ボールペンで描く
此処の探偵事務所は警察以上の実績をもっていることを確信した。影の木なんて変わった名前にするほかなかったのかと思った。先ほどいなくなった女性が椅子をもっていた。
「立っていてはつらいでしょう。座ってください。」
「お気遣いなく。俺はわかったら帰りますから。」
抱えてきた椅子はパイプ椅子ではなく、キャスターのついた椅子であった。重かったのは確かなのだろう。ゼイゼイといっていた。彼女は俺をどう思っているのだろうか。突然、探偵事務所に入ってきて特に相談することなく、事件のことを調べていると聞いたから資料を見せてほしいというのは可笑しいのだろうから。
「貴方はどうして鬼塚恵美子について調べるんです。過去の事件だといって警視庁も相手にしなかった事件を。」
「俺は刑事でもない。ただの会社員です。でも、今回起こっている爆破事件と関連している気がしてならなくて・・・。探すにも手もなくて来たわけです。」
俺は淡々と告げた。俺は資料の中からやはり疑いを持ったのは阿久津だった。阿久津は黄劉会では重要な存在であるのは変わりない。幹部候補で別の会社にいることがそうだ。黄劉会は伊達に扱えない暴力団にも拘わらず警察内部にも関係者がいるのではと疑いを持つ人が存在するほどの力を持ち合わせている。俺は今、動くしかない。その時だった。聞き覚えのある声が薄い壁を伝って聞こえてきた。
「警視庁捜査一課の奥村といいます。」
「同じく西條です。」
所長と顔見知りなのだろうか、談話をしているのに近かった。いなくなった人を探しているのだといった。その人は爆破事件を追っていてたぶん犯人を知っているから内密にお願いしていたいといっていた。
「それはどんな人ですか?」
「久世刹那って言います。久世グループの御曹司なんですが、彼、親父やおふくろのことが嫌いなんで言わないと思います。あいつは弟がいるんです。・・・死ぬつもりなんです。見つけたらお願いします。いってください。」
「わかった。伝えるよ。写真をくれないかな?」
西條からなのだろうか奥村の手からなのだろうかわからないが、写真が伝わった。奥村と西條はいなくなった。俺の顔もばれているだろう。たぶん、彼女にも伝わったのだろう。壁からは資料室にいる男と顔が似ているとぶつぶつといっている。呼び出せとまで言っている。所長はあまりしゃべらない。見守っているような人なのだろう。奥村と西條が動き出した。数多が言ったのだろう。きっと、ノートも見られたのかもしれない。書き換えることを選ばないこともいいではないかと。




