思い出と作り話
警察が来たと最初は警戒心が強かったことになっていたが、時間というのはつぶすことができるのだと思ってしまう。テーブルにはから揚げやポテトサラダなどが埋まっている。店主は独学で料理を作ってうまくいかないことで修行をしてうまいといわれるくらいまでになりえたのだ。酒を飲むには無理な時間だ。それを理解しているのに盛り上がっているのだ。騒がしいと口にしないのは会社がつぶれるのではないかと揶揄されているのだから送別会をしてもおかしくないと思っているのだ。俺はから揚げをつまむ。うまいなと思いながら少し騒いでいるようにも映る部下を眺めた。こんな雰囲気のいい人たちからも離れていってしまう道を選んだのだ。突然こみあげてくる感情を隠すようにしている。哀愁を漂わせたところで運命なんざ簡単に変わることはない。過去を嘆くほどの愚かなことをしてはならぬと言い聞かせている。俺の肩に手が置かれた。
「久世、別のところで話さないか?」
「そのつもりで来たんだろ。まぁ、俺が呼んだんだから言えた口じゃないな。」
奥村のいたずらを仕掛けた子供のようなおどけた笑顔を見せた。もともと呼んだのは奥村が高梨についての会話を楽にするためだ。情報のなさに落胆しているらしい。俺と奥村は部屋を出て、カウンターに座った。店主は状況を見てきた。
「どうだ。うるさいかい?」
「まぁそんなものですよね。俺なんて尊敬されていないと思ったくらいです。」
「いいや、君の部下に問うと行動で示す君が尊敬できるといっていたよ。緑谷君ももっぱら似たタイプだったからお互いに気にしなかったんだろうけど。あの子たちならまたやりかねないよ。送別会。」
「そうですね。」
店主はおまけといって俺の好きなハンバーグを作っていた。和風でデミグラスをかけないのが好きなのだ。こってりとした味もごはんが進むのでいいのだが、和風味がいいときだってあるのだ。おかれたハンバーグに手を付けた。
「それで話ってなんだ?高棚部長だろ。」
「そう、不自然な時がなかったか?可笑しいと思ってしまえるほどの時だ。何時でも構わない。」
神妙そうな顔付きに変わった奥村をきっと冷えた目が眺めているのだろうと思った。俺は1口食べるといった。
「時計くらいかな。気になったのは。」
「時計?」
「あの人は時計をコレクションしていてそれも高級品しか持たないっていう人だったから。それがある時、わかりやすいくらい安いものをつけていた時があったな。」
きらびやかなものをもっていればいいと思っていたのだろう。




