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転生犬語 ~杖と剣の物語~  作者: 館主ひろぷぅ
2章 ゼイタ動乱 からラストへ
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06話 ゼイタ来襲

 ナイフを両手に持ちマリちゃんの元へ突っ込んでくるノラ。

 金の杖を構えるマリちゃん。


「おらぁっ!」


 ノラの進行を止めたのはミルミルだった。

 魔剣とナイフが擦れあう音が響く。


「やめろっ!

 これ以上お前とシラバ兵と事を構えるつもりはない。

 ここは退いてくれないか、ノラ!」

「このまま帰れるワケないだろう!

 言い分があるならお前が私と一緒に来てくれ、レイズ!」

「魔剣を背負った者の言い分なんて聞くヤツがいると思うか?」

「うう……お前、一体どうしちまったんだよぅ」


 ノラがしおらしくなっていく。


「なに?

 戦闘はもう終わりかしら」


 隠れていたミサキや里の人々が物陰から顔を出す。


「おー、マリちゃんの活躍で……

 ってマリちゃん?」


 マリちゃんはミルミルの腰に抱き着いた!


「おいおい勘弁してくれ!

 こんな時に甘えた病かよっ!!」


 とか言いつつ無理に引き剥がさず、逆に軽くその小さな身体を抱くミルミル。


「なにしてんだっ!

 このガキッッ」

「なんでノラがここでキレる!?」


 なにか収集つかなくなったところに。


 板木を打ち鳴らす音が響く!


「ゼイタの軍が動いた!

 こちらに来るっ大軍だぁぁ」


 東の台地が揺れて砂埃があがる。

 30人ほどの武装した集団が迫ってきた。


「言うほど大軍か?」

「アンタの言う大軍はどのくらいよ?」


 後ろからミサキに聞かれた。


「百とか千人とかじゃないか?」

「1つの城国で大体常駐兵千人が普通ね。

 こっちの戦力は二人しかいないんだから大軍でしょ」

「ミルミルとマリちゃんならズバババーっと」

「あのね、

 兵士になれる人はそれなりに魔力が高いのよ」


 そうか。

 この世界では魔法があるから少数精鋭が基本なのか。


「俺はそんなに強くねーよ」


 話が聞こえていたらしいミルミルが声をあげる。


「だから兵士とはぶつかりたくねぇんだ」

「ゼイタが鎖国した時に正規の兵士はみんな逃げた」


 ノラも割り込んできた。


「マジかよ?」

「おう。

 だからゼイタは今は野盗の治める国になっている」


 治まってる気がしないな!


「全軍止まれぇぇ」


 僕らの50メートル先で野盗の軍が足を止めると。


「カマル・エルブ!世界一・美しい!

 カマル・エルブ!世界一・美しい!

 カマル・エルブ!世界一・美しい!」


 武器と防具を打ち鳴らし声を揃えて叫び出した!

 なかなかの迫力、そして団結力!


「はいはい、ジャマ邪魔よーっ!」


 隊の真ん中から水棲猛獣サイガーがゼイタ兵を弾き飛ばしながら現れる。


 雑魚兵に同情を禁じ得ないな!


 サイガーの上には水色の首までタイツ(ラメ入り)と胸部アーマーの細マッチョ男が直立していた。

 鋼鉄の羽根を広げて。


 とんでもねえバランス感覚だな。


「あらぁ、トローカのみなさんごきげんよう。

 ゼイタの3鬼将、

 美神びじん、カマル=イーフー=チャン=ガンガ=エルブ将軍よ!

 朝から随分騒がしいわねぇ」


 あーごめん、見た目男で中身は女やったわー。

 なんかやけに唇が赤いし顔だけ美白してると思ったら化粧してるんやね。

 まつ毛もバッチリ長いし。

 先端に赤いメッシュを入れた長い金髪をサイドポニーにして可愛さアピールかな。

 左アゴに鉄板が貼り付いてる……のは関係ないか。

 なんだあれ、あそこだけサイボーグなんかな。

 ある部分の「もっこり」が「すっきり」に見える気がするわー。


「トローカの民よ聞きなさい!

 全ての食料と財産、そして女たちを提供しなさいっ。

 これはゼイタ王様の美しき命令よ!」

「拒んだらどうすんの?」


 僕の質問にカマルと名乗ったオカマは脇目もふらずに答える。


「いい質問だわ。

 美しく力づくで頂くだけよ!」

「ふん、王城国の食料を略奪できなかったからって。

 こんな小さな里を狙うほど城内の食料事情はひっ迫してるのね!」


 ミサキが冷たい目で笑う。


「聞こえたわよ、異国の服の女!

 赤い旗の馬車を狙ったのは私の命令じゃないわよ、美しくない!

 手下ども、あの女も引っ捉えて王に捧げるのよ!」


 睨み合うミサキとカマル。


「カマル様。

 今年は私どもトローカの里は高い年貢を納めてます。

 それにパサの供給もしています。

 その上略奪までされては生活できません」


 里長が進み出て訴える。

 里の人々も「そーだ、そーだ」と声をあげる。


「里長か。

 だまらっしゃい!

