矛盾との闘い
アパートに帰ってみるとリビングに明かりがともっている。足音をあまり立てずに行くと笑い声があったのだ。俺はそこの中に混ざった。
「戻るの遅かったな。兄貴。」
「コンビニ寄ってたからな、そういえばお前バイトは?」
「事情話したら店長が今日は休みにするってさ。兄貴を祝いたいのなら祝えって。人手が足りないとか言っているのに甘えてしまっていいのかと思ったけど満面の笑みで言われて断れなくて・・・。」
数多にとっては複雑なのだろう。バイトを自分の都合で簡単に休んでしまったことに対する贖罪を感じるのだ。それもまた心をかき乱すのだ。ダイニングテーブルには豪華な食事であった。寿司を取ってあり、阿部や堂安の執事がいたのだ。
「刹那様は新たな船出をされるのに、私たちがいなくてはいけないでしょう。きっと夏目さんも来たかったと思いますが。お父様の下ですので難しいんです。」
「わかっているよ。おふくろや親父は圧力しかないから、それから。」
俺は鞄の中から資料を出した。緑谷が用意したものであるが、わかりやすいのだ。大手であれば安心なんて神話の時代は終わりかけているのかもしれぬが、社長を見れば何処かわかるものがあるのだ。数多は受け取ってみていた。
「大学でも話題になっている会社だよ。ベンチャーとのかかわりも深いって聞くよ。兄貴はそこに行くのか?」
「まぁな。緑谷伝いだけどさ、社長に会って話を聞いてみるよ。待遇もよすぎてね。疑ってもいいのかなって。」
慎重になっているのは嘘を語るのは容易であるのだ。嘘を隠さず真実に立ち向かうことを選ぶ企業は少ない。人でも権力に押しつぶされてしまうのだ。何処か空虚な世界に取り残されたみたいだ。強引にやるほど反感は大きくなる。抗っているのだ。海に飛び込み、波に抗っていると変わらない。政治家ももっぱら嘘と方便しか使っていない。法を違反してまで強引にやってのけるものなのだろうか。何が合法なのかといってしまえるのだ。作った法をいじって都合のいい解釈へと導く爆弾なのかもしれない。答弁もろくにできず、法の中身ができていなくて白紙の状態で枠だけ偉そうに決めるのは身勝手だ。無責任だ。責任と口だけなのだと改めて核心してしまうのは愚かなのか。間違っているのか。何が国民のためなのか?傲慢になっているのに気づけない政治家が謙虚だとか嘘を言うべきじゃないのだ。誰も聞かぬようにしているのは政治家のほうではないか。違うのだろう。




