外面
会社の前に止まった車を眺めた。堂安はきっと心配なんざしていない。俺は振り返ることなくいこうとしたとき、声がかかった。
「頑張ってください。・・・ただ背負いすぎないでください。」
言われた言葉は的確過ぎて手を上げて答えるしかなかった。手をおろすと車の去る音がした。緊張はする。社長と対面するのに下手なことはできない。数多が言っていた。ベンチャーとのかかわりがあるということは人を見極める能力を持ち合わせているのだ。靴を動かした。受付へと足を進める。受付の女性は気づいたのか笑顔を返した。
「どうしましたか?」
「すいません。アポを取っている久世なのですが・・・。」
「調べますね。」
パソコンをたたく音が無音の状態の中響いている気分だ。カタカタといわせている音の勝手な圧を感じてしまう。
「確かに。じゃあこれをもって待っていてください。降りてくるとのことなので。」
ストラップのついたカードを渡してきた。俺は待つために椅子に座った。居心地の悪さに嫌気がさす。外を見ても通行人にすぎぬ人達が往来している。壁に入りついているテレビを見た。ニュースをしている。強引に法案を通したという話だ。野党の猛攻もとどまらないというのだ。強引に行って反感を買うと知っていても無視をするのだ。今更認識しても無駄。ため息をつく。それは心を落ち着けるためにやったのかそれとも自分に対しての嫌気なのか。ニュースは流れるように勧められていく。事件や事故を取り扱い、裁判もろくでなしになっていることを認知しても変わらぬ。くだらないと心の中でぼやいていると声をかけられた。
「久世さんですか?」
「はい。」
「社長の佐々木です。私の部屋で話をしたいんで緑谷さんに頼んだんですよ。すいません。」
腰の低い人だと思った。緑谷から話を受けて本人に会ってみたいと思ったのだろうから。俺は立ち上がり、歩き出した。それは最初の一歩であるようで足の踏み出し方であった。無意識に足に力が入る。関係ないだろうに。エレベーターに乗った。すると、秘書らしき人物が話をしていた。時間を切り裂いているのはいったいどちらであろうかと錯覚を覚えてしまう。ぼーっとエレベーターから見える外を眺めた。急ぎ足で過ぎていく人達を見ているだけなのだろうから。部屋の前についた。来たこともないほど豪華で目がくらむ。ソファも飾りじゃない。何処かでこだわりを主張をしているのだ。むしろ、存在感が強い。彼のことを示しているのだろうか。




