調べもの
阿久津の恋人は自殺とされていた。警察がそう処理を行ったのだ。新聞などで阿久津は自殺ではないと言い張ったと書かれていた。さも、自殺に見せかけられる技をもっているのは幹部しかいないのを知っているから抗ったのだろう。幹部候補を育てながら人質を取るといっていたのを聞いた。阿久津の恋人の名前は鬼塚恵美子といった。確か、ネットカフェの近くに探偵事務所があるのを地図で見た。俺は鞄に詰め込んだ服を取り出して着替えた。こぎれいな恰好をしているだけだ。俺は探偵事務所について調べるために印刷会社へと向かった。店に入ると笑顔で受付をしている人が笑った。
「あのー、探偵事務所って何処にありますか?」
「あぁ、影の木探偵事務所のことですか。よく聞かれるんですよ。会社にはお世話になっているので・・・。」
「どうしてですか?」
「建前だけだけど、名刺の印刷とかを頼まれているからですよ。所長とも顔見知りで何時も困り事が起こると飛び出してきてくれるいい人達だよ。・・・だいぶん前の話だけどある事件を調べようとしたみたいだよ。」
事件を調べようとした痕跡がある。影の木探偵事務所の道を教えてくれた。きっと、暇ではないはずだ。周りに慕われているのだから、それなのに調べようとしたのだ。俺は教えられた狭い路地の中へと入って行った。そこにでかでかと目立つ字が書かれていた。何故、影の木なんだと思いながら・・・。鉄の階段をかんかんと鳴らした。木で作られた扉を開けた。
「どうされましたか?」
「いや・・・。」
勢いにけおされてしまった。騒がしい小学生のクラスに飛び込まされたような気持ちにもなるのだ。容易な応接室へと案内された。作り笑顔じゃないのはわかるくらいだ。客が少ないのだろうから。
「それで!どうされましたか?」
「やめないか。此処で笑顔を振りまける内容かどうかなんかお前にわからないだろう。」
「ごめんなさい・・・。」
すねたようなしょんぼりしたような顔を見せた。俺は本題へどう誘導できるかを探るしかない。以前、俺は人事に向いているといわれたときがあった。嘘を見抜ける力くらいある。だが、プロとして活躍している人間相手に対等にやって乗っけることができるのだろうか・・・。
「あのー、さっきの印刷会社で聞いたんですけど・・・。事件を調べたことがあるんですね。」
「はい。鬼塚恵美子っていう人が亡くなった事件があったじゃないですか。阿久津とかいう人があれは自殺じゃないって言われてきたので少し調べたんですよ。所長は元刑事なんで知り合いもいるので。」




