アンとサリアと石
庭に出ると、たくさんの洗濯物が風になびいていた。
一昨日から昨日にかけて雨が降り続いていた事もあって、今日は特に洗濯物が多くあった。
明方干す時は当番のサリアと2人では無理だと判断したシスターのはからいで、ナタリーとシルビアも手伝ってくれたのだ。
もし2人でやれと言われていたら、洗濯場から持ってくるのにいったい何往復することになっただろう。
考えるだけで、怖い。
「私、こっちから。アンはそこからね。」
アンジェリカが頷くと、あとは黙々と2人とも洗濯を籠へと入れていく。
洗濯物を入れるためにとはじめに定期的に籠を配置し、そこへ洗濯物を入れていく。
そうして数分の後に、風になびいていた洗濯物は籠へと綺麗に収められた。
1つ1つ籠をかかえ、庭から1番近い部屋へと閉まっていく。
ふわふわの洗濯物にアンジェリカの心は達成感に包まれた。
両手で抱えるほどの大きさの籠を抱え、サリアとアンジェリカは部屋へと向かう。
置いてはまた取りに行き、そしてまた部屋へ置きにゆく。
乗せられたふわふわの洗濯物は重量はそこまででもないが、前が見えにくい。
何年もこの作業をしているサリアとアンジェリカにとっては大した障害にはならないが、2人は忘れていたのだ。
今日は慰問に来た人物が2人いたこと。
花は庭の畑で育てていること。
そして、顔の整った訪問者にナタリーとシルビアが舞い上がってしまっていた事を。
「アン!洗濯物ー!!」
最後の1つを持ち、部屋に向かっていたアンジェリカは突如として額に衝撃を受けた。
グラグラと世界が周る。
太陽の光を見ながら、アンジェリカは眩しさに目を閉じた。
「.......動かして.......タオルと.......日陰で.......」
「アン.......いま.......」
サリアが誰かと話をしている。
アンジェリカがゆっくりと目を開くと、眩しさに手を目を覆うように上げるが手の隙間から日差しがもれてこない。
当たりを見回すと、どうやら木陰へと移動しているようだ。
「ごめんなさい。まさか避けた石が当たるなんて」
ナタリーが涙している。
「ほら、ナタリー。シスター呼びに行かなくちゃ。」
シルビアもまたアンジェリカに、ごめんなさいね。と告げながらナタリーと教会へ向かっていく。
「.......サリア」
「彼女ならタオルと水を取りに行っているよ。」
「.......そう。ありがとう」
感謝を伝えながら、介抱していてくれたであろう人物へと向きなおり深くお辞儀する。
「怪我をしているから、頭を下げない方がいいよ。」
その言葉に、先程から痛む額へとアンジェリカは手を伸ばした。