曇った時計
今にも破り捨ててしまいたいノートが無残に机の上に乗っかっている。破ったところで行き場のないのに変わりない。変わらないものに対してあがいても無駄なのだ。自分の部屋にあるテレビをつけた。笑いを生むバラエティーを聞くのではなく、サスペンスを見るつもりなく、ニュースを見つめた。地震が起きたのか繰り返し言っていた。焦りのある声が響くのだ。逆らえないのは権力と自然だろう。そうしか思えなかった。人が起こしたものは人を制御するしか方法はない。ニュースでは新たな爆破事件が起きていた。親父の仲間うちで黄劉会の幹部として隠れて動いていると久世グループの中で騒がれていた奴の会社だった。子会社を狙うのはいい手だと犯人は味を占めたのだろう。俺はため息をつくと同時に電話がかかって来た。
「もしもし。」
「俺だ。事件が起きたんだ。連絡が遅くなってごめんな。警視庁もごたついててさ。」
「そうだろうよ。こんなに続いたら警視庁とか警察の責任問題とか言われるんだろうからさ。」
「理解が速くて助かるよ。」
笑みをこぼしているのかほっとするような吐息が聞こえてきた。奥村は事件に必死できっとわかっているのだろうから。久世グループがえらく狙われていることもあって親父に注目が行く。それによって久世グループが犯してきた悪事が目に突き出すころだろう。週刊誌も準備をしているのは事実だ。
「お前のところの子会社だからお前の親父に話を聞きたいんだけどさ、連絡が取れらないんだよね。夏目とは連絡が取れて聞いたら出かけて行ったきりで見ていないって。外出る時はもっぱらSPの仕事だから知らないって。」
「そうだな。親父とおふくろには金を出せば済むと思っているからな。親父と連絡がつかないのか。」
「日程とか夏目は知らないんだな。知っているとは思っていなかったけど。」
夏目はあくまでも室内の話であって外は知らない。スケジュールですら知らないときがあるといっていた。今はのけ者にされているのをひしひしと感じ取っているのだといっていた。あの日のことがあって全て夏目が悪いといったのだ。自分の行いを全て棚に上げてまで守りたいのはいったいなんであったのだろうか。
「すまない。急に騒がしくなった。また、新しいことが分かったら連絡する。」
「わかった。有難う。」
親父とおふくろを誇りに思ったことなどなかった。みすぼらしいと愚かだと無様だと思うことは多かったが、いなくなるとかあっても驚かないのだ。




