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ひまりサンルーム②

 テーブルに置いた黄色い表紙の真ん中には味気のないフォントでシンプルに『フラジャイルメモリー』と書いてある

 今まで長時間持っていた為か私の指の跡で表紙の下の一部分だけはへこんでいた


 2週間前に台本を渡されてから劇が始まる今の今まで 同じシーンだけを何回も何回も捲り 今では咄嗟に台本を開けばその台詞のあるページに辿り着く


『想い出と引き換でも貴方を救えて良かった』


 2人が結ばれようとする物語の終盤でアンドロイドのマリーがヨータの身代わりに死んでいくシーン



 想い出と引き換えでも……



「ひまり 緊張してんのか? 」


 上から優しい私の好きな声音が降ってくる

 振り返り見上げると温かい私の好きな手で頭を撫でてくる


「俺も緊張してるし大丈夫だよ。もうそろそろ舞台袖まで行くぞ 」



 思わず先に出ていこうとする陽太君の裾を掴んだ

 一瞬だけ驚いた顔をしてから 微笑んで手を差し伸べてくる


「手 繋いで行くか おいで」


 戦略的撤退と言う都合の良い逃げで陽太君を振り回したのに いつも優しくて 私の扱い方もどんどん上手くなっているのが何か悔しい

 普段はバカで訳の分からない事ばかり言ったりしてる陽太君なのに


 初めて会った時から肝心な時は私の心を見透かした様に、欲しい言葉をくれたり 守ってくれて私のヒーローなんだ

 だから、だから私が主人公ヒロイン何じゃないか? って勘違いしちゃうのも仕方ないよね



 陽太くんとしゃがみ込み、舞台袖から隠れて会場を見渡すと、脚本を書いた大地君とあかりが並んで座っていた

 握る陽太くんの手に力を込めたけど あかりの顔は見れない


 そのまま待機していると開幕を告げるアナウンスが流れる


「怖い」

「ひまり? 」

「抱き締めてキスして」

「え? 」


 陽太くんを引っ張る様に立ち上がる

 とことん自分のクズさに呆れてしまう


「抱き締めてキスしてくれたら頑張れる」

「いや だって ここで? 」


 焦るのも無理ないよね クラスメイトも近くにいるし


「早くしないと会場がざわつき始めちゃうよ」


 陽太くんは周りを気にする素振りしてから 素早く私の前髪を上げるとおでこにキスしてくれてから 私を抱き寄せた


「こ これで良いか? 」

「う~ん 物足りないかな」


 少し背伸びして陽太くんの唇に重ねる

 そんなに固まっちゃって、気付いてないよね?

 キスする時はいつも私からアクション起こしてる事を


 初めて時のも花火大会の時も修学旅行の時も


 あかりの気持ちを知りながら 陽太くんの過去の気持ちを知りながら

 キスを何回もしてしまう私は


アンドロイドになりたいのに なりきれない自分勝手で醜い女の子


「ひまり……」

「これで頑張れる。ほら、最初は陽太くんの出番だよ」

「あ あぁ 行ってくる」


 大丈夫かな? キョトン顔のまま舞台に出ていっちゃったけど


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