犠牲の情報
駅に着き、ため息をつく。奪われた気力をもうこれ以上奪われないようにだ。阿久津がきっと事件を再び起こすと思っているので久世グループで殺された伊丹とそのほかの人間についての共通点を調べたら黄劉会であった。昔構成員として活躍していて警察に目をつけられていない連中だった。暴力団関係に近い人を警視庁で探って聞き出したのだ。奥村と仲が良いといえば少しは心を開いてくれたのかべらべらと語ってくれた。明らかに流してはならない情報も個室であったという場所の形状も含まっていたのだろうから。俺は最寄りの駅のネットカフェへと向かった。此処には住んでいる人もいるのだ。店員も流すように荷物を見た。泊まりだと判断すると厄介な人だとも思わなかったのだろう。作り笑顔と仮面をかぶって対応をしてくれた。指定の個室に入った。隣の部屋にいた流行おくれの服を威張ったように来た男性がいた。
「お兄さんはあれか?リストラとかか?景気はいいとかさ、言っているけどね。」
「まぁ、そんなところです。貴方は?」
「俺は此処に住んで10年。此処にいる奴の中でそこそこ長いほうだよ。みんな、顔見知りはあだなで呼んでいるんだ。」
話しかけてきた男性の昔の職業が土木作業員だったので、土木と呼ばれているらしい。俺のあだ名は経理をしていたので、経理となった。そのままのあだ名がついていることが多いと笑いながら言っていた。此処にはストレスから逃れてきたのか生きるためにいるのだろうと思った。
「此処でじっくり気張ってさ、日の当たるところに向かえばいいじゃないか。」
「そうですね。」
まさかこんなところで交流が生まれるとは思っても見なかった。世間から忘れ去られてしまうのを感じた。事件というのは起きては対処し忘れてしまうのだろうから。インターネットが使える環境は一番いいに決まっている。さんざん話した男性と離れて自分に指定された個室へと入って行った。狭いながら心地が良いと思った。インターネットをすぐに開き事件について調べた。憶測が飛び交う。デマが紛れ込んでいるのだ。そう思って承知のまま見ているのだ。阿久津について調べると中学の時は優等生としてちやほやされていて高校に入った時に進学校に入っ格の違いを見せつけられたのに抗ったのが不良だった。進学校はよしとはしないので即退学となり、新たに入りなおした学校に不良の知り合いがいて暴力団の道が開いたと書かれていた。此処まで詳しく情報が流れているものなのかと感心してしまった。




