色を演じる
薄暗くなっていく空をバカ真面目に眺めてみた。ただ雲が動くだけだ。不愉快なほど穏やかだ。俺は家に帰るように足を向けた。心持を問われても嫌な気持ちしかないのだ。電話が鳴っている。
「もしもし。」
「お前、何処にいるんだ?」
「用事があってな。外に出てるんだ。緑谷はどうかしたか?」
久しぶりに緑谷の家で飲まないかと誘われた。林に会ったりして踏んだり蹴ったりなのかもしれないと思うしかない。今の俺の行動を不思議に思わないやつはいない。
「行くから、先に始めておいてくれ。」
「わかった。うまい酒を買ってあるから早く来いよ。お前も出歩くことが多くて難儀だな。」
「そんなことないさ。俺がどこぞの御曹司だろうが、なかろうが変わらなかったさ。胡散臭い奴に対応するのはこの世知辛い世の中にないよ。」
俺は言うだけ言って一方的に切った。時々やってしまうので緑谷は理解済みだろうから。世知辛いなんて簡単に言ってまえるのは嫌だなとか思わないのだ。政治家の胡散臭い謳い文句に左右されている今、嘘を正当化する政治家に動かされている今、いったい正義とはとか思ってしまっている時点で崩れているのだ。ため息をついても行き場のないところに連れていかれるくらいだ。とぼとぼと歩いている。緑谷の家と俺が住んでいる家からさほど離れていない。たまたまなったのだろう。電車で行き来するのは間違いないのだ。彼の家は古びたアパートではなく、こじゃれたマンションに近いのである。新築だった建物に急ぎで入ったと聞いたのだ。インターホンを鳴らした。足音がこぼれていない。それだけいいのだろう。
「早かったな。」
「早く来いってせかしたのは誰だよ。」
少し怒ったように言ってみると、彼は照れ臭そうに笑ったのだ。リビングに上げてくれた。彼はスリッパを置いているが、飾りのように存在するのだ。それを巧みに使うことはない。テーブルには豪華な食事があった。
「お前は会社に出向いたのか?」
「あぁ、行ったさ。あの社長はお人よしなのかな。お前のことも気に入ったとか言ってなかったか?」
「言っていたよ。腕のいい社員を探していたとか言ってね。まぁ、大概間違いじゃないんだろうし。」
緑谷はワインのコルクを抜いていた。きゅきゅと音が鳴っている。高いワインじゃなくともついているのだ。緑谷は高いものが全てだとは思うタイプではない。少なからず、俺の影響されているのを行動で感じてしまうのだ。注がれる輝いた色は向かいの道具を映し出していた。




