決断は英断か
「俺は親父とおふくろにうんざりしていたんですよ。存在価値も否定されていたこともあったんでね。それでも俺を慕ってくれている執事はいるから頼ったら此処までこれたんですよ。阿久津さん。」
「君は何処までわかっている?俺の隣にいたときから探っていたのだろうから。」
阿久津の何処かには拳銃をもっていていることを知っているので恐れることはない。俺は少しは探ることなくてもいいと思った。
「鬼塚恵美子が恋人だったこと。小峠剛について調べていたこと。まぁ、ざっくりといえば大体わかってますよ。動機もわかっているのですよ。」
「恵美子はマスコミ志望だったから最初の仕事をもらった時は嬉しそうにしていたよ。」
寂しそうに告げる口は懺悔にも似た声であった。阿久津は以前の上司だとしていた人ではなく、恋人を失った男性のようだ。たぶん、うすうす気づいていたのを放置してしまったのだろう。マスコミ志望であったため、バイトでもいいからといって探していたのだ。
「それが小峠剛の件じゃなかった。小峠剛はどちらかといえば添え物ような存在だった。もともとの本題を抜けてしまったんだよ。それは次いでと思って探っていたらむしろそっちのほうが大きいものだったことを知ったんだ。」
「上司に言ったんですか?」
「言ったんだが、相手にしてもらえなかったらしい。政治家の先生たちに金で買われていて特に小峠はよく出していたんだ。上も下手に逆らうことを選ばなかった。だけど、正義感で恵美子は動いた。可笑しいって言っていたから。食い下がるのは可笑しいって。」
バイトでも雇ってもらえた会社に頼らず、きっと内容を買ってくれる会社が現れることをわかっていたのだ。口先だけの正義感では誰も救うことはできない。だから、動いた。自分のことより真実に逆らうことはできないのだと。嘘と言い訳で戦う連中にはわかりえないものだと奮闘した。それゆえの罰だったのか。仇だったのだろうか。
「それで復讐ですか。かかわった黄劉会のメンバーと小峠に対して・・・。」
「ご名答だよ。長年、抱えてきた、練って来たんだから誰にもわかるはずがないと思ってね。でも、ばれてしまったのはしょうがないとはすまない。」
「でしょうね。会社が横領を起こしたことが分かって、影に隠れることができるんですから。事件は隠れなくても・・・。」
木は森へ隠すといわれるほどだ。会社員で過去の履歴がわからなければきっとたどり着くこともままならない。




