裏の裏
仕事が終わり、会社の前にいると緑谷も終わったのかすがすがしい顔付きで立っていた。堂安もそれを見てこっちには来ようとはしない。誰も来るなとは言ってはいないのだ。状況を見てこないだけなのだ。
「此処はもう終わりかな。」
「そうだな。それと伝え忘れたけど、会社の奴は2枚あるから。必要だろ。堂安に会社を知ってもらうのに。」
肩をたたく彼の強さは痛いくらい感じてしまう。それもたまにしか感じないのだ。緑谷はそのまま帰って行ってしまった。昼の宴のこともあるとは思わなかった。全く関係ないのはわかっている。長年付き合っていると性格はある程度分かるものなのだ。飲み込むことの大切を思う。俺は歩道を歩く。堂安は会社のビルから離れたところで声をかけた。
「今日はどうされますか?」
「家に来い。阿部も来いって言えよ。」
「かしこまりました。」
俺と堂安は別れた。家で祝うのもありだと思った。数多はバイトがあって参加できぬかもしれないかもしれないが、祝う人数が多ければいいのだと思った。満員電車は別の電車になっても変わらぬ普遍的な話だ。うだうだといったところで無駄なのだと知ったというより悟りを開いたのは早かったのかもしれない。過ぎていく日々をとやかく言うのは簡単だ。それを探っていくのもありだ。何時もの最寄り駅につくとコンビニに寄った。久しぶりだ。あの新人はどうなったのだろう。
「いらっしゃいませ。」
明るい店長の声が響いた。俺の顔を見ると笑顔を見せてくれる。常連じゃなくても常連の扱いを受けている。
「店長、あの新人は?」
「やめたよ。性に合わないとか言ってね。最近は続かない子と続く子の差が激しくて困るよ。」
「そうなんだ。俺も問題の会社を辞めて新しい会社に行くことになったから。」
店長にいうと彼の顔は何処か誇らしい表情になっていった。店長も長年、同じ店を続けているが何も怒らないのだとぼやいているが、もう愚痴同然なのかもしれない。
「そこでは今とは別の待遇かい?」
「むしろ良すぎるくらいだよ。役員待遇とかももっていたりするからかなりの期待じゃないのか。」
「そのほうがいいよ。こんな下っ端で終わるとわかっているような感じなのはな。君の場合は会社が信頼をつぶしたから仕方ないことだよ。」
店長はニュースから新聞を読み漁るほどの人間のため、理解が速い。その人のおかげで愚痴も相談となりよって話すことが多かったのだ。間違いを間違いと認めぬ大人が多興するのはうんざりだからだ。手本のふりして反面教師に成り下がりたくなかった。




