道の行く末
昨日の二日酔いがどこかしこに残っている。存在というのは認めれなくとも勝手に認識してしまえば終わるのだ。緑谷は明日には退職届けを出すといっていたので、俺も出すことにした。その場で書いたため、素面じゃないことにたいした抵抗なんて柄でもない。いつものスーツに腕を通す。よれよれの生地は悲鳴を上げることなんてできぬ。数多はバイトが終わったのが夜遅かったのもあってぐっすり寝ている。たまにあるらしい。そのときに断ることができたらいいのだが、上に従えという考えが抜けぬのはおろかだ。何かを犠牲にしなければやっていけぬのはもっぱら知られたものだ。俺はいつもの人ごみに混じった。これを特定できるのは機械くらいだろう。それか防犯カメラに映っている事件の犯人だったりする。くだらないと一石して駅に行った。売店で売られている新聞はさらし者のように思えた。満員電車に乗っていく。流れ作業のような人生だ。それに慣れてしまえば不満なんざ存在しない。駒として気楽に生きていくだけだ。会社のビルに入ると、緑谷が小さく笑った。
「お前と一緒に出すのがいいんじゃないかと思ってね。阿久津とか言うお前の上司に聞いたらこの時間帯にいつも来るっていっていたからな。」
「阿久津に会ったのか?」
「あの人がまさかなんて思わないよ。態度からしてそうだから。」
彼の口調は相手を穏やかにさせるものがある。退職届を一緒に出すだけが目的ではないだろう。
「それでお前がヘッドハンティングされた会社に俺、顔出さないといけないだろう。」
「明日にでも行けよ。いうだろうと思ったから地図と名前な。」
見せられた紙を見つめると、さすがの大手からであった。今と比べ物にならないくらいの扱いを受けるらしい。それは緑谷だけじゃなく俺も含まれている。大歓迎といってもふさわしいのだろうか。
「いいのかよ。お前ならまだしも・・・。」
「俺がお前の成績引き連れて行ったからそのときが加わっている。まぁ、いいんじゃないか。」
緑谷は抜け目がない。さすがにやりすぎというのも認知しているのか、本人は苦笑いを浮べては消しを繰り返している。会社内では俺たちがやめるといううわさが流れていた。それは出て行くというものより出て行けとでもいっているのだからすがすがしいくらいだ。きっと次の会社ではこんなことはないだろう。周りでは騒ぐだけで何もしない連中がねたみを言っていたりする。小さな声のときと明らかに言っているときがある。
「ほうっておけばいいんだよ。あいつらは決断って言うのがないんだ。」
「そうだな。」
人の人生においては分岐点にあふれている。分かれ道どころじゃないだろう。それもどこかで教えられた。英断って言う言葉も存在する。進める道に戸惑いがあっても無駄じゃない。




