偉いと権力と・・・
俺は空気を換えるために外に出た。騒がしい音に耳を傾けていなかったことに驚いた。前ならうるさいなと思っていただろうし、口には出さないが、きっと心の中では思っていたことだろうなと考えこむしかない。足を小さな定食やに向けた。少しさびれた雰囲気を感じ取った。それを赴きがあるといってしまうのだから・・・。夕飯を食べていないのでおなかがすいていた。おなかを鳴らす前に入ってしまったほうがいいと思う。引き戸を開けた。
「いらっしゃい。1人?」
カウンターへと促される。此処ら辺に住む人が寄るようなお店なのだろうと思った。壁には紙に書かれたメニューがつらつらとあった。定食だけでなく、酒を飲みに来るようなお店であると思った。ビールをとりあえず注文した。
「此処らじゃあビールを頼む人が豪勢な暮らしをしている証だよ。ネットカフェが近くにあるから以前は荒れていたんだけどね。利用する人が変わってから違うよ。」
理屈をこねたような言い方をしていた。少し癖のある店員だなと思ってあまりいない感じでうれしかった。
「どうせ、飲むんだろう。いいものを頼むよ。此処じゃあいい酒場になってしまうだけなんだから。ほら、隣を見てごらんよ。寝ているだろう。常連なんだけどギャンブルに依存していてね。家族からも見放されているの。とんだ家族だって叱ったところで何も思わないよ。」
女性は寂しそうに言っていた。寝ている男性は定年を過ぎているのだろう。心地よさそうに寝ている。いい夢でも見ているのだろうか。世の中じゃあ見放されているのを知っているのだろう。落胆して立ち直っているか。開き直っているくらいしかできないだろうから。
「いい酒だよ。やけ酒をすると二日酔いの下だからね。気を付けて。」
「はい。お任せで頼みますね。」
「わかっているよ。初めて来たお客はそれが多いからね。」
お通しが出てきた。こんな店で出すのはもったいないと思ってしまうほどのものだった。かなりの店で腕を磨いたのだろう。味がよくてビールが進む。仕事をした気はないが、それほどのことをしたつもりになってしまった。壁の上のほうにテレビが心地が悪そうにおいてあった。そこいるのは疑いをかけられた偉い人間だった。短時間で言ったことは否認だけで自分を救う手立てにもなっていなかった。言い捨てただけだったのだ。悪事を認めたほうが早いようなほどだ。記者の質疑応答ですら受けないのも・・・。トラブル処理には向いていないのだと。




