築いた道は崖
上司であったことですら嫌気が差す。今のご時勢、プライバシーの保護とか言っておきながらないも同然の社会だ。検察が礼状なしで個人情報を扱うのだ。あれほど会社等には散々蹴散らして置きながら最後は権力を使った暴力だ。保護をするなどといっておきながらしないのだろうか。事件の解決のためという言い訳を使っているのを通用させているのはいったい・・・。あきれるようなことを繰り返される。それはあまりにも簡単に行われすぎている。長と名乗っているだけに過ぎない人間が権力におぼれ、うぬぼれ、傲慢になるのが決まりのように存在しているのだ。無関心を引き寄せた原因はまったく自覚を持つことなく、口先でえらそうに訴えるだけだ。変わらないときの流れに抗っていく人間が少ないのだ。ため息をつくたびに時間が過ぎていく。なんて、くだらない瞑想にでも陥っていたのだろう。いつの間にか寝ていた。狭いと感じていたはずの場所が心地よいと思ってしまえるほど・・・。ネットはついたままだ。阿久津の恋人は普通の会社員だった。マスコミ志望だったらしく、死ぬ間際もマスコミ関連の会社に面接などをしてバイトでもいいから雇ってもらうつもりだったというのだ。有名なテレビ局に非正規だが、決まっていたと書かれていた。彼女が友達にでも漏らしたのだろう。詳しいいきさつまでとはいわないが近いものがあった。
「マスコミ志望ね・・・。マスコミ志望と暴力団の幹部候補。」
「何だ。また、調べ物かい?」
「まぁ、新しい会社は決まっても有給の消化だったりして暇なんですよ。」
土木のいたずらをするような子供の笑顔で俺のパソコンを覗き込んだ。なぜ、俺が、阿久津という人間を調べているのかなんて知らないだろう。
「昨日の晩、浪人と話したってな。あいつは親不孝じゃあないのに、親不孝って言うレッテルを貼ってここにいるんだ。かわいそうだぜ。」
「金持ちの家庭は、狭い世界しか見えていないのかわからないですけど、その大学じゃなきゃだめはエゴなんですよ。やりがいを奪ってまでほしいものなのかなって聞いていて思ったんです。」
「今のあいつはやりがいしかないからな。いいところの坊ちゃんだと聞いたときは驚いたんだぜ。なぜ、ここにいるってな。」
彼は自分の個室で寝ているらしい。今日は予備校は休みだが、バイトがあるため体力をためているのだろう。
「意地があるってものはいいもんだな。俺も昔はあったはずなんだけどな。・・・忘れてしまったよ。」
乾いた笑みには悲しみ、寂しさが混じっていた。うそじゃない。現実に向き合って生きた証がどこかで輝いているのだ。今はネットカフェにいるが、楽しいと思えるときがあったはず。なんて考える。騒いだ記憶は片隅に残っている。消えない思い、記憶を忘れてもいい。新たな道を目指して歩いてる証、足音、足跡を消さぬように慎重になっているのかもしれない。




