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前略  作者: 実嵐
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進むべき道

おかみさんが出してきたのは旬の魚のおつくりだった。きっとネットカフェができたときは一喜一憂をしていたのだろうが、溶け込んでしまえば何も言わぬものだ。

「うちの店はね、普段魚は煮込みとか焼きをするんだけど、お兄さん見たらさ、いいなと思って作ってもらったの。若者には働いてもらわないとね。このご時世のしけたような空気に飲まれて・・・。なんてろくに動かない頭使って悩むんだよ。政治家の謳い文句なんてまっぴらごめんだってね。」

「やめときなよ。おかみさん。今の若者はネットに書かれた言葉しか信じないだよ。」

「そんなことを言うのはやめなさい。」

おかみさんは喧嘩を吹っかけたようになったことを残念がりながらいなくなった。若者が政治家に無関心になった発端というのを政治家は知らぬ。見ぬと繰り返した過ちを示したようなものだ。悪知恵を使うだけに与えられた知識じゃないと否定をしたところで聞き入れないだろう。俺はマグロの刺身に手を付けた。冷凍ではなく、生であることを口に入れて知った。とろけるような感じを。

「悪いな。そこの若いもん。」

「いいえ。」

「普段、そんなことはないんだけどな。俺も此処に来て世間ってものを学んだんだよ。遅いかもしれないけど、知らないよりよっぽどいい。政治家の先生も来ないしな。おいて行かれた町だって言われているんだよ。」

見捨てられた街が存在している時点でろくでなしといえる。税金をあぶくのようにしか映っていないのだろう。それに加えて政治家同士のなあなあの理屈で通る内閣総理大臣の選挙なのだろう。選挙の時にしか言わぬきれいごとを本気にするのが愚かだと思うのだ。俺は心底思った。政治家なんざいらないのかと。金の亡者となり替わっている人達に何が見えているのだろうか。貿易も他国に比べたら下手だ。言いなりのロボットだ。言い返せもしない。

「きれいごとを言うやつほど疑ったほうが会得なんだよ。こんなろくでなしのおっさんからの経験論だ。」

「有難うございます。俺なんて勤めていた会社を辞めた身なんです。それで新たな会社を見つけて入ったんです。」

「それならいいんだよ。新たな一歩がな、道を変えるってな。言い訳ばかりを言ってさ、動かないやつよりいいぜ。」

声援のような声が耳に響く。間違いじゃないと他人から称賛されているというのは心地が良いものなのだと。気づけば次々と出されているつまみを見た。おかみさんの照れたような笑顔が輝いていた。


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