 小汚い下賤の里が、美しいこの私に歯向かうんじゃないわよっ」


 高い声でオカマ将軍はキャンキャン叫ぶ。


 そこへ。


「久しぶりだな!

 このオカマ野郎っ」


 ミルミルが魔剣を振り回し進み出た。

 抱き着いたマリちゃんを引きずったまま。


「オカマじゃないわよ、美神、び・じ・んよ!

 ……あら、そこにいる子供は……

 まさか、 まさかまさかまさかまさかまさか

 まさかあああああああああっっ!!」


 オカマ将軍は左頬を押さえてワナワナと震え出した。


 マリちゃんが抱き着くのをやめて金の杖を構える。

 

 僕はマリちゃんに近づき胸の前のカバンにすっぽり入る。


「ねえ、知ってる人なの?」

「はい、

 ずうっと前に襲ってきて、ミルミルちゃんをボロボロにしました」

「そんで自分より美しいから気に入らないって、

 マリーを殴ったヤツだ!」


 ミルミルがマリちゃんの言葉を継ぐ。


「なんだってえええ!」


 僕は怒りで吠えた。

 マリちゃんを殴るヤツは7回殺してもまだ足りないっ!


「そのガキは私の美しき顔を醜くした憎いヤツ!

 金色に光ったその姿は私より美しかったわっっ。

 それに気をとられうっかり落とした刀で私のアゴが、アゴが……

 ひぃぃぃぃっっ、アゴがチクチク痛むのぉぉぉぉ!!」


 記憶と一緒に痛みまでフラッシュバックしたらしい。

 ざまぁぁぁぁぁ!


「確か2回目のシルトの話だったよな」

「?」


 ミルミルが頷き、マリちゃんは首を傾げる。


 マリちゃんを殴って気絶させたからシルトが発動。

 自業自得、やっぱりざまぁぁぁぁぁ!


 気絶していたから本人にシルト発動の記憶は無い。


「私の手下ども!

 お前たちはトローカを襲いなさい。

 多く略奪した者にはパサルーのボーナスをはずむわ!」


 ゼイタの雑魚兵たちは、おおっ と色めき立つ。


「私は、卑しい獣人と白いガキを叩く!

 かかれーっ!」


 ゼイタ兵が走り出し、空中を色々な武器が飛んでいく。


 里の人々は逃げない。

 彼らの前に土の壁と藁の壁が盛り上がり兵の侵入を拒む。

 ふむ、里長は建築魔法の持ち主だったか。


「いくわっ、いくわよ!」


 サイガーの上のオカマ将軍の鋼鉄の羽が広がる。

 いや、羽根じゃない!

 あれは剣を金具で並列につないだモノ。

 

美神連環剣びじんれんかんけん

 この剣から逃れた者はいないわ、オーホッホッ!」

「オカマの狙いはマリー、お前だ。

 今度はお前が逃げ回れ!

 俺がヤツの隙を突く」

「はいっ」


 カマルはただのオカマではなかった。

 連環剣は蛇のようにうねりながら攻撃を繰り出す。

 その速度と攻撃力は想像以上に強力だった。

 マリちゃんは金の盾で防ぐで精一杯。

 そして攻撃される度に上体を崩される。


 それでいてカマルはサイガーの上で腕組みして立っているだけ。

 余裕で見下す顔にイラッとくる。


「マリちゃん、

 アンカーを逃げる方に遠くに出して。

 攻撃を防いだらアンカーを使ってワイヤーアクション!」

「はいっ」


「チョロチョロと逃げ回って小賢しいガキね!

 そしてお前も鬱陶しい、小汚い獣人のメス!!」

「テメーみてえなダサいオカマに言われたくねえな!」


 襲い掛かる雑魚兵を斬り倒すミルミル。

 しかし連環剣の片翼の攻撃に防戦一方だった。


「汝、剣が大振りだと何度言えばわかる」

「うるせー、黙ってろ!

 魔剣のオッサン」


「うっ、確かにいやらしい気があると思ったら魔剣だったのね、汚らわしいっ。

 なんて美しくないのっ!!

 近づかないでちょうだいっっっ、もうっ」


 あのオカマは戦いながらよく喋るヤツだな、と思っていると。

 マリちゃんも口を開く。


「ダルマちゃん大変です」

「なに? どうしたの」

「お腹が減りました」

「マジですか……」

「マジですよ」


 それはチョーやばい状況だ!


「隊長、

 今が好機です。

 あの魔剣の女を倒しましょう!」


 シラバの女兵士たちがノラに詰め寄る。

 気絶していた「竹子」も復活していた。


「うーん、でもなぁ……」

「ノラッ!

 昔のよしみで頼む。

 この里を守ってくれっ!!」


 しかめっ面で状況を静観していたノラの目が輝く。


「うほほっ!

 あの意地っ張りレイズがアタシに頼み事なんて!」

「隊長?」

「武器が使える者はゼイタの兵を攻撃しろ!

 突撃ーっ!!」


 ノラが嬉々として一人飛び出していく。

 他の兵はぽかんと口を開けてそれを見送った後。


「あの隊長はダメだわ」


 と口々に呟くと撤収作業を始めた。

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