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人の人生には坂も下り坂もあるとよく言っている。丘も谷もあっても嘆くのはいけないのか。俺は最後の夜のように思いながらいる。進まない時間とにらめっこしているのだ。何処かで時間が止まればきっとこんな悩むほどの決断もない。数多と一緒にいただろう。俺はむなしくもあった心を思ってしまった。ダメだと言い聞かせても・・・。あきれた顔をしているのかもしれない。ありったけの熱意もあった会社にいたわけでもない。決意をしたのは事件を解決することだけだ。奥村の顔も浮かぶ。あいつは正義感もあるが、それだけで暑苦しいわけでもない。やさしさがにじみ出ている。それは久世の学校に行っただけでは得られなかった何かをつかんでいるからだ。緑谷がなりたいといっていたのを聞いていたのだ。それだけでなったわけではないのがわかっている。不器用に生きているのだと思う。漫画を見て誇りに思うこともなかった。いいなぁと思うだけでいいのだろうからと。
「俺はいったい何に追われているんだろうな。間違った生き方なんてした覚えがない。」
ドアがノックされた音がした。ドアを開けると店員が立っていた。
「貴方と同じ部屋でもいいからといわれたのですが・・・。異例なんですが相部屋を許可してくれませんかね?」
「いいですよ。俺、1人は広すぎる部屋なので・・・。」
俺は相部屋にすることで俺がかえって来なくても疑問に思わないだろうと思った。店員ももっぱら人間観察をしているわけでもない。小さな事件をして理解するものなのだ。入って来た人は若い男性だった。好青年で入る時も一礼している。
「いいのか?俺みたいの人間と一緒の部屋で・・・。」
「構いません。それにお金なんてないんです。大学も有名どころを出たんですけど、就活に失敗して・・・。それでやる気もなくして。親に反感を買ってまで出てきた意味があったのかなって。」
大学を出たばかりなのだろう。だから、此処にいても払える値段じゃなかったため、相部屋にしてくれる部屋を探したのだろう。バイトもきっとこれからだろう。
「人ってのはまっすぐの道じゃあ飽きるだろう。そのための困難を与えたんだと思うよ。俺も本当はこんな暮らしをするつもりじゃなかったとか思ったこと、あったから。」
「そうなんですね。」
「此処に泊まるのなら数日分くらいは追加で払っていても構わないよ。」
苦笑いを浮かべて一礼をした。彼は大学での経験を話した。俺が元経理で大手の会社にいたことを知ったから面接にはと問うのだ。人事の担当じゃないと断ってもいわれたのだ。




