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転生犬語 ~杖と剣の物語~  作者: 館主ひろぷぅ
1章 義姉妹の誓い
9/50

09話 オヤジ裁判と殺人料理

 青銅のその小さな筒を、「魔使石マジカストーンヒーター」と言うらしい。

 熱魔使石をその中にくべて、魔力を込めると小さなストーブになる。

 さらにその中に肉や魚を入れて調理もできる。

 簡易オーブンといったところか。

 それが10個並んで肉を加熱中。


 魔使石には2種類ある。

 ”簡易”と”専用”。

 注いだ魔力を光や熱に変換する、魔力を持つ者なら誰でも使える”簡易”魔使石。

 剣、鍬や鉄を叩くハンマーのスピードを上げるなど、特定の道具や職業にしか扱えないのが”専用”魔使石。

 ミルミルの剣を変形させてるのも専用魔使石だ。

 剣や道具を軽くする魔使石などは”簡易”と”専用”の中間にあたる。


 が、それは今はどうでもいい。


 今は光魔使石の入ったランタンと一緒にロープに巻かれて吊るされている事が問題だ。

 こういうプレイを喜ぶ趣味は無いっ!


「降ろせやー、ぼけーーーっ!」

「うるせーっ黙ってろ変態オッサンイヌ!

 この変態をどうしてやろう。

 マリーと一緒にいると教育に悪いな」

「マリースちゃんが寝てる間に殺したらどうかしら」


 頼みのマリちゃんは疲れと空腹でベッドで寝ている。

 少女は白い大きな長袖シャツ一枚を羽織り萌え袖になっていた。

 ミルミルは半そでシャツに黒のスパッツ。

 誰がどう見てもノーブラだ。

 膨らんだ丘の頂点がさらに隆起して目立つ。


 濡れた服は大きなゲルの梁に並んで干されている。


 ノーブラ獣人は床に胡坐をかいて焼けた肉を調理している。

 テントの中に充満した香辛料の匂いが空っぽの胃袋を刺激する。


 大きな肉切り包丁で木のまな板の上の肉を細かく刻んでいく。


 ヤンジーガの肉は臭くて不味いので香辛料が必須になる。

 様々な場所で色々な動物を狩って食べるミルミルは何種類かの香辛料を持ち歩いているそうな。


 刻んだ肉をテントの周りに生えていた食べられる野草と一緒に、再び魔使石ヒーターに戻す。


「まあおおお落ちち着け」

「お前が落ち着け!」


 ライトグリーンのカボチャパンツのパジャマを着て、偉そうに腰に手をあてて立つミサトにチョップされた。

 僕の身体が振り子運動をする。


 目の前で殺される算段とかされて落ち着けるか!


「僕は今は獅子族の身体だから。

 ヒトの裸を見ても興奮なんかしないぞ!」

「じゃあなんで俺の胸に飛びついた!」


「いいか、良く聞けよお嬢さんがた。

 おっぱいというのはこの苦難に満ちた現実に生まれて一番最初に与えられる安らぎの場所だ。それは人間だけじゃない、哺乳類には全て等しく与えられた安らぎの場所。それがおっぱいだ!だからイヌでもネコでも獅子族でも人間でもおっぱいを見れば安らぎを求めて顔を埋めたくなる。それは我々のDNAに刻まれたおっぱいを愛する原初からの記憶おっぱいのおっぱいがおっぱいおっぱい…」


「キモッ!

 コイツ何か語り始めたし!」


 僕のおっぱいへの愛にミサキが身体をすくめてマジでドン引きしていた。

 なんかちょっとヘコむわー。


「つまりっ!

 単なる好奇心だけで性的に興奮したワケではないから。

 その辺は勘違いされては困る!」

「あー、そ。

 じゃあ昼間、私が犯されそうになったときに座って見物していたのもただの好奇心だったわけなのねぇ」


 わーお、ばれてるー!


 ミサキがジト目で菜切り包丁を構える。

 なんでそんなに調理器具が揃ってるんだよ!


「これで少しずつ手足を切り落としてあ・げ・る…」


 ミサキが背筋が凍るような冷笑を浮かべてにじり寄る。


「うわあああああ、ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい!

 なんでもしますからあああああああたすけてぇぇぇぇぇ!!」


 暴れるとロープに吊るされた僕の身体が周回運動を始めた。


「…ぷっ

 あはははははははは!!」


 ぐるぐる回る僕を見てミサキが大笑いした。 

 くそぅっ、笑うんじゃねえ!

 このアマ、自由になったらまた引っ掻いてやるっっ!


「マリー、飯が出来たぞ」


 ミルミルの言葉にバネでも仕掛けられたかのようにマリちゃんが無言で飛び起きる。

 床に座ると差し出された椀を受け取り、木のスプーンで黙々と食事を始める。


「ほらお前も喰え」


 ミサキの大爆笑が止まる。

 僕も周回運動をしながら絶句する。


 ミサキの前に出された椀の中には、紫と緑がマーブル状に入り混じるドロドロとした見た目のおぞましい何か。


「これは何かしら?

 晩御飯じゃないわよね」

「晩飯以外の何だって言うんだよ、

 バカが。

 蒸した大猿肉の雑草スープだ」

「猿を倒したからって食べる必要はないでしょ!」


 ケモ耳爆乳、筋肉脳筋強いお姉さんときて殺人料理か。

 色んな要素が詰め込まれたキャラだな。


 ま、大猿肉なんてどう料理しても殺人料理になりそうだが。

 だがこのビジュアルは酷過ぎないか?


