暗闇に問う
夏目からの連絡を受けて大学病院へといった。親父とおふくろが一緒にいるらしい。教えてくれたのは世の中の理不尽さくらいでろくでもない人達だった。タクシーで行くことなく、堂安が運転することになった。一番下っ端の阿部が運転するべきと思われるが、俺たちの中では存在しない。いずれ自由の身になるのだから。黒塗りの車に乗った。高級さを示したようなものを思った。道路を進んでいるのを見ているのだ。流れていく風景を見ているだけで何もならない。人工の光で輝きをもっていた。大学病院につくと堂安が病院の駐車場が広いこともあって先に行ってほしいといわれた。玄関におろされて俺たちは足を進めた。夏目が枯れた顔をしていた。涙もあったものじゃなかったのだろう。
「お待ちしていました。私は先に奥村様と西條様と一緒に霊安室に行きましたから。お顔なんて爆破を受けたのでまともじゃなかったです。」
「そうか。親父もおふくろも妥当な死に方をしたんだな。」
病院の玄関で立っていると奥村と西條がのそのそと歩いていた。歩いていたが、事件の真相などわかっているのだろう。
「とりあえず会っておくか?」
「まぁな、メイドの連中も来なかったら嫌味を言うだけなんだろうから。困った奴らだよ。」
愚痴を言っていると堂安が笑っていた。親父も慕っていなかった証拠なのだ。それくらい腕をもっていなかったのだ。霊安室に行った。暗い部屋だった。白い布をかぶっていた。顔にもかかっているが、取ってほしいとは思わなかった。顔を見たところで何も出てこない。メイドの連中がいるかと思ったが、葬式などの手続きをしに帰ったらしい。金を求めた人なのだと思うしかない。知った顔の刑事がいるからこんなに平気な顔ができる。
「お前も案外平気なんだな。数多も・・・。」
「だってさ、兄貴を死に追い詰めた人間なんだ。それに夏目から聞いていた話があるからね。金で部を買ったなんてさ、笑えるよな。」
数多の冷めた目を見せていた。暗い部屋でただ悪口をたたいているのだ。現世に巻き起こした災難だったのだ。人の行いは人の行いでかえって来るのだ。何処までも何処までも連なってくるのだ。俺は心の中でただ笑うしかなかった。久世という苗字だけでやっていけると思ったのだ。腕を使わずに権力を扱っただけである。嘘や偽りに頼ってしまうなんてあってはならない。昔から続いていると主張をするなら余計に付きまとわってくるものである。証でもある。信頼にもつながる。




