確かな文句
今や情報の動きなど勝手に動いているのに抵抗するのがむなしくなっていくだけなのだ。ネットに真剣になっている。携帯を眺めても時間の動きを見るだけだ。阿久津の情報を知ることができたのは大きい。しゃべらぬ内容があった。暴力団の時に抗争に巻き込まれたのかはわからないが、前科をもっている。きっと色眼鏡で見られたのは確かだろうから。ネットを見ているだけで楽しいのだ。匿名という仮面をかぶって会話をしているので、ろくでもない会話をしていたりする。自分の言ったことに対して責任なんざ存在しないのだ。うわべで言う政治家を見ていられるだけの心持ではない。質問に逃げる政治家をまじかで見たとき、ぞっとしてしまった。逃げ回っているだけで答えを言わぬのだと。
「阿久津のことを調べることができて収穫だな。」
「阿久津君のことを調べているの?」
「はい。」
独り言を聞いていた向かいの部屋から声が聞こえた。阿久津君といって当たりから同級生か何かなのだろうと思った。その人は興味を持ったのか部屋に入って来た。
「阿久津君はさ、俺の小学校時代と中学時代の同級生だよ。あいつ、進学校に行ったから性に合わない場を好む奴だったんだ。」
「性に合わないところを好む人だったというのを知っているのはかなりですね。」
「友人だったなんて口が裂けても言いたくないよ。ろくでもないんだよなぁ・・・。」
ため息交じりに聞こえてくる言葉は阿久津が犯した罪のような気がした。そのあと、暴力団に入ったことは不思議に思っていなかったのだろう。
「俺もさ、言えた口じゃなかったりするんだけど・・・。あいつ、前科をもっているのは抗争中の時の幹部かなんかの人のをかぶってなっただけだって自慢げにね、言っていたことがあったんだ。それも大声で・・・。恥ずかしい過去も感じていないんだよな。」
「今も黄劉会と交流があると思います?」
「あると思うぞ。信仰の深い信者と思って扱えば余計だよね。」
阿久津は警察には話していなかった。だから、物を得ることは簡単にできてしまえたのだ。改心は表だけの行動であったのだと思ってしまう。あの会社にいても心の何処かでは戻るつもりなのだろうから。
「黄劉会を抜けないのは脅されているからとか言っていた時もあったな。噂でだけどな。」
「脅されていた?」
「幹部の連中は幹部を育てるのに必死なんだけど、地位は奪われたくないから殺してるとか言っていて・・・。大切な人を失ったって。」




