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転生犬語 ~杖と剣の物語~  作者: 館主ひろぷぅ
1章 義姉妹の誓い
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02話 転生したら獅子族でした

本編の始まりです。

 やあ、僕は獅子族である。

 名前はまだ無いねん。


 今、山の中を駆けている。

 洗練された小さな体と4本の足で。


「ハァ、ハァッ、待ち、なさいよ、このイヌ!

 私が、ハァッ、あなたの、ご主人、様なんだから!

 あーっ、この靴うっとおしい!!」


 一緒に並走していた派手なドレスを着たお姉さんが高いヒールのブーツを脱ぎ出す。


 美しいストレートの金色と金の瞳。

 白いお顔は吊りあがった勝気な眼をしているがなかなかの美人だ。

 だが。

 壊滅的に服の趣味が悪い。


挿絵(By みてみん)


 目に痛いほどの赤と七色の布のドレス。

 この木々深い山の中で。

 動物たちとダンスパーティーでも開くつもりかよ。


「僕はイヌじゃない、獅子族や」

「うるさい!

 イヌのクセに喋るな気持ち悪いっっ」


 脱いだブーツが飛んでくる。

 僕は華麗によける。

 この身体、敏捷性には優れている。

 体長が40センチぐらいしかないけどな。


 ちなみにこっちの世界の人間と普通に喋れるのは召喚術士マスターと会話をしてこの世界の言葉を覚えた。

 英語のテストはいつも赤点ギリギリだったけど。

 知らない言語を覚えるのは会話をする、これ大事。


「大体、お前を召喚紙で呼んだからこうなったんじゃないのっ。

 派手に光って煙が噴き出して!

 山賊に見つかるのは当たり前じゃない!!」

「知るかぼけー」


 もう片方のブーツも飛んできたので、再び華麗に宙返りしてよける。

 ショウカンシ?

 

 僕も日本で気絶して。

 気が付いたら森の中で腰を抜かした金髪姉さんの白いパンツを見上げてたんや。


 赤い派手なドレスでパンツがシルクの白って。

 この女の評価がちょっと上がったわ。


「待てよーおねーちゃん、オレ達と遊ぼうぜー」

「こんな山中で派手な服着てよぉ、

 オレ達を誘ってるんだろー?」

「朝まで踊り明かそうぜーウヒヒヒヒ!」


 80年代J‐POPかよ!

 そしてまだ昼間だぞ、精力絶倫だな!


 武装した汚いおっさん3人が追い付いてきた。 

 チェーンメールに手甲をいっぱいぶら下げた者や上半身だけプレートアーマーの者や腰だけ武装してる者。

 装備にまとまりがなくヒゲも鼻毛も伸ばし放題の絵に描いたような賊。


 僕達はこの世紀末野郎共から逃げている途中。


 帯刀が許されるような無法と暴力の世界なのかよ。

 そんな話聞いてないぞおおおぉぉぉっ!


 召喚術士に生まれ変わりたいっ!と願ったのは、こんな世界じゃねえ!!


 今の僕の気持ちを言葉にするなら。

 美しいキービジュアルばっかり観せられて。

 素敵なハイファンタジーの冒険が待ってる、と思わせて。

 いざゲームをスタートさせたらゾンビを素手でぶん殴って行くクソゲーだった、みたいな裏切られた感。


 これだから他人は信用できない。

 人間なんてどの世界でも全て滅びればええねん!


「奴らが来たっ!

 アンタ召喚獣だからあんなの頭から食ったりできるんでしょっ」

「無茶言うなや。

 この小さい身体で何ができるねん、アホか」

「獅子族とかって言ってたじゃない!」

「いやいや、この身体に生まれ変わる前は普通の一般市民の人間やで。」

「はぁ?」

「戦うとかそんなんした事ないで」

「意味が分からないわよ、

 この役立たず!

 ていうか何で訛ってんのよっ!

 駄犬!!」


 今度は石が飛んできた。

 華麗に回避。


「じゃあとっとと逃げるわよ!」

「おう、がんばれよ」

「はっっ???」


 さっきから間抜けた顔で驚くからせっかくの美人が台無し。


「あの男どもの狙いはお姉さんやん?

 僕は関係ないし。

 ほな、短い付き合いやったけどここでお別れやー」

「は、薄情者ーっっ!

 召喚してやったのは私よ。

 つまり主人は私で私の言うことを聞…」

「はよ逃げな、追いつかれるで」


 細い眉をキッとあげてにらむと女はダッシュした。


 そう言われましてもですね。

 どう考えても僕は関係ないやん。

 派手に光と煙が出たのは僕のせいじゃないし。

 恨むなら召喚術士を恨んでください。


 賊が近くなったので僕は草むらに逃げ込む。


 うん。

 逃げ込んだのが草むらだったのが悪かったのかなー。

 カサカサと音を出して走ったのが悪いんやけど。


 賊は僕の後をつけてきた。


 いやいやいや、おかしい。

 動物と遊ぶのが趣味の愛好家には見えへんねんけど。


 賊だからアホなのか、アホだから賊なのか。

 あんな派手な赤のドレスの女を見失ってんじゃねえよ、ぼけぇぇぇぇぇっっ!


