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前略  作者: 実嵐
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変化の故

奥村の連絡が予期せぬものであるとは思わなかった。あれだけ喧嘩をしてきたのだ。恨み、嫉みが連なっているのはあるだろう。数多に見つかる前にノートを机の棚に隠した。木を隠すなら森とはよく言ったものだと思う。犯罪者はもっぱら承知の上なのだろうから。ドアをノックする音がした。

「兄貴、入っていいか。」

「いいよ。」

ガチャと素朴な音が鳴ったのだ。電気をつけていなかったのに気づいて、数多が電気をつけた。まばゆいくらいの光を感じた。それに目を細めるしかなかった。

「兄貴、さっきさ。病院から連絡があって・・・。」

「親父が死んだのか?」

「ご名答。親父が死んだという連絡が来たんだ。その連絡があった直後くらいからおふくろも同じときに会社を訪れていたことが分かって巻き込まれた可能性が高いってさ。それで病院へは行くべきかな。」

数多が悩んでいたのはそんなことだった。親父の死に対して犯人への恨みなどこれっぽちもない。引き取ざる負えないのが目に見えているのでどうするべきかということなのだ。久世グループの統括をしていた人間が突如といなくなってしまうのだ。色めき立つのは役員だった連中であって、欲望にまみれたみじめでみすぼらしいまでだ。プライドの意味も意義もなっていないのだ。プライドで飯を食えるのは浮かれている証拠だ。勇気もろくでない。集団でしか動けないやつが偉そうに全てを奪って言うのだ。俺が全てやって来たのだと。功績も勘違いで埋め固めるしか方法を知らない。知ったところで打つ手がなくなってあたふたするだけで終わる。

「行くしかないだろう。メイドの連中も来ないと来ないで怒るのはわかっているし・・・。」

ため息をつく。変わらない輩たちの考えにうんざりしながら家を出た。そこは闇と化していたが、誰もいとわない。ためらわない。光の方向へと足を進めるのだ。遺書だなんて一人前のふりのことをされるのは厄介なのだ。人の死など関係なしに金目当てで動いていること自体が無駄なのだ。今のうちはもっていていいものなのだろうが、たくさん抱え込んでいたところで騒ぎを巻き起こされる代物なのだ。堂安と阿部は聞きつけたのか喪服を着ていた。俺も着ているが、親父から配布された服だ。高級な服であるのは間違いないだろう。

「それでは向かいますか?」

「夏目も来るのか?」

「はい、連絡を取り合ったところ奥村様から連絡が来たのだといってました。貴方にはすでに連絡を仕掛けていたそうですが、一度してしまったのでかけるわけにもいかず夏目さんのところで止めたそうです。」



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