銃口と引き金の扱い
幹部らしき男の声がくぐもったものが聞こえる。俺の決意をあざ笑うことなどできない人間なのだと思ったのだ。偉そうにソファに座り、さげすむような眼で見つめる。怖くなんかない。ただの形で脅しているのを知っている。足の組み方が何処か居心地の悪さを感じているようである。
「だから、君は何者なんだ。」
「名乗る必要がない。ただ、阿久津にぶつを売ったのかを聞いているだけだ。それとも伊丹の話がいいか選べよ。」
強い口調で言うと部下の輩が何処かにらみを切らしているが、全く眼中にないのでしたというだけでは無駄なのだ。俺は目線を動かしたりすることはない。それに効力があるのを知っている。逆に怖くなるのだ。
「それじゃあ、阿久津の話をします。阿久津には昨日、物を売るように催促されました。計画がうまくいけば金が入る契約だとも言ってました。型は何時もだといってましたので、警察にはいずればれると思ってます。」
「物を売るところなら売る日を教えてくれ。」
「それじゃあ名前を教えてください。」
人知れず立場が変わったのが分かった。偉そうに座っていた幹部の男も足をそろえている。そこだけは律儀な連中だとしか思えない。此処で闇金を行っている後は何処を探してもぼろとして出てくるのだろうから。俺はソファから立ち上がった。
「久世だ。」
「久世ってあの久世親分のですか。」
「そうだ。久世の息子の刹那だ。」
驚いた彼らの顔が笑い種であった。何故かむしろ後で明かしたほうが使い方があっていると思った。親父の過去に暴力団にいたことを奥村から聞いたことがあったから。昔から悪い噂しか流れていない人間が穢れているのを証明しているようだ。それの取り消し方を誤る方法しか知らぬのだ。能力も伊達に使われないのだから。
「わかりました。伝えます。誰に伝えたらいいですか?」
「夏目に頼むよ。」
「わかりました。」
言い捨てるように言って廊下に出た。大騒ぎしているのが薄い壁から漏れる。いっそこれでいいと思ってしまう。阿久津は拳銃を買う予定を立てている。伊丹が死んだことで喜ぶ人間を探したって見つかると思うが、表に入り込んだ人間は何処かきれいさが残っていると思った。裏に染まり切った連中は上に盛られない。出口もない迷宮の迷路に自らの手で入り込んで出る方法も誰も知らぬとしかいいきれない。立場が空虚になってはいけないからああいう行動をするのだろうから。ビルを出るとため息をついた。緊張が説かれたのだ。




