表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生犬語 ~杖と剣の物語~  作者: 館主ひろぷぅ
1章 義姉妹の誓い
6/50

06話 猛追、ハイパー化大猿

 ぶべっっ!!


 大猿が振り回していた右手が僕の身体にヒットォォぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!


 すんごい勢いで急降下!

 この高さだと骨折は必死!!

 やべええええええええええええ…


 あれ?


 獅子族の本能?

 反射的に身体を捻って四本の足で華麗に着地!

 

「ダルマちゃん、危ないよ」

 

 すぐ後ろでマリースちゃんの声がしたと思ったら。


 はい、再び空中へ放り投げられたあああ。

 大人しく見えて扱いが雑、乱暴!

 どんなカワイイ顔してたって人間なんて信じられるかぁぁぁぁっっ!


 一回転して僕が見たものは。

 僕が着地したところに銀の大刀が振り下ろされ周りの大地が大きく凹む。


 僕を助けるために投げたのね。

 疑ってごめん。

 当のマリースちゃんはバックステップで大刀を避けていた。


 台地を凹ます力の衝撃波で僕はさらに吹き飛ばされる。


「んぎゃっ!」


 木にぶつかった。

 足を踏ん張り爪をたてて木の上に踏ん張る。

 地面にいるよりここの方が安全そうだ。

 高見の見物としますか。

 この爪便利やな。


 ミルミルの方はと見ると。

 左手に短めの剣を持って二刀流で戦っていた。

 右利きのヤンジーガは刀傷で血まみれになっていて善戦しているのはわかる。

 しかし動きが衰えるどころかすごいスピードで大刀を振り回している。

 タフな大猿だ。


「クガアアアアアアァァァァ!!」


 僕の付けた傷が痛むのか左利きのヤンジーガは右手で顔を押さえながら滅茶苦茶に大刀を地面に叩きつけている。


「おおーマジか!?」


 思わず声を漏らす。

 普段ぼんやりしてるマリースちゃんが横跳び、バク転、バク宙、側宙を繰り返して素早く刀を避けている!

 しかも無表情だから余裕な感じがして、なんかカッコイイ。


 そして手に持っているのは金の短い槍。

 金の棒じゃなかったっけ?

 大猿の足元に入ると槍を構える。

 すると槍が高速で伸びて緑の膝に突き刺さった。


 金を自在に操る魔法?

 それがマリースちゃんの魔法か。

 金は軟らかいから武器に向かなかったような。


 左利きの大猿の足は己の血で真っ赤に染まり所々血が噴き出している。

 ずっと足を狙っていたようだが全く動きを止められていない。


「ウグルアアアアアアアアアアアアアアアアア」

「ググガアアアアアアアアアアアアアアアアアア」


 2匹の大猿が大刀を掲げ同時に叫ぶ。

 不死身なのかよ、打たれ強すぎだろ!


 これ以上の攻撃は無意味と判断したのか?

 ミルミルとマリースちゃんは猿と距離をとって合流する。


 いや、ヤンジーガの様子が変だ。

 低い唸り声を上げたまま同時にボディビルのモスト・マスキュラーみたいなポージングを決めると。

 身体全体の筋肉量が倍に膨れ上がった。


 サ○ヤ人かよっっっ!

 スーパー化すんのかよっっっ!!

 あー猿繋がり的な?


「筋肉硬化に筋量増幅!?

 思った以上に強え魔剣だ!

 これ以上は2人では無理だっっ」

「すごく強いです」

「一匹ならなんとかなったかもしれんがな。

 このままシーワンまで走るぞ。

 さっき城が見えたからそんなに遠くはないはず…」

「お腹が空きました」


 構えを解いてマリースちゃんが腰のポーチから何かを取り出して口に運ぶ。


「ああーっそういや昼飯食ってなかったな!

 まだ戦えるか!?」


 フルフルと淡緑のポニーテールを揺らして首を振るマリース。


「無理っつっても戦うしかねえだろ!

 あの木にへばり付いてるヤツを喰うしかねえのか?」


 おう、ばれてるぅー。


 マリースちゃんの金の槍がこっちに伸びてきた。

 穂先が5本の指を広げた手の形に変化する。

 器用な魔法だなっ!


 感心してると首根っこを掴まれ木から引き剥がされた。

 そのままマリースちゃんの元へ。


 あっ待って。

 食べたらあかん、食べたら死ぬでー!


「弓、放て―っ!」

「身体がデカいだけのヤンジ―ガに4人もやられたってマジかよ!」

「”死肉喰らい”がっっ

 これでも喰らえ」


 盗賊の一団がわらわらと現われて2匹の大猿を取り囲んだ。

 同時に弓矢や岩や大木や鎖の付いた剣が飛び交う。


「なかなか統率の取れた山賊だな。

 だが俺たちに気づいてないみたいだ。

 チャンスだ走れっ!」


 ミルミルは武器を収めて、マリースちゃんは僕を金の棒にぶら下げたまま走り出す。


 いやいや、降ろしてくださいよ。

 可愛い顔してなかなか乱暴なお嬢さんだな!


「ちょちょっと待ってよ!

 置いていかないでよっっ」


 木の陰に隠れていたミサキが飛び出してきた。


「お前はここで隠れていろ!