 まだ四足歩行に慣れてないから速度が出ない。

 すぐ草の根にひっかかる。

 このまま追いつかれても面倒な事になりそう。


 僕は目の前の岩の上に飛び上がると後ろを振り返る。

 賊の遥か後ろにソロリソロリと山の斜面を上がって行く赤いドレスが見えた。

 その背中にドレスには全然似合っていない革のバッグを背負っている。


「お兄さんがた、お兄さんがた。

 探し物はあちらですよー」

「ゲッ!

 なんだこれ、イヌが喋った!!」

「キモチわるっ!

 妖怪の類じゃねえか!?」

「ゲハハハ、この妖怪の言う通りっ!

 女はあっちにいましたぜっ!!」


 キモチ悪いのは小汚くて臭いお前らの方だよ、クズ人間どもが!


「おおーっお姉ちゃん、

 俺たちから逃げれると思ってんのかーグフフフフ」


 男達は反転して子供のように大はしゃぎで駆けていく。

 持て余す性欲の前では小さな妖怪はどうでもいいらしい。

 さて逃げるとするか。


「行けっ!

 ゴッドハンドッッ!!」


 手甲ぶら下げ男が叫ぶと。

 鎖の付いた手甲の一つが女目掛けて飛んでいき足を掴んだ。

 転ぶ赤いドレス。

 斜面を無様にずり落ちる。


 この世界の魔法の事は召喚術士から聞いていた。


 えーっと、動物はみなバリアの魔法を持って。

 人間は一人に一種類だけ無機物を操る魔法を持つ。


 この世界の人間みんな魔法使い。


 ただし身体にモノが触れてないと発動出来ない。

 それは間接的でもいいわけで。

 手甲男は身体につないだ鎖で魔力を送って手甲を自由に操れる。

 

 魔法は血筋や生い立ち、育った環境などで得意な魔法が個々で変わるねん。


 つまり。

 あのオッサンの手甲を操れるようになった経緯があるわけで。

 多分手癖が悪いとかそんなとこだろう。 


 あ。

 もしかしたら僕も魔法使えるんじゃね?


 だって転生者だよ。

 キレッキレの超超特大魔法とか出せるで、きっと!


「メニューオープン」


 って呟くとレベルやらスキルやら必殺技やら書かれたパネルが開いて…


 …出ない。


「出でよ、獅子族の血に秘めたる神々をも打ち砕く大いなる野望の力よ!」


 …出ない!


「エクスペクト(略)」


 …出ないぃっ。


 召喚術士ぁぁぁぁぁぁっ!!魔法の使い方教えておいてくれよぉぉぉぉ!!!

 聞くのを忘れた僕もアホだけどぉぉぉぉぉぉぉっ。

 くそがああああああああああああああああああっっっ!!!


 そうこうしてるうち、赤いドレスのお姉さんがたくさんの手甲で羽交い絞めにされてた。


「お願いです、お金ならありますっ!

 遊ぶのにこまらない程のお金があります!

 他にも色々あります、全部差し上げますから乱暴はしないでください!

 私は街をでたばかりでまだ右も左もわからなくて、

 やっとチャンスを掴んで出てきたただの世間知らずの女なんです!

 損は、損はさせません、ここは穏便に見逃してください!!」


 お、あのお姉さん気が強いところあるやん。

 普通なら混乱して泣き叫ぶだけだと思うけど。

 賊を説得しようと試みている。


 そんな事はおかまいなく男の一人がお姉さんに近づき。

 赤いドレスに触れると十文字に布が裂けてお姉さんは一気に下着姿となる。


 うわあ、なんて趣味の良い魔法。

 どんな生い立ちで身に着けた魔法か気になるわー。


 残った男の一人が魔法で枯れ葉で囲いを作っている。


 あの男には生い立ちよりもその魔法が何の役に立つのか問い正したい。

 周りから見られないように囲いを作ったけど斜面の正面のここからはまる見えですよ。


「いやよっっ

 私はこんなところで朽ち果てないっ!

 全ての商人をおしのけて私はっ私はっっ!!

 女王として君臨してやるのよっっっ」


 女王ときましたか。

 気高く美しい夢ですね。


 美しい夢も気高い自尊心も他人は易々と踏みにじるんですよ。

 人間なんてゴミでクソ。

 魔法が使える世界でもそれは同じ。


 僕は岩の上で腰を下ろす。

 おおっこの身体、香箱座りができる!

 

 ここでゆっくりあの女が壊されて殺される姿を観ていこうか。


 転生したけど現実感があまり無い。

 ゲームでイベントが発生した時のムービーをただ観せられている感じ。

 ムービー作るならもっとカメラを寄せてアップで録った方がいいね。


 どうせ安っぽい正義感を振りかざして助けにいったところで。

 こっちが踏み潰されるだけ。

 圧倒的無力!

 

 そういえば。

 転生したって事は僕は一度死んだのかな。


「いやあああああああっっっ」


 お姉さんはなおも抵抗して暴れる。

 男のシャツを掴むと破らんばかりに引っ張って。

 それを3人の男が抑え込んで。

 女の下着に手をかけて、空いた手で自分のズボンを下ろそうと頑張っている。


 あはははー。

 やれやれー。


 僕は最低のクソみたいな存在。

 殺人者にさえなれなかった人間の成れの果て。

 この狂行が終わり女が殺されたら少しの後悔に苛まれるだろう。

 でもただそれだけ。

 その後ものうのうと生き続けるだろう。


 そう、僕は大事な何かを失いぶっ壊れた存在。

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