人は見た目で判断は不可
俺は受付で数日分を追加でお金を払った。店員は作業のように受け取った。俺のもっている服では奥村や西條の目を欺くことは不可能だと思った。俺は漫画カフェを抜けて、商店街を通らず、路地へと入っていた。大通りへと続く道が分かれば、大きな分け目のないブランドが現れる。そう思ってとぼとぼと歩いた。スニーカーには何処かで擦れたのか黒っぽくなっている。防犯カメラは日々進化をしているが、最新のものは高価なので手を出すかは店の勝手としか言えない。俺は目についた安価なブランドの店に入った。そこで顔を隠せるパーカーを探した。黒のパーカーを見つけた。サイズを確認して一応の安全策としてキャップを見た。気に入るとか関係ないので安く売っていたものを手に取ってレジへと向かった。会計を淡々と済ませた。すぐに着たいといえばすぐにタグを切ってくれる。印象も薄いだろう。大きなことは起きていないのだから。俺は店を出るなり、パーカーをかぶり、その上からキャップをかぶった。不自然なほど若者のようになっているのだが、多くは残らない。日が経つほどだ。阿久津は黄劉会にいながら黄劉会に反撃をするときを待っていたはずだ。それを他人に見せかけて・・・。鬼塚恵美子はきっと小峠によって殺されたことを知ったのは何処から漏れたのだろう。隙がありすぎたのだろう。鬼塚恵美子を彼女だと紹介などしなかったはずだ。嘘でも人質になることが目に見えているのにその方向に向かおうとするのがおかしい。俺は路地をたどって行った。目的地はわかっているから・・・。点々としている風に見せるのもうでなのだ。俺がついたときには思っていた人物がすっと立っていた。
「あんたは黄劉会の人間だって会社で言わなかったのはどうしてですか?」
聞きなれた声が聞こえたことに驚いたのかゆっくりと振り返った。阿久津はもっと話しやすい場所で話そうといって鬼塚恵美子が殺されたビルへと入っていた。階段しかない古びたビルだ。あの事件があったために、買い取りをする人も見つからなかったのだろう。時代に取り残されたように居座っている。ついた場所は殺された場所なのだろう。少し距離を置いたところに俺はたった。
「俺が黄劉会にいることを知った?」
「俺の家柄なんぞ気にしなかったでしょう。苗字についてぴんと来なかったですか?」
「久世はあの久世なのか?」
驚きを隠せないような表情を見せている。俺のことは普通の奴だと思って付き合っていたのだ。それが俺の望みだったのだから正解だ。初めて明かすことになるだろう。何故、久世グループの御曹司であることを隠したのか。そして跡継ぎとして生きなかったのかをこの人に伝えることになるのだと決意した。