 それより何か食いモン持ってないか!?」

「あ、お昼に食べようと思ったサンドイッチが…」

「死にたくなきゃ、

 それを寄こせっっ」

「やっぱアンタ山賊でしょ!?」


 ミサキのカバンから出されたそれをミルミルが奪う。

 走りながら包みをほどくとサンドイッチの一つを口に頬張り、残りを全てマリースちゃんに渡した。


「ちょっと私の分も残してよ!」

「だからついて来るなって!

 アイツらは俺たちを狙ってくるからここに残れ!!」

「一人になったらまた賊に襲われるじゃない!」

「うるせーっっ

 ヤンジ―ガに斬り殺されるよりまだマシだろ!」

「どっちもどっちよ!」


 ミルミルとミサキは走りながら口論をし、マリースちゃんは器用に走りながらサンドイッチを口に運んでいる。


 いやだからさぁ。


「僕は関係ないやん!

 降ろしてくれえええええっ」


 マリースちゃんは食べるのに夢中で無言。


「なんでこんなクソ色したイヌなんか気に入ったんだよ、マリー!」

「イヌじゃなくて獅子族だ!

 お前も猿の血を浴びてクソ色してんだろっっ

 ていうか僕は関係ないから降ろせえええっ!」

「今夜あたりアレが来るかもな。

 生き延びられたらの話しだけどな」

「知るかああああああああっ

 放せやああああああああああ!!」


 どんだけ暴れても首根っこをしっかり掴まれたまま金の棒にぶら下げられているからどうにもできない。


 ヤンジーガのいる場所から「ぐわっ!」とか「ぐえええ!」とか賊達の断末魔が響く。

 吊るされている僕だけ後方の様子を見ているワケだが。


 夕日に照らされた大猿が大刀を振るう度に人間の身体の一部が宙を舞う。

 その獣たちの周りに血の雨が降る。

 やがて人間の叫び声は消え失せていった。


「ウグルルルルルルルルルルルゥゥゥッッ!」

 

 血みどろの緑の大猿が大刀を口に咥えて猛スピードで追いかけてくる。

 徐々に距離を縮めてくる様子は。

 恐怖っっっめっちゃ怖いぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!


「ぐわあああああひゃあああああああああああああああっっ」

「うるせええ、クソイヌ!!」

「ちょマジでヤバいって!ちょマジでヤバいってえええ」


 右利きのヤンジーガが飛んだ。

 僕達の上を暗い影がよぎる。


「ひゃあああああああああああっ」

「止まれっ!」


 ミルミルの号令の下、皆が足を止める。

 僕は失禁をしていた。

 止めろと言われてももう止められない。


 僕らを飛び越えて前に降り立った大猿が振り向き、大刀を構える。


「ウグルアアアアアアアアアアアアアアアアア」

「ググガアアアアアアアアアアアアアアアアアア」


 大猿達が吠える。

 無数の矢が刺さりあちこちから血を吹き出しても戦う事を止めなかった。


「じゃ…じゃあ、

 2人とも頑張って!」


 ミサキはそそくさとその場を離れて藪の中に隠れて行った。


「頼むから…えぐっ…僕も…連れて行け…待てよぉ…ぐすっ

おおおん…許してえぇぇ…放してぇぇぇ…うわあああああああ」


 マジ泣きした。

 いじめられてもこんなに泣いた事はなかった。

 あの頃は気が張っていて泣き方すら忘れていた。

 今と昔、どっちがよりマシなんだろうな。

 今はゴミのような学校生活が懐かしくさえ感じる。


 マリースちゃんが僕を金の棒から降ろしてしっかり抱きしめた。


「いいこ、いいこ」


 頭を撫でてくれる。

 少女の小さな手は小さな身体の僕には大きく感じる。

 撫でられて気分が落ち着く。

 でも僕の身体の震えは止まらない。


 おおお、これは平和な日本を忌み嫌って異世界へと逃げた僕への罰なのか!?

 向こうの世界では社会不適合者。

 この世界ではただの弱者。

 それが僕なのか…


 マリースが手を開いて僕を解放する。

 急いで飛び降りて藪の中へ急ぐ。


 視線を感じて振り向くとマリースがこっちを見ていた。

 誰より曇ってどこまでも無垢な瞳。

 何を考えているか読み取れない無表情。


 人間なんかみんな死んじまえ、と思っていたのに。

 この少女だけは生きていて欲しいと思っている自分に少し戸惑っている。

 なんなんだ、この気持ち。


 でも、そんなに見つめられても僕には何もできない。

 大体2人ともそれなりに強いんだ。

 必ず死ぬとは限らないし。


 弱者な僕は逃げて逃げて。

 自分が生き残ればそれでいいんだ!


 僕は藪の中に逃げ込んだ。

「面白かった!」


「続きが気になる、読みたい!」


「つまらねえ!○ね!」


と思ったら

下にある☆☆☆☆☆から、作品への応援や不満をぶつけてください。

どんなご意見でも励みになります!


面白かったら星5つ、

つまらなかったら星1つ、

正直に感じた気持ちでもちろん大丈夫です!


ブックマークもいただけると本当にうれしいです。


何卒よろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろう 勝手にランキング
表紙

表紙

ダルマ


ダルマ

マリース

マリース

ミルミル

ミルミル

ミサキ

ミサキ

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