「わ、私は夜用に残しておいたサンドイッチをさっき食べたから遠慮しとくわ」


 そう言うとミサキはベッドの端へ逃げていく。


 はて。

 殺人料理ならマリちゃんが既にぶっ倒れているハズだが。

 現在進行形で夢中になって料理を口にかきこんでいる。

 心と同時に味覚まで失くしたとか?


 汁を呑もうと椀と顔をあげたマリちゃんと目が合う。


「ダルマちゃん、

 それ楽しいのですか?」

「楽しそうに見える?」

「うーん…」

「たすけてよぉぉぉぉっマリちゃぁぁぁんっ!

 コイツらが僕をいじめるんだよぉぉぉぉぉぉぉぉっっ」


 盛大に泣き散らかす。

 そうでもしないとマリちゃんが食事の続きを初めそうだったからだ。


 少女は椀を床に置き、右手の人差し指を立てる。

 そこに金の蛇が伝い上がってくると。


 シュン!


 僕の脇を金色の閃光が掠めた瞬間に戒めが解かれた。

 自由落下する僕の身体をマリちゃんが両手で受け止めたてくれた。


「ありがどぉぉぉぉ!

 マリぢゃぁぁぁぁぁぁぁんっ」

「よく泣くイヌだな。

 まあイヌだから鳴くのか」

「よしよし」


 ミルミルの嫌味を無視して僕はマリちゃんの太ももの上に下りる。

 マリちゃんが僕を優しく撫でてくれた。


 ウソ泣きに決まってるじゃん。

 子供の同情を誘うには効果的だろ。

 心を失った少女に「同情」があるか知らないけど。

 今まで思い通り動いてくれているからたぶん有効。

 

「変態オッサンイヌが自由になったけどいいの?

 マリーちゃんに悪影響なんじゃなかったの」

「マリーが気に入ったんだから仕方ないな」

「ふーん、

 随分甘い保護者ねえ」

「うるせー。

 おいイヌ、マリーに害があるとわかったら斬るからな」

「だからオッサンちゃうって!

 年齢はキミらと変わらへんって…」


 ぐ~~~~~っ。


 お腹のムシが騒ぐ。

 柔らかで暖かな太ももの上で撫でられて空腹と疲れが一挙に押し寄せてきた。


「ダルマちゃんも食べますか?」


 食べ差しの椀を差し出された。

 近くで見るとその中身はさらにおぞましいモノに見える。


 鼻を近づけて嗅いでみる。

 香辛料の匂いが強くてよくわからない。

 が、獅子族の嗅覚が確かなら危険なニオイはしない。

 と、思う。

 たぶん。


 この際贅沢は言ってられない。

 もう何でもいいから胃に入れないと空腹で倒れる!


 思い切って僕はドロドロの中に鼻まで突っ込んで貪り食べる。


 うおおおおおおおおおおおおおおっっ!!

 おおおおおおおお!?


 肉自体に味は無い、いや苦味すらあるがドロドロとした何かが甘辛く絶妙に苦味を「旨さ」へと昇華していた。

 口一杯に広がる幸福感。

 僕は我を忘れて皿の中身を食べ尽くす。


「おかわりっ!」

「私もおかわりです、ミルミルちゃん」


 ミルミルは魔使石ヒーターに直接スプーンを突っ込んで食べていた。


「そこの3つのヒーターにあるのを分けて喰え」


 スプーンで指し示す。


「ねえ…まさか…

 美味しいの?」

「すっげえええええええええ不味いからお前は喰うな」

「変態ひねくれオヤジのアンタがそういうから美味しいのね!?」


 ベッドの上でミサキがミルミルのいる方へ座り直す。


「わっ私もお腹が空いて死にそうなのー。

 ねえお願いー。

 余ってるなら分けてもらえなーい?」

「ちっ。

 ひねくれてるのはお前もだろ。

 女の猫撫で声はキライだからやめろ!

 お前はこれを喰え」


 ミルミルがヒーターの一つをミサキに差し出す。

 ミサキが恐る恐る受け取り、恐る恐るフタを開けて恐る恐るスプーンを突っ込む。

 恐る恐る中身をすくうと恐る恐る口に近づけて恐る恐るすする。


「うっ………

 美味いっっっ!!

 えっえっ!?

 ウソでしょ!!!」


 ミサキはスプーンをせわしなく動かしてドロドロのモノを口に頬張る。

 

「ごんなに美味い゛のに゛っ!

 どうじてこんなグロい見た目な゛のよ゛っっ!!

 見た目が良かったらもっと美味しく食べれるのに゛ぃぃっっ!!!」


「ミルミルちゃんは見た目が悪いです」

「お前、

 色々省きすぎなんだよ!」


 ミルミルが笑いながらマリースの口の周りの汚れを指で拭きとった。


「なあ。

 そのブサイクなイヌはお前が呼んだんだろ。

 召喚術士じゃないのか。」


 食事が先に終わったミルミルがミサキに聞く。


「だから、違うって。

 その役立たずは、街の道具屋でおまけでもらった召喚紙で呼んだのよ」

「ショウカンシ?

 なんだそれ」

「ほら、これよ」


 ミサキは茶色く汚れた紙をカバンから出す。

 そこには文字と魔方陣が書かれていた。


「召喚士が少しのお金と交換してくれと置いていったらしいわ。

 道具屋も物珍しさから引き取ったけど、

 誰も気味悪がって買い手がつかないって」

「ははっ

 あの笑い話があるからな、召喚士には」


 笑い話?

 召喚術士マスターは笑い者にされているのか。

「面白かった!」


「続きが気になる、読みたい!」


「つまらねえ!○ね!」


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