしたり、転移魔法も使えるから秘密基地みたいな工房作って、そこでする生産三昧は楽しかったし」
「…………」
〈拠点、作ってますね〉
「あーいやいや、すぐ破棄できる一時的な仮拠点だって。
そこで、その世界特有金属とゲーム金属の比較とか相性とかを研究したり。
ゲーム装備を越える、最強装備を作る野望に燃えたり」
「…………」
〈思いっきり、楽しんでますね〉
「いやいや、良い装備ができれば、使命を果たすのが楽になるだろ?」
「…………」
〈どうせマスターのステータス値で十分だったのでしょ?〉
「タマちゃんひどい! オチを先に言うなんてっ!」
「…………(怒)」
〈真のオチは、そんな研究してなければ、2年位短縮できたとかですよね?〉
「そこまでじゃないぞ! 精々短くできて1年だ!!」
「…………ねぇ(禍々しい気配)」
「どうした?(怯え気味)」
〈…………〉
「帰ってきたくなかったの?(強烈な威圧感&むくれ顔)」
「っ!? そんな事は無いぞ! 使命に関した情報を得る為には待つ必要があったから、その待ち時間で研究してたんだからな!!」
「ホント……?(涙声)」
「本当だって! 一周目特有の、最善行動が分からない状態での攻略だから、時間がかかったって自虐だからっ!」
「そうなんだ……(安堵)」
*以後のタマちゃん、コメント個人送信*
〈晴夏と、下の名前さえまともに呼べないヘタレが、既に同棲相手の尻に敷かれている件について〉
「う゛…………っ! 家族や職場に半数以上女が居れば、男が勝てるなんて夢は持てねーんだよ!(小声)」
〈とっくに調教されたヘタレだったのですね〉
「言い方ぁっ!!」
「…………どうしたの?」
「なんでもない! 気にするな!!」
「そう?」
〈ヘタレ〉
「ぐぅっ……!!」
ちょっと乙女ムーヴな茂木さんと、まだまだオトコノコなTS幼女でした。




