まくが上がったのにも・・・
大切な人とはいったい誰であろう。恋人でもいたのだろうか。俺には計り知れないものなのかもしれない。
「大切な人ってどんな人かわかりますか?」
「あぁ、構成員と仲が良かった連中に聞いたからな。阿久津の話、全部そいつらから聞いた話だから。婚約も考えていたみたいだけど、人質に取られたとか言っていたって。」
恋人を人質に取り自分の地位を守り抜こうとする時点で可笑しな話だ。俺は真顔で聞いていた。彼の話は今後大切になってくる。構成員と仲が良かったということは少なからず似たところにいたのだろうか。
「俺は暴力団にいたわけじゃないぞ。ホストだよ。その中にまだ最初の時に闇金に手を出して、構成員として一時期だけ金を稼ぐために働いた奴が多いんだよ。俺もそこまで困窮してなかったからよかったけどさ。」
金を借りて高い利子を請求してくるのだ。消費者センターになんか行く奴のほうが少ないだろう。自分で解決を求めようとするのだから。ホストとして今も働いているのだろう。きらびやかな世界にいることもいいのだろうから。
「此処にいるのは、土木が言ったように困窮している人もいれば、俺みたいにただ暮らしているだけだったりするんだ。アパートを借りるより安いから。人間関係は此処のほうが薄いわけじゃない。むしろ、濃いくらいだ。」
捨てたものじゃないと言い捨てた。ホストというのをしていてきっと湯水のように扱うことはないのだろう。もっていた財布を見ることができた。そこにはそこそこのブランドだった。ハイブランドではなかった。金が飛んでいく世界を誰が浮かれているのだろうか。浮かれ切った顔の客を見飽きているのだろうから。
「俺も金に酔っていた時期だってあったよ。それは空虚の世界を信じていただけなんだ。女の子が来ても金目当てでがっかりしてた。捨てられるのではなく、捨てたんだ。紐同然の奴だったから。今は困っているだろうな。」
「俺は会社の経理をやっていたんだよ。やめたのは部長と社長が横領したから・・・。疑われた人間がやっているなんて元も子もない話だよ。捨てた経歴なんて勲章じゃない。やって来た功績が勲章じゃないんだって思ってな。」
俺の背中はきっと小さくなっているだろう。責任から逃れたわけじゃないのは理解しているのだろうから。疑われた人間がキチンと釈明する力を持ち合わせていないのはアドリブを聞かないことを示しているようだ。それすら理解しない人達なのだと思うしかない。うわべで戦えるほどの武器などもともと持ち合わせていないのに、もっているふりをするのだ。うわべにうわべを重ね、建前、嘘、言い訳を混ぜ合わせるとできる人達が多い。質問にも答えられない人間ばかりか。うんざりしてしまうのだが・・・。